【2685】アダストリア/自社EC「.st」増勢で採算性は一段良化、他社比優位が際立つ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2685】アダストリア(東証1部) OP


現在値 2,105円/100株  P/E 25.0  P/B 1.87 2月配当優待 8月配当

カジュアル衣料店をSC内軸に展開。グローバルワーク等ブランド多数。
配当金(実績ベース)は2月末・8月末の年2回で合計50円で、配当利回りは約2.38%となります。

アダストリアは株主優待制度を実施しており、単元株を保有する2月末の株主に対して、3,000円分のお買い物券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.80%となります。なお、2年超の長期保有で優待額が5,000円になるので、その場合の同利回りは約4.75%となります。

業績を確認していきます。 

■2018年2月期 売上高 2,227億円 営業利益 50.0億円 EPS 18.3円 

■2019年2月期 売上高 2,262億円 営業利益 71.0億円 EPS 82.6円 

■2020年2月期 売上高 2,223億円 営業利益 128.0億円 EPS 135.1円 

■2021年2月期 売上高 1,838億円 営業利益 7.6億円 EPS▲14.8円

■2022年2月期 売上高 2,190億円 営業利益 65.0億円 EPS 84.1円 ce
□2021年8月中 売上高 980億円 営業利益 12.0億円 EPS 17.7円 四e


2021年2月期の売上高は前期比17.3%減の1,838億円、営業利益は7.6億円となり、7月に公表した通期見通し比で上振れて着地しました。新型肺炎の影響を受け、入居施設休業により、4月・5月と休業・時短を強いられた一方、6月からは概ね平常通りの営業を再開したほか、EC売上が期を通して概ね2桁を超える成長となったことから、下期の全社(実店舗+EC)の売上高は前期のおよそ9割水準にまで回復しました。業態別ではBAYFLOWやLAKOLEといった巣ごもり雑貨業態が堅調に推移した一方、都心型のエレメントルール系業態が低調に推移しました。利益面でトップラインの減少が大きく響いたものの、家賃減免や人件費減、早い段階での夏物仕入効率化等が奏功し、通期で営業黒字を確保しています。

 

2022年2月期通期の見通しについては、売上高が前期比19.1%増の2,190億円、営業利益は8.5倍の65.0億円を予想しています。新型肺炎禍の影響を引きずる前提で予算を組んでおり、単体SSSは118.2%(2019年2月期比は95.0%)とする一方、販管費を100億円以上積み増しており、これは自社EC「ドットエスティ(.st)」への広告費積極投下のほか正常化による費用復元に由るものです。出店については雑貨業態を中心に純増54店を見込んでいるものの、基本的にはEC注力とみられ、店舗受取等の020施策を強化しトップラインを伸ばす計画です。なお6月初旬に開示済みの1Q累計SSSは149.2%で仕上がっており、“外れ値”考慮と通期平準補正が必要であるものの、概ね計画線での推移とみられます。

 

当社は1年前に2025年を目途にした定性的取組を新たに開示した一方、業績目標の公表を見送っていましたが、今回公表で売上高CAGR5%、営業利益率8%、ROE15%という数値目標を開示しています。具体的な取組方針としては、①多ブランド化、②ECとコト消費強化、③海外強化、④飲食等外部提携戦略、の4点を注力事項としています。①は「LOWRYS FARM」「LEPSIM」といった定番ブランドの女性顧客高齢化にともない、40~50代向けの「Elura」、60代向けの「Utao」の開発にくわえ、韓国発の「ALAND」を導入し、“次世代大人マーケット”ドメインの深耕を急いでいます。そしてこれらはターゲット顧客をかなり絞っていることから、好調に推移している模様です。

 

②については、新型肺炎禍のこの1年で全社売上高構成比の20.5%→30.6%へと飛躍的に成長しているほか、自社ECである「.st」の強化と店舗を絡めたオムニチャネル化の推進により、手数料を中抜きされるZOZO等の外部ECからの顧客吸引で好採算化を図ります。特筆すべきはこの1年で会員数を140万人増の1,170万人にまで膨らませている点にあり、目下では「.et」売上構成比が15.9%と外部サイト経由を逆転している状況です。会社側では更にこの顧客シフトを推進すべく、従来型のブランド複合店の「COLLECT/BLISS POINT」を新コンセプトの「.st」の実店舗とし、O2O施策による囲い込みを図る方針です。

 

財務の状況については、当社は無借金経営を継続しており(※主力4行に300億円のコミラインを設定済)、足許時点で240億円の現金を丸抱えする好財務のため、自己資本比率も53.1%をキープしており、資金繰りには全く問題がない状況です。かような状況から、従業員給与の減額やリストラ等も特段実施していないものとみられ、配当予想も10円増配の50円配当を見込んでおり、他のアパレル各社とは一線を画する状況となっています。また、昨年実行した自社株買いについても株価水準次第では改めて期待できるものと考えています。

 

*参考記事① 2020-01-16 2,381円 OP

【2685】アダストリア/暖冬懸念あるが今期は逃げ切りか、改めて増配期待。

 

*参考記事② 2019-07-05 2,276円 OP

業績復調と、のれん償却負担剥落で大増勢か・アダストリア(2685)。

 

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