【8963】インヴィンシブル投資法人(東証REIT) OP
現在値 25,740円/1株 PER--.- PBR0.60 6月分配優待 12月分配優待
フォートレスを主スポンサーとする総合型リート。ホテルが8割、住宅が2割。
推定分配金は年2回・合計3,400円配のため分配金利回りは約13.2%となりますが、当法人発表の分配金は【未定】に変更されており、大幅に減配される可能性がありますのでご注意下さい。
インヴィンシブル投資法人は投資主優待制度を導入しており、6末・12末の投資主に対して、当法人保有ホテルと一部のパイプライン物件のホテル宿泊について、ベスト・アベイラブル・レートから10%割引で予約が出来るサイトのコードを進呈しています。(※10単元以上を保有する投資主が対象、複数回の使用が可能)
業績を確認していきます。
■2017年12月期 営業収益 126.4億円、経常利益 73.0億円 DPU 1,564円
■2018年06月期 営業収益 131.0億円、経常利益 77.2億円 DPU 1,430円
■2018年12月期 営業収益 144.5億円、経常利益 83.8億円 DPU 1,683円
■2019年06月期 営業収益 273.3億円、経常利益 212.4億円 DPU 1,656円
■2019年12月期 営業収益 185.8億円、経常利益 116.3億円 DPU 1,910円
■2020年06月期 営業収益 【未定】億円、経常利益 【未定】億円 DPU 【未定】円 ce(4/24)
■2020年12月期 営業収益 【未定】億円、経常利益 【未定】億円 DPU 【未定】円 ce(4/24)
2019年12月期の営業収益は、185.8億円(予算:180.4億円)、経常利益は116.3億円(予算:107.0億円)と大幅な増収増益での着地となりました。分配金(DPU)についても予想の1,725円から1,910円と185円の増配となったほか、季節要因が排除出来る前年同期との比較では227円の大幅増配となりました。ホテル歩合の多い当法人は、夏場を含む12月期に偏重する傾向があるものの、国内ホテルRevPARは前提の前年同期比+1.6%に対して、秋口の大型台風や日韓関係悪化等の影響もあり▲5.1%に留まりました。然しながら、ケイマン2物件が想定を上回ったほか、賃貸レジ(神楽坂)の売却により19.6億円の譲渡益を計上し、この一部をDPUの穴埋めに回したため、仕上がりとしては予算を上回る格好となりました。なお、昨年7月にPO(※後述)を実施した分の嵩上げがあるものの、前期の超大型物件の売却剥落影響が大きく、数字としては減収減益となっています。
進行期である2020年6月期の当初予算は、営業収益が前の期比0.4%減の185億円、経常利益は同3.3%減の112.5億円、分配金1,812円を見込んでいましたが、足許4月24日にこれらを全て未定に修正しています。当法人側の当初アナウンスによれば、仮に3月から8月までの半年間の歩合賃料想定(GOPベース)51億円がゼロになるとしても、翌2020年12月期も合算した年間分配金3,459円は内部留保や減価償却費等の非資金支出の吐き出しで配当可能としておりましたが、これを取り下げた格好となります。修正理由は、緊急事態宣言による外出自粛要請期間がGWを超える公算が高まったことにくわえ、ケイマン政府が3月下旬から空港を閉鎖したことにより、ケイマン2物件についても営業を停止したことによります。実際に3月の国内ホテルRevPARは前年同期比▲67.7%まで落ち込んだほか、足許4月についても同▲80%近い水準まで沈んでいる模様です。そのため、オフィシャルの分配金予想を未定に変更したものの、当座に限ってのみ内部留保吐き出しで賄う可能性が残るため、当初下限の1,700円(年換算3,400円)水準を想定しています。
当法人は2019年7月のPOで約244億円(@56,939円)をグローバルで調達し、マイステイズシリーズを中心に18物件を総額826億円、鑑定NOI利回り5.6%&償却後利回り4.0%で取得しています。取得したのは北海道の物件が多く、最大の物件が札幌駅北のアスペン(155億円)であり、このほか小樽ソニア(59億円)、ノルド小樽(43億円)、アートホテル旭川(31億円)など北海道だけで計8物件を取得しています。道外ではアートホテル石垣島(97億円)、富士吉田・展望温泉(94億円)等が比較的大きな物件となっています。富士吉田を除いて全体的に築年数が古く、償却後利回りも低くなっていますが、本件POの前に先述の大型物件の売却益111億円を内部留保しており、エクイティ調達額を抑えたほか、P/NAV1.1倍水準でのプレミアム増資によりPO後で+2.9%程の予想分配金の引き上げに成功していました。
そして今般の新型肺炎が猛威を振るうまでは中計を走らせており、6月期・12月期を合算した年間の分配金を2018年の3,113円から、2022年には3,700円までに引き上げる計画をしていました。(過去NAV割れで大型POを強行してハレーションを起こした経緯から)外部成長を一切見込まない一方、ケイマンの空港の拡張効果&ウェスティンの増築(巡航NOI15.2%)による内部成長?と、2019年6月期の大型売却で内部留保を111億円(1,945円/口)新たに積み上げることで、最悪の場合でもその取り崩しにより、向こう8年間の年間分配金を下限3,400円としコミットしていました。
然しながら、上述したように進行中の2020年6月期の着地を未定に変更したように、ホテル業界やオペレーターの経営状況等を再度見積もる必要があるとの判断から、中計と年間分配金下限3,400円についても取り下げる方向としたようです。修正前の2020年の配当総額の予想は約210億円であり、このうち歩合賃料が約105億円を占めていたため、内部留保の約127億円とのオフセットでカバー出来るはずでしたが、この貴重な内部留保を今年の分配金捻出でほぼ使いきってしまうという資本政策の是非を見直すことにした模様です。
そのため、株価的には分配金利回りがワークしなくなってしまったので、今後はホテルの資産評価によるバリュエーションが主な投資論点となりそうです。今後ホテルの鑑定評価がキャッシュ・フローとCAPレートの両面において一段と厳しくなることが予想されるものの、現時点でのP/NAV0.4倍台ならある程度の割安感があることもまた事実であり、これが株価の下支えとして機能することが期待されます。
*参考記事① 2019-11-27 65,300円 OP
大規模売却益で年間DPU3,500円は達成可能圏、インヴィンシブル投資法人(8963)。
*参考記事② 2019-04-12 53,900円 OP
ケイマンの導管性要件はクリアとなる公算・インヴィンシブル投資法人(8963)。
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