【3003】 ヒューリック (東証1部) BY
現在値 1,110円/100株 P/E 11.4 P/B1.43 6月配当 12月配当株主優待あり
旧富士銀行の銀行店舗ビル管理から出発。好物件所有、物件多角化。
配当金は6月末・12月末の合計38円配当のため、配当利回りは約3.42%となります。
ヒューリックは株主優待制度を導入しており、12月末に3単元超を保有する株主に対して、3,000円相当のグルメカタログを進呈していますので、配当と合計した配当優待利回りは、約4.32%となります(※3単元保有時)。また、3年以上の長期保有により優待進呈額が倍となりますので、その場合の利回りは約5.22%となります(※3単元保有時)。
業績を確認していきます。
■2018年12月期 売上高 2,875億円、経常利益 725億円 EPS 75.1円
■2019年12月期 売上高 3,572億円、経常利益 846億円 EPS 88.9円
■2020年12月期 売上高 3,396億円、経常利益 956億円 EPS 95.2円
■2021年12月期 売上高 4,200億円、経常利益 1,000億円 EPS 97.3円 ce修正
□2021年6月2Q 売上高 2,200億円、経常利益 565億円 EPS 53.8円
□2021年9月3Q 売上高 2,654億円、経常利益 696億円 EPS 60.5円(10/27)
2021年6月中間期の売上高は前年同期比37.3%増の2,200億円、経常利益は同24.9%増の565億円となり、予算比較は無いものの2割強の増収増益で進捗しました。不動産事業については、シンガポールREITのメープルツリーに日本HP本社ビルを388億円で売却したほか、傘下公募REITに対して上野ビル・調布ビルを下し、その他にも相鉄フレッサインなんば、宮下公園ビル、新三郷物流などを売却しました。他方、新規取得については、商業施設の「&New」を宇田川町(3月)、新宿(5月)を相次いで開発・取得したほか、リクルート銀座8丁目ビル、都内ユニゾ物件を3棟取得するなどしています。
2021年12月期通期見通しについては、売上高予想は非開示(注:3Q時点で4,200億円のガイド有)ながら、経常利益は前期比4.5%増の1,000億円予想を据え置いています。不動産事業については、下期に入ってから傘下REITに対して4棟合計334億円分(麹町ビル、吉祥寺ビル、神戸ビル、経堂シニア/鑑定NOI4.1%)を下したほか、オリックスREITに大手町北ビルを、平和不動産REITには草加レジを売却したものとみられます。賃貸事業については、昨年4Q取得の大型案件・NEC相模原底地が通期寄与するほか、オンワードから築浅の芝浦のベイパークビルを115億円で取得し、リースバックしています。取得については上期低調だったものの、電通本社ビルの取得が最終調整に入っていることから、最終的にキャッチアップされるものとみます。何れにせよ物件売却が順調に進んでいるため、通期予想は上振れ含みとみます。
当社は中計の相次ぐ前倒し達成で都度ローリングを実施しており、長計目標だあった2023年12月期の目標額(経常利益850億円)も既に達成しています。そのため2020年2月に新長計・新中計を公表しており、3年経過後の2022年12月期に同1,100億円、10年経過後の2029年12月期に同1,800億円を目指すこととしており、会社側としては年100億円ずつ経常利益を積み増していくイメージとされています。
ストック型の賃貸事業を軸とすべく、賃貸事業と開発/売却利益の比率を7:3にまでシフトさせる計画ですが、手前の3年間はポートフォリオ入替のため50%程は売却益に依存する格好となります。当初3年における投資純額は4,500億円(長計は10年で1兆円)と高水準を計画しており、銀座・新宿東口・渋谷・青山・浅草といったプライムエリアでの積極的な取得を企図し、取得済のティファニー銀座、リクルート銀座8丁目ビルにくわえ、超大型案件の電通本社の取得が最終調整に進んでいます。ただ実際のところ、電通本社は諸経費込で3,000億円弱と巨額となるからSPCでの取得となる見込みであり、当社がメジャーシェアで40~50%を握るものの、芙蓉系(FGL?)が20~30%、残りは外部投資家にシェアアウトする模様です。
財務面については、2018年に半エクイティの劣後債と劣後ローンのハイブリッドで1,500億円調達したほか、2020年にも同様に2,000億円を調達しています。本中計・長計期間においては、ネットD/Eレシオを3.0倍まで許容することとしていますが、10月にグローバルPOで約1,000億円弱(希薄化率12.3%)を調達しています。ローンチから値決めまで株価が滑ってしまったので、手取り額は100億円程度少なくなってしまったとみられますが、①建替・開発資金に621億円、②再生可能エネルギーに14億円、③残額を借入等返済に充てる方針としています。
本件POにより、ネットD/Eは期末時点でも1.6~1.7倍程度にまで維持されることが目されるため、相応の“泳ぎ幅(投資余力)”が確保されることから、少なくとも手前の3年中計の達成蓋然性はかなり高くなったものとみます。他方、株主還元については、本中計期間から配当性向40%基準を設定しており、今期は2円増配となる38.0円(配当性向39.0%)を予想しています。
*参考記事① 2021-04-19 1,296円 OP
【3003】 ヒューリック/中計達成圏だが、電通本社ビル取得ならファイナンスリスクに留意。
*参考記事② 2020-11-11 1,054円 BY
【3003】 ヒューリック/引渡4Q期間に集中だが、増配開示で予算達成の蓋然性が高い。
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