【8963】インヴィンシブル投資法人(東証REIT) OP
現在値 33,250円/1株 PER--.- PBR0.81 6月分配優待 12月分配優待
フォートレスを主スポンサーとする総合型リート。ホテルが8割、住宅が2割。
実績分配金は年2回・合計1,980円(1,910円+70円)配のため分配金利回りは約5.95%となります。
なお、当法人発表の分配金予想は【未定】となっており、実績ベースから大幅減配の可能性が高いのでご注意下さい。
インヴィンシブル投資法人は投資主優待制度を導入しており、6末・12末の単元投資主に対して、当法人保有ホテルと一部のパイプライン物件のホテル宿泊について、ベスト・アベイラブル・レートから10%割引で予約が出来るサイトのコードを進呈しています。
業績を確認していきます。
■2017年12月期 営業収益 126.4億円、経常利益 73.0億円 DPU 1,564円
■2018年06月期 営業収益 131.0億円、経常利益 77.2億円 DPU 1,430円
■2018年12月期 営業収益 144.5億円、経常利益 83.8億円 DPU 1,683円
■2019年06月期 営業収益 273.3億円、経常利益 212.4億円 DPU 1,656円
■2019年12月期 営業収益 185.8億円、経常利益 116.3億円 DPU 1,910円
■2020年06月期 営業収益 94.1億円、経常利益 14.9億円 DPU 70円 (8/25)
■2020年12月期 営業収益 【未定】億円、経常利益 【未定】億円 DPU 【未定】円 ce(8/25)
2020年6月期の営業収益は前期比49.4%減の94.1億円、経常利益は同96.4%減の4.2億円と大幅減での着地となり、分配金(DPU)については期初予想の1,812円から1,743円減となる69円に留まったほか、季節要因が排除出来る前年同期との比較でも1,587円の大幅減配となりました。新型肺炎に端を発した緊急事態宣言による外出自粛要請期間がホテル書入れ時のGWを跨ぐこととなったほか、ケイマン政府が3月下旬から空港を閉鎖したことにより、ケイマン2物件についても営業を停止したことが主な要因です。かような状況から、3月から6月までの主要オペレーターの固定賃料35億円を全額減免したほか、物件管理費用の肩代わり、業務委託手数料の上乗せ払い等を実施した結果、収益的に大きく毀損することとなり、期初に成田・福岡の2物件を取得した上乗せや新橋住宅売却による譲渡益20億円があったものの、殆ど穴埋めにはなりませんでした。
また、進行期である2020年12月期の予算についても、期初時点から分配金予想を含め未定としています。国内ホテルの前年同月比稼働率は7月40.6%、8月43.6%、9月48.3%、10月50.5%を見込んでいたものの、足許まで開示されているRevPARベースでの同実績については、7月28.8%、8月34.2%、9月43.9%で進捗しているほか、10月も50%程度が見込まれており、RevPAR実績が稼働率見込にサヤ寄せしてきていることから、「go toトラベル」もあって想定超で推移しているものとみられます。なお7月から9月までの主要オペレーターへの固定賃料については、従前のおよそ5分の1の水準となる8億円(+歩合)で合意しているものの、依然として10月以降の賃料条件については決定していません。そのため、実績期の譲渡益剥落等もあわせて考慮すると、現時点での分配金見通しは無配~100円程度が予想されます。
当法人は新型肺炎が本格化するまでは中計を走らせており、6月期・12月期を合算した年間の分配金を2018年の3,113円から、2022年には3,700円までに引き上げる計画をしていました。外部成長を一切見込まない一方、ケイマンの空港の拡張効果&ウェスティンの増築(巡航NOI15.2%)による内部成長と、2019年6月期の大型売却により内部留保111億円(1,945円/口)を新たに積み上げることで、向こう8年間の年間分配金を下限3,400円としコミットしていました。然しながら、今般の新型肺炎の影響は凄まじく、主要オペレーターであるマイステイズ・ホテルマネジメントが経営破綻寸前の状況に陥ったことから、一旦は投資主利益を犠牲にして同社の救済を優先させることとなり、この下限分配金「3,400円」は反故にされています。
特に当法人は2019年7月のPOで約244億円(@56,939円)をグローバルで調達しており、マイステイズ札幌駅北アスペンを中心に18物件を総額826億円(鑑定NOI利回り5.6%)分を取得していることから、これらの新規取得物件については収入が殆どない一方で、この2020年12月期からは固都税の費用化が通期でマイナス寄与することとなり、構造的に支えきれない形となっています。それでも、現時点でのなお100億円超存するものとみられる内部留保の取り崩しや、550億円程度保有を継続している住宅物件の売却による含み益顕在化といった打ち手もまだ残っていることから、新型肺炎の収束との綱引きとはなるものの、(ビジネスジャッジにより)無配は回避してくる公算の方が高いと考えています。
当法人については、分配金利回りによる下支えが機能しなくなってしまった以上、現状の株価で0.7倍程にまで沈んだP/NAVがひとつの下値メドとして考えられます。また、目下のトピックとしては、当法人のホテルポートフォリオは宴会・婚礼や大型会議用のバンケットが他ホテルよりも少ないので(例えばJHRと比べると)明らかに回復が早いほか、早くても11月以降とみられていたケイマン2物件の営業再開については既に10月から部分的に再開されているため、まずは月次で客足の戻りの強さを確かめるところが投資論点になろうかと思います。
*参考記事① 2020-04-29 25,740円 OP
【8963】インヴィンシブル投資法人/年間分配金下限3,400円を取下げ、投資論点は資産価値へ。
*参考記事② 2019-11-27 65,300円 OP
大規模売却益で年間DPU3,500円は達成可能圏、インヴィンシブル投資法人(8963)。
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