【3197】すかいらーくHD/4Q単独は黒字化見込むも、コベナンツ抵触で通期無配転落。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3197】すかいらーくホールディングス(東証1部)  NT

現在値 1,601円/100株 PER--.- PBR2.72 12月無配優待 6月優待

「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」等のファミレスの運営。
配当基準日は6月末・12月末の年2回ですが、無配予想となっています。

すかいらーくは株主優待として6月末・12月末の単元株主に対し、2,000円分のお食事券を年2回進呈しているため、優待利回りは約2.49%となります。なお、1,000株までは持株数に応じた優待券がほぼ正比例で追加されます。

業績は下記の通りです。IFRSとなります。 
■2016年12月期 売上高 3,545億円、営業利益 312億円 EPS 93.6円  

■2017年12月期 売上高 3,594億円、営業利益 281億円 EPS 86.4円

■2018年12月期 売上高 3,663億円、営業利益 228億円 EPS 58.0円

■2019年12月期 売上高 3,753億円、営業利益 205億円 EPS 48.0円   

■2020年12月期 売上高 2,930億円、営業利益▲200億円 EPS▲75.9円 ce修正(11/12)  
□2020年6月2Q 売上高 1,390億円、営業利益▲180億円 EPS▲95.8円 

□2020年9月3Q 売上高 2,135億円、営業利益▲211億円 EPS▲74.0円(11/12)

2020年6月中間期の売上高は前年同期比25.8%減の1,390億円、営業利益は同赤転の▲180億円となり、大幅な減収減益となりました。予算前提の既存店売上高を前年比99.3%水準で置いていたものの、年明けからの新型肺炎本格化により臨時休業や時短営業を強いられたほか、客足の戻りも鈍く、72.4%水準に留まりました。特に東京圏オフィス街・商業地のガストやジョナサンが在宅勤務やインバウンド減少の影響を色濃く受けており、夢庵や藍屋店舗網を活用した寿司持ち帰り・デリバリーや、グラッツェガーデンズをピザ専門店にリブランドし持ち帰り500円で販売するなど、新型肺炎禍に対応したモデル変革を進めましたが、客数減を到底埋めきれなかった格好です。なお出店は好調なから好しを中心に37店、閉店は31店となり、上期末ではネット6店増の3,246店となりました。

2020年12月期の通期予算については、一時“未定”へと変更していましたが、去る3Q時点で見通しを明らかにしており、売上高が前期比21.9%減の2,930億円(期初予:3,830億円)、営業利益は同赤転の▲200億円(期初予:205億円)を公表しています。デリバリーやテイクアウトへ注力やバイトの人件費の削減といった良化要素はあるものの、壊滅的なトップライン減や食材原価減を物流効率の悪化で打ち消してしまっていたりと苦しい状況が続きます。出退店については、通期で20店超の純減(前期は純増58店)となる見通しであり、業態についてもデリバリー対応力の高いガストに寄せるなどしています。なお11月12日に公表された3Qによれば、売上高は前年同期比25.1%減の2,135億円、営業利益は同赤転の▲211億円で進捗しており、同時に通期見通しを公表したことからインラインと考えられますが、4Q単独では黒字化を見込んでいる模様です。

 

今期は中計端境期となっていますが、前期に終わった3年中計については売上高3,900億円(CAGR3~4%)、営業利益380億円程度(CAGR6~8%)を目指していた業績目標については大幅未達で終わっています。決済多様化推進や、デジタルメニューの導入、アプリの高度化と配布クーポンの最適化による顧客獲得強化により高単価化が進んだ部分はあるものの、一方で客離れを招くなど課題を多く残す内容となりました。足許の取組としては、既存店最有効使用とデリバリー/テイクアウト強化のため“から好しINガスト”を低投資のショップインショップ方式で急速出店し、期末480店・翌21年3月末で1,130店まで展開する方針です。なお、から好し導入店では未導入店比でテイクアウト売上が7割増となるなど顕著な良化がみられている模様です(今のところ)。

 

また親デリバリー/テイクアウト業態以外では、むさしの森珈琲やLa Ohana、魚屋路といった来店目的型の業態が比較的堅調であることから、既存のガスト・バーミヤン・ジョナサン等をこれらの業態に転換していく方針です。このほか、楽天・Amazonでバーミヤンの冷凍餃子やガストのハンバーグの通販を開始しており、来春にも自社ECを立ち上げて外販の増加を狙うほか、自社工場製品を(複数業態間で)モジュール化して生産性の向上も図ります。

 

なお株主還元については、3Qのタイミングで未定としていた期末配当を無配予想としており、通期で無配に転落します。自己資本比率はIFRS16号適用が効き、実態とは異なる会計上の理由に1000bps.程低下したものの、なお26%水準をキープしています。しかしながら、この3月末にメガ3行に対して400億円のコミラインを引いたほか、9末にシ・ローンのコベナンツ(ネットカバレッジレシオ)に抵触してしまったものの不問措置を取って貰っている背景等もあり、この無配は妥当と考えています。

 

*参考記事① 2020-05-06 1,605円 NT

【3197】すかいらーくHD/デリバリーやテイクアウト好調でも、“穴埋め”は難しい。

 

*参考記事② 2019-11-14  2,031円 NT

中計頓挫も、既存店好調で今期は予算達成圏か・すかいらーくHD(3197)

 

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