【3197】すかいらーくHD/財務制限条項に抵触、巨額なのれん減損のリスクに留意したい。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_2214.jpg

【3197】すかいらーくホールディングス(東証1部)  NT

現在値 1,694円/100株  P/E834.4  P/B2.03 12月無配優待 6月優待

「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」等のファミレスの運営。
配当基準日は6月末・12月末の年2回ですが、実績ベースで無配に転落しています。

すかいらーくは株主優待として6月末・12月末の単元株主に対し、2,000円分のお食事券を年2回進呈しているため、優待利回りは約2.36%となります。なお、1,000株までは持株数に応じた優待券がほぼ正比例で追加されます。

業績は下記の通りです。IFRSとなります。 

■2017年12月期 売上高 3,594億円、営業利益 281億円 EPS 86.4円

■2018年12月期 売上高 3,663億円、営業利益 228億円 EPS 58.0円

■2019年12月期 売上高 3,753億円、営業利益 205億円 EPS 48.0円   

■2020年12月期 売上高 2,884億円、営業利益▲230億円 EPS▲87.2円 

■2021年12月期 売上高 3,100億円、営業利益 50億円 EPS▲2.0円 ce
□2021年6月2Q 売上高 1,450億円、営業利益▲30億円 EPS▲25.3円 四e

2020年12月期の売上高は前期比23.2%減の2,882億円、営業利益は同赤転の▲230億円となり、大幅な減収減益となりました。予算前提の既存店売上高を前年比99.3%水準で置いていたものの、年明けからの新型肺炎本格化により臨時休業や時短営業を強いられたほか、客足の戻りも鈍く、75.7%水準に留まりました。特に東京圏オフィス街・商業地のガストやジョナサンが在宅勤務やインバウンド減少影響を色濃く受け、夢庵や藍屋店舗網を活用した寿司テイクアウト(TO)・デリバリーの強化や、グラッツェのTO特化業態等へのリモデルを実施したものの、埋めきれませんでした。出退店はTOが好調なから好しを中心に46店、閉店は178店となり、通期では前期末比132店純減の3,126店となりました。

2021年12月期の通期見通しについては、売上高が7.5%増の3,100億円、営業利益は黒転の50億円を見込んでおり、予算前提の既存店売上高は新型肺炎影響前の2019年比84%、出店数40~50店、リモデル50~60店となっています。出店については、引き続き「ショップINショップ」形式でガスト内にから好しの出店を進めるほか、実績期で500億円規模にまで増大したTO/デリバリーの強化(メニュー拡充、対応店舗数増)を図ります。そのほか、MDCの活用やデリバリーの内製化や業態間共同配送化により採算性の向上を狙うほか、2020年に実施した150億円超のコスト削減効果が通期寄与します(損分点は85%→80%まで低下)。新型肺炎が鎮静化していない現状は予算比ビハインドとみられますが、ワクチン次第で下期から持ち直す可能性も残ります。

 

新型肺炎禍ということもあり、この2021年12月期についても中計公表は見送られました。直前の中計期間では、決済多様化推進や、デジタルメニューの導入、アプリの高度化と配布クーポンの最適化により営業面で一定の効果があったとみられます。新型肺炎禍のこの2020年、2021年については、各種DXによるコスト削減策とともに、TO/デリバリーの強化・高効率化や、積極的なリモデル(業態転換)を進めています。TO/デリバリー型のガストについては、従来型の3分の1の投資額、面積は10分の1で出店可能なため、既存店の穴を埋める形で出店し、かつ自社スクーターで複数店の共同配送を実施します。

 

リモデルについては、既存のガストやジョナサンといった総合型ファミレスを廃して、好調な来店目的型の業態(むさしの森珈琲やLa Ohana、魚屋路)への転換を進めています。またその折衷策として、魚屋路の寿司ノウハウを和食業態である夢庵・藍屋へ導入し、特にTO/デリバリーに相性が良いと寿司売上構成比の向上を図ります。ただこのような各種施策を実施しても、当社のようなメガ外食企業は業態ポートフォリオが多く、展開エリアもあまねく全国となるため、所詮は外部マクロ環境に左右される要素が非常に大きく、何は無くともワクチンの進展次第というところになりそうです。

 

なお株主還元については、実績期より無配に転落しており、進行期についても現時点で未定となっています。。自己資本比率はIFRS16号適用により、会計上の理由で1000bps.程低下したものの、なお25%水準をキープしています。但し期末において財務制限条項に抵触しているほか、依然としてのれん1,461億円がB/Sにのしかかっているため、この減損リスクが現存していることから、当面は配当が見送られる(ないしは相当な低水準)の公算が高そうです。

 

*参考記事① 2019-11-14  2,031円 NT

【3197】すかいらーくHD/4Q単独は黒字化見込むも、コベナンツ抵触で通期無配転落。

 

*参考記事② 2020-05-06 1,605円 NT

【3197】すかいらーくHD/デリバリーやテイクアウト好調でも、“穴埋め”は難しい。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

にほんブログ村 株ブログ 株主優待へ にほんブログ村 株ブログ IPO・新規公開株へ