【3003】 ヒューリック (東証1部) OP
現在値 1,296円/100株 P/E 13.3 P/B1.78 6月配当 12月配当株主優待あり
旧富士銀行の銀行店舗ビル管理から出発。好物件所有、物件多角化。
配当金は6月末・12月末の合計38円配当のため、配当利回りは約2.93%となります。
ヒューリックは株主優待制度を導入しており、12月末に3単元超を保有する株主に対して、3,000円相当のグルメカタログを進呈していますので、配当と合計した配当優待利回りは、約3.70%となります(※3単元保有時)。また、3年以上の長期保有により優待進呈額が倍となりますので、その場合の利回りは約4.47%となります(※3単元保有時)。
業績を確認していきます。
■2018年12月期 売上高 2,875億円、経常利益 725億円 EPS 75.1円
■2019年12月期 売上高 3,572億円、経常利益 846億円 EPS 88.9円
■2020年12月期 売上高 3,396億円、経常利益 956億円 EPS 95.2円
■2021年12月期 売上高(未定)億円、経常利益 1,000億円 EPS 97.3円 ce
□2020年6月2Q 売上高 1,750億円、経常利益 480億円 EPS 46.4円 四e
2020年12月期の売上高は前期比4.9%減の3,396億円、経常利益は同12.9%増の956億円となり、利益ベースでは当初予算を上回って2桁増益を確保しました。傘下公募REITに対し、3月に計236億円分(両国ビル、浅草橋ビル、目白商業、築地ホテル)、10月には81億円(中野ビル、八王子ビル)を相次いで売却したほか、傘下私募REITへの物件売却も前期並みの水準を確保しました。賃貸事業についてはオフィス空室率が低位に推移したほか、新規取得のティファニー銀座本店、南青山M-SQUARE、住吉の日本HP本社ビル、銀座天國ビルの等が寄与しました。一方、日本ビューホテルを中心とした直営ホテルと、賃貸ホテル、その他商業区画をを中心に新型肺炎の影響を受けた結果、通年で▲70億円程度の利益下押しとなりました。
2021年12月期の通期見通しについては、例年通り売上高予想は非開示としているものの、経常利益は4.5%増の1,000億円を予想しています。不動産事業については、足許の不動産金融資本市場の好況を受け、傘下公募REIT/私募REITへの物件売却が順調に進むとみられ、本年3月末には74億円(上野ビル、調布ビル)の売却しています。賃貸事業については、昨年4Qに取得した大型案件であるNEC相模原事業所の底地が寄与するほか、本年2月にリクルート8丁目ビルを新規取得したほか、電通本社ビルの優先交渉権も取得しており、リースバックの賃料収入が大幅増となる見通しです。ホテル・商業については依然として新型肺炎禍の影響が想定されるものの、4Qからの回復を前提として予算に織り込んでいるため、全社ベースでは好況な不動産市況の下支えにより達成可能圏と解されます。
当社は中計の相次ぐ前倒し達成により度々ローリングを実施しており、長計の方でターゲットとしていた2023年12月の目標額(経常利益850億円)についても4年前倒しでほぼ達成してしまっています。そのため、丁度1年前に再び数字を洗い替えた新長計・新中計を策定しており、10年経過後の2029年度に経常利益1,800億円、短い3年スパンの中計の方では翌2021年度に同1,100億円を新たな業績ターゲットに定めています。会社側アナウンスによれば「年換算100億円程の経常利益伸長」をイメージしている模様です。
基本的には安定収益源である賃貸事業を伸ばす計画であり、賃貸事業と開発/売却利益を7:3の比率まで引き上げる目論見であるものの、当初3年間はポートフォリオ入替のため50%程は売却益に依存する格好となります。当初中計3年における投資純額は4,500億円長計は10年で同1兆円)と高水準を計画しており、銀座・新宿東口・渋谷・青山・浅草といったプライムエリアでの積極的な取得と売却で数字を作ること柱としており、実際に足許では3,000億円級とされる超大型案件の電通本社やティファニー銀座、リクルート銀座8丁目の取得が高ピッチで進んでいるような状況です。
賃貸/売却以外の他の中計注力分野としては、①下駄履みずほ店舗ビル等の建替と容積消化、②7&iや日本郵政ら提携先との協業、③その他(シニア・ESG/太陽光・MAが挙げられています。①は元より取り組んでいますが、②については当社所有のイトーヨーカ堂鶴見店の改装協議に着手したほか、今後は川崎店や福島店の改装も予定しています。日本郵政との協業については、既にヒューリックJP赤坂ビルを昨秋竣工させています。③については、シニア居室数5,000室を目標とするほか、病院アセットの開発・取得、太陽光発電に代表される再エネ投資の積極化を目指します。かような状況から、当面は売却益に頼る状況には変わりないものの(利益顕在化と観光アセットの評価額減で含み益が減少に転じた点には留意)、資金回収後の振り向け先も多いことから、中計に掲げる目標水準は十分に達成可能であるものと考えています。
財務面については、2018年に半エクイティ性を持つ劣後債と劣後ローンのハイブリッドファイナンスで1,500億円を調達したほか、2020年7月にも同じスキームで2,000億円を調達しています。本中計・長計期間においては、ネットD/Eレシオを3.0倍まで許容することとしていますが、期末時点では同1.7倍まで良化させているため、件の電通本社ビルの取得に伴って新規借入を起こしたとしても、まだ借入金で対応出来る範囲かと思われます。但し、足許の株価水準は2015年のPO株価@1,274円を上回って推移していることから、従来よりエクイティファイナンスリスクは高くなっていると考えられるため、注意する必要がありそうです。
株主還元については、本中計期間から配当性向40%基準を設定しており、今期は期初時点では2円増配となる38.0円(配当性向39.0%)を予想しています。
*参考記事① 2020-11-11 1,054円 BY
【3003】 ヒューリック/引渡4Q期間に集中だが、増配開示で予算達成の蓋然性が高い。
*参考記事② 2020-05-13 1,039円 OP
【3003】 ヒューリック/10年長計は4年前倒しでフィニッシュも、更なるハイレバ経営を志向か。
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