【5020】ENEOSホールディングス/JSRのエラストマー事業を買収、油価前提保守的で増配も。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5020】ENEOSホールディングス(東証一部) OP

現在値 426.1円/100株  P/E 9.7 P/B 0.57 3月配当 9月配当 株主優待なし

 

17年4月に東燃ゼネラル石油と経営統合、国内シェア5割の石油元売り首位。

 

今期予想配当金は年2回・合計22円のため、配当利回りは約5.16%となります。
ENEOSホールディングスは株主優待制度を導入しておりません。

業績を確認していきます。

■2018年3月期 売上高 10兆3,010億円、営業利益 4,875億円 EPS 105.9円 

■2019年3月期 売上高 11兆1,296億円、営業利益 5,370億円 EPS 95.4円 

■2020年3月期 売上高 10兆117億円、営業利益▲1,113億円 EPS ▲57.9円 

■2021年3月期 売上高 7兆6,658億円、営業利益 2,541億円 EPS 35.5円 IFRS

■2022年3月期 売上高 9兆5,000億円、営業利益 2,600億円 EPS 43.6円 ceIFRS

□2021年6月1Q 売上高 2兆2,240億円、営業利益 1,619億円 EPS 30.3円(8/13)

□2021年9月2Q 売上高 4兆4,000億円、営業利益 2,600億円 EPS 48.6円 四e

 

2021年3月期の売上高は前期比43.8%増の2兆2,240億円、実質利益(注:表記営業利益から在庫影響を除したもの)は同1,188億円の増加となる2,155億円となり、2Q時点の通期見通し比で上振れて着地しました。前提油価は期初30.0$/Bのところ、通期実績45.0$となり、国内の精製マージンが堅調に推移したほか、在庫評価も黒字転換(+387億円)しました。金属事業についても、供給減少による銅価格の上昇(前提250¢→312¢/lb)や機能材料・薄膜材料といった電子材料の増販により増収となりました。他方、新電力事業では冬場の需給ひっ迫によるJPEXの高騰により、▲200億円程度の減益インパクトがありました。

 

2022年3月期の通期予算については、売上高が24.1%増の9兆5,000億円、営業利益は2.3%増の2,600億円、在庫影響を除きの実質利益2,300億円を予想しています。足許の油価市況を踏まえて、通期油価前提を45.0$→60.0$/Bに引き上げることによる単価効果(マージン11円/ℓ)や、新型肺炎禍一巡による数量の回復、金属事業の銅価格前提の引き上げ(312¢→期末350¢/lb)、新電力事業の一過性損失(JPEX高騰)の剥落が見込まれます。なお、この市況前提については、mark to marketではやや保守的な前提とみられます。去る8月13日には1Qを開示しており、売上高2兆2,240億円&営業利益1,619億円と見えずら上は大変順調ですが、約900億円の在庫効果除きでは実質減益となっており、実質的には概ねインラインでの進捗とみられます。

 

当社は現在の中期経営計画で、2023年2月期までの向こう3年間の在庫影響除きの実質利益を累計9,700億円/3ヵ年、ROE10%を計画していましたが、今般の新型肺炎禍の影響を反映し、実質利益目標を▲2,100億円減額し7,600億円としたほか、ROEも▲3%下方修正して7%、累計FCに至ってはゼロ圏(従前:1,500億円)にそれぞれ数字を置き直ししております。見直しの前提は一過性減益が▲5,000億円、コスト削減+900億円、銅価格上昇+1,000億円、他+1,000億円としており、活況な金属市況とリストラ策により新型肺炎禍による減益幅を4割程度に抑える計画です。

 

また、この5月にはJSRからエラストマー事業の買収(想定額:1,150億円)を発表しており、2022年4月買収実行予定のため翌期からの業績寄与となります。本件買収により、当社は注力中の機能素材事業において高品位タイヤ素材であるSSBRを中心としたモビリティ分野のコア素材を入手することとなるほか、当社既存のエラストマー研究開発技術との融合により、新製品上市が期待されます。業績貢献については、トップラインこそ年商1,500億円程度とみられるほか、新型肺炎禍の直近期実績は▲100億円超の赤字となったものの、巡行ベースでは逆に100億円程度の黒字が見込まれるため、やや割高感のある案件ではあるものの、まずまずの買収と言えそうです。

 

他方、最大の投資論点である還元方針については、中計方針である「(在庫影響除き)総還元性向50%」路線を今次ローリングでも堅持しており、配当についても下限配当を年22円としています。然しながら、現状の配当予想である22円は、予算に照らせば配当性向50.5%に過ぎず、保守的な予算前提から上振れがあるものとすれば、多少の配当上積み公算が高いものと解されます。

 

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