【5301】東海カーボン(東証1部) OP
現在値 1,916円/100株 P/E 45.8 P/B 2.03 12月配当・6月配当 株主優待あり
炭素製品大手。カーボンブラック国内首位。電炉用電極、半導体・太陽光向け素材も。
配当金は年2回・合計30円配当のため、配当利回りは1.57%となります。
東海カーボンは株主優待制度を導入しており、100株を1年以上継続保有する12月末の株主に対して、2,000円分相当のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.62%となります。また3年超の長期保有により進呈額が3,000円相当となるため、その場合の配当優待利回りは約3.14%となります。
業績を確認していきます。
■2017年12月期 売上高 1,062億円、営業利益 114億円 EPS 55円
■2018年12月期 売上高 2,313億円、営業利益 752億円 EPS 347円
■2019年12月期 売上高 2,620億円、営業利益 543億円 EPS 150円
■2020年12月期 売上高 2,015億円、営業利益 78.5億円 EPS 4.7円
■2021年12月期 売上高 2,279億円、営業利益 181億円 EPS 41.7円 ce
□2021年6月2Q 売上高 1,038億円、営業利益 46億円 EPS 0.94円 ce
2010年12月期の売上高は前期比23.1%減の2,015億円、営業利益は同85.5%減の78.5億円となり、当初より4割の減益を見込んでいた期初予算に対しても大幅未達となりました。世界的な新型肺炎禍により、主力の黒鉛電極事業については、鉄鋼業界の清算停滞により市中在庫の消化遅延
が大きく影響してセグメント赤字となったほか、カーボンブラック事業についても米国の自動車・タイヤメーカーの操業停止等の影響を受け大きく後退しました。一方、ファインカーボン事業については半導体・太陽電池向けが堅調に推移し、増収増益を確保しています。
進行期である2021年12月期の通期見通しについて、売上高は13.1%増となる2,279億円、営業利益は同2.3倍の181億円と反転増を見込んでいます。主力の黒鉛電極事業については、昨年後半より中国鉄鋼生産が急回復しており、滞留していた顧客側の電極在庫消化により下期からの持ち直しが見込まれます。またカーボンブラック事業についても、米国を中心のタイヤ生産が昨年後半から持ち直したことにより、年末から既にフル操業状態に回復しており、油価上昇による価格転嫁によるプライシング効果も相俟って反発する公算です。また、ファインカーボン事業についても、好調な半導体市況の継続が見込まれることから、全セグメントで大きく回復・上伸する見通しです。
当社はローリング形式で3年中計を公表しており、最新の内容では翌2022年12月期に売上高3,000億円、営業利益540億円を業績目標としていますが、“黒鉛電極バブル”が弾けた後に減額した表記目標であっても、達成不可能圏となっています。また、今次本決算時のローリングも見送っており、現状では5月頃の公表を予定している模様ですので、一旦はその内容を待つ形となります。足許でも続く新型肺炎禍により、鉄鋼生産の回復が会社側の想定より1年程遅れており、黒鉛電極の回復に時間を要しているものの、他のカーボンブラックやファインカーボンについては想定よりも立ち直りが早いため、そうした実態の市況が織り込まれるとみられます。
ただ当社はかねてより“黒鉛電極バブル”で得たあぶく銭を積極的なMAに投じ、業容の拡大と分散を進めてきた経緯があり、2017年にドイツSGL社(黒鉛電極)の米国部門に129億円を投じて買収したほか、2018年には78億円を投じて韓国法人の株式を追加取得(+9%)、同年9月には341億円を投じて米国SRC社(カーボンブラック)を矢次早に買収しています。また2019年7月にはアルミ精錬時の電気分解に使用されるカソードで首位級のシェアを保持する独コベックス(炭素黒鉛繊維)を約1,000億円を投じて買収し、翌2020年7月にはそのコベックスともに200億円を投じて仏サボイ(炭素黒鉛製品)を共同買収したため、当社のアルミ精錬用カソードのシェアを一層引き上げることに成功しています。かような状況から“黒鉛電極一本足打法”からは脱却しつつあります。
財務状況については、“黒鉛電極バブル”時代から配当水準を抑えてきたことから、自己資本比率は43%台と依然高い水準をキープしています。2019年10月には半資本認定されるハイブリッドファイナンスにより約500億円を調達しているほか、2020年5月にも同様のスキームで200億円を追加調達しています。ロール前の中計の財務指針として、ネットD/E0.0倍を目標としていますが、サボイ買収前でも0.3倍ほどなので、財務的には余裕がありそうです。なお、配当については実績期より18円減配の年30円まで切り下げていますが、これでも配当性向目安の30%を大きく上回る72%の水準なので、今期の業績が想定超に推移しても配当の上積みは難しいかもしれません。
*参考記事① 2020-05-19 889円 OP
【5301】東海カーボン/中計早くも赤信号だが業容拡大は順調、論点は配当維持。
*参考記事② 2019-11-02 1,096円 OP
破竹の大型買収続くも、のれん償却が重い・東海カーボン(5301)。
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