【9130】共栄タンカー(東証1部) NT
現在値 871円/100株 P/E 33.3 P/B 0.48 3月配当優待 9月配当
日本郵船系の外航海運会社。タンカーの長期貸船主体。コスモ石油向け過半。バラ積み船も。
配当は3月末一括の年20円配当のため、配当利回は約2.30%となります。
共栄タンカーは株主優待を導入しており、3月末に単元株を保有する株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈していますので、配当優待利回りは約3.45%となります。
業績を確認していきます。
■2018年3月期 売上高 125億円、経常利益 6.4億円 EPS 102.0円
■2019年3月期 売上高 134億円、経常利益 8.2億円 EPS 148.7円
■2020年3月期 売上高 125億円、経常利益 10.2億円 EPS 274.6円
■2021年3月期 売上高 116億円、経常利益 3.0億円 EPS 21.1円
■2022年3月期 売上高 120億円、経常利益 2.0億円 EPS 26.1円 ce
□2021年9月2Q 売上高 59.0億円、経常利益 0.5億円 EPS 13.0円 ce
2021年3月期の売上高は前期比6.7%減の116億円、経常利益は同70.3%減の3.0億円となり、大幅な減益となったほか、対予算でも未達となりました。前期取得の大型原油船(VLCC)2隻がフル寄与した一方(純増1隻)、海運市況悪化によりドッグ入りした入渠隻数は9隻(実績期の入渠は2隻、全支配船腹は15隻)となり、不稼働期間の長期化で大きく後退しました。特に新型肺炎禍で原油需要が減退し、コンタンゴ(順ザヤ)狙いの備蓄で陸上タンクが備蓄過剰となり、滞船理由で市況が高騰する局面が一時的にみられたものの、全般軟調に推移しました。他方、ばら積み船については中印の経済活動再開等により、比較的好調に推移しました。
進行期である2022年3月期の通期予算については、売上高が2.8%増の120億円、経常利益は同34.1%減の2.0億円と続落する計画となっています。入渠隻数は5隻まで減少するものの、うち大型のVLCCの比率が高いため全体の稼働率低下が見込まれます。また、稼働するLR2やMRに代表される石油製品船については短期契約が多く、船舶過剰による市況悪化の影響を受ける見通しであり、新型肺炎禍による船員交代費用などエクストラの費用発生が利益の重しとなります。
当社は中長期の経営計画を開示しておらず、取引先は当社筆頭株主(30.0%)である日本郵船(NYK)が全社売上の53.5%、大株主(6.5%)であるコスモ石油が32.4%を占めているほか、経営陣もNYKやコスモ出身者が多く、事実上これら2社のための下請け海運会社となっています。基本的にはNYK・コスモとの長期傭船契約で貸船料を得るモデルであり、VLCC新船を昨年9月に、本年2月には小型LNGの新船をそれぞれ竣工させたためこれらの上乗せが見込まれる一方、既存大型船の老朽化によるドッグ入りによる稼働率低下や修繕費の増大が重しとなっています。
特に新型肺炎禍からの立ち上がりにより、海運市況全体としては高騰しているものの、当社は海運会社との長期傭船契約を主体とした「貸し船」業であるほか、主力の原油・石油製品船については需要減退から市況が低迷しているため、既存船の貸船料下落圧力によるマイナス寄与が大きいような状況です。また、中長期的にはESG観点から原油需要の趨勢減が見込まれることから、不採算の原油タンカーについては退役・売却させ、LPG船等の新造に切り替えていく方針ですが、当分は原油需要増加による市況回復頼りの展開となりそうです。
財務の状況については、ここ数年自己資本比率20%程度となっており、大手海運会社並みの水準となっているほか、当社は後ろ盾にNYKが存在するためクレジットは担保されているものと考えます。また、配当については据置の年20円配当が予想されていますが、此方については業績の如何によらず配当されるものと考えています。
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