【8963】インヴィンシブル投資法人(東証REIT) OP
現在値 43,700円/1株 P/E--.- P/NAV 0.87 6月分配優待 12月分配優待
フォートレスを主スポンサーとする総合型リート。ホテルが8割、住宅が2割。
実績分配金は年2回・合計236円(69円+167円)配のため分配金利回りは約0.54%となります。
なお、当法人発表の分配金予想は【未定】となっており、実績ベースから大幅減配の可能性が高いのでご注意下さい。
インヴィンシブル投資法人は投資主優待制度を導入しており、6末・12末の単元投資主に対して、当法人保有ホテルと一部のパイプライン物件のホテル宿泊について、ベスト・アベイラブル・レートから10%割引で予約が出来るサイトのコードを進呈しています。
業績を確認していきます。
■2018年06月期 営業収益 131.0億円、経常利益 77.2億円 DPU 1,430円
■2018年12月期 営業収益 144.5億円、経常利益 83.8億円 DPU 1,683円
■2019年06月期 営業収益 273.3億円、経常利益 212.4億円 DPU 1,656円
■2019年12月期 営業収益 185.8億円、経常利益 116.3億円 DPU 1,910円
■2020年06月期 営業収益 94.1億円、経常利益 14.9億円 DPU 70円
■2020年12月期 営業収益 83.4億円、経常利益 6.2億円 DPU 102円
■2021年06月期 営業収益 【未定】億円、経常利益 【未定】億円 DPU 【未定】円 ce(2/25)
2020年12月期の営業収益は前期比11.4%減の83.4億円、経常利益は同47.1%減の6.2億円と大幅減での着地となり、分配金(DPU)については期初非開示ではあったものの、前期比32円減となる102円となりました。新型肺炎に端を発した緊急事態宣言が発出された5月の稼働率25.9%を底に、秋口にかけての「go toトラベル」による多大な追い風効果により改善基調を辿り、10月には56.8%まで回復したものの、年末にかけて感染が再拡大したことで尻すぼみとなりました。そのため、昨年3月から主要オペレーターであるマイステイズ・ホテルマネジメント(MHM)の固定賃料を約4割強まで大幅に減免し、収益が大きく毀損することとなりました。他方、12月に住宅6物件を111億円で売却し、26億円の譲渡益を計上したものの、穴埋め効果は限定的となりました。
また、進行期である2021年6月期の予算についても、期初時点から分配金予想を含め未定としています。足許まで開示されている国内ホテルのRevPARベースでの前年同月実績については、1月30.0%、2月23.1%、3月32.1%で進捗しており、3月にかけて団体需要や大学受験関連の需要を取り込んだため若干マシだったものの、最新の4月についても3月並みの水準に留まっている模様です。なおMHMより収受する固定賃料については、新型肺炎前の2019年との比較でRevPARが6割程度の水準に戻り、かつ、その状況が半年程度継続することが復活の条件(目安)としているため、進行期中の復元は困難となっています。そのため、住宅物件の追加売却なしで想定されるDPUは数十円から、多くても100円程度が想定されます。
当法人は新型肺炎が本格化する前までは年2回の合計分配金を2018年の3,113円から、2022年には3,700円までに引き上げる計画をしており、外部成長を一切見込まない一方、ケイマンの空港の拡張効果&ウェスティンの増築(巡航NOI15.2%)と内部留保吐き出しにより、向こう8年間の年間分配金下限を3,400円とし、フロアとしてコミットしていました。然しながら、MHMが経営破綻寸前の状況まで追い込まれたため、投資主利益を犠牲にして同社の救済を優先させることとなりました。
今後のアウトルックとしては、本年後半にはワクチンの進展が見込まれるほか、「go toトラベル」も復活する公算が高いものの、インバウンドの戻りは早くても2022年以降になるとみられるほか、ビジネスの出張需要は今後後退するとみられることから、新型肺炎禍以前のような収益水準に戻るのはかなり難しいと考えられます。一方、海外のケイマン2物件に関しては、入国者の一時隔離に使用されるなど昨年秋口から稼働を再開しており、4月の稼働率は3割弱となった模様であり、利用者の8割がワクチン進展の早い米国客であることから、国内ホテルより相対的に早い戻りが期待できそうです。
当法人のバリュエーションについては、分配金利回りによる下支えが機能しなくなってしまった以上、現状の株価で0.87倍程にまで沈んだP/NAVがひとつの下値メドとして考えられます。またポートフォリオにはなお540億円を超える賃貸住宅を保有しており、これらは鑑定評価額かそれ以上で比較的換金しやすいことから、120億円程度に及ぶ賃貸住宅含み益の顕在化による向こう半年程度は凌ぐことができるとみられるため、最終的にはワクチンとの綱引きとなるものの、最悪期の現状でもギリギリ有配で凌ぎ切るものと考えています。
*参考記事① 2020-11-02 33,250円 OP
【8963】インヴィンシブル投資法人/客足の戻りは想定超とみられるが、分配金水準回復には要時間。
*参考記事② 2020-04-29 25,740円 OP
【8963】インヴィンシブル投資法人/年間分配金下限3,400円を取下げ、投資論点は資産価値へ。
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