【2975】スター・マイカHD/MSワラント未消化により、仕入量不十分。5年中計も取り下げ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2975】スター・マイカ・ホールディングス(東証一部) OP

現在値 1,256円/100株  P/E 14.5  P/B 1.17  5月配当 11月配当

中古区分所有マンションへ投資し賃貸と売却を組み合わせて物件運営。
配当金は5月末・11月末の年2回で合計26円で、配当利回りは2.07%となります。

スター・マイカはかつて株主優待制度を実施しており、100株以上保有の11月末株主に対して1,000円分のクオカードを進呈しておりましたが、2020年11月末進呈分を以て廃止しています。

業績を確認していきます。
■2017年11月期 売上高 230億円、営業利益 35.7億円 EPS 114.2円 

■2018年11月期 売上高 302億円、営業利益 38.3億円 EPS 118.4円 

■2019年11月期 売上高 321億円、営業利益 36.2億円 EPS 111.0円

■2020年11月期 売上高 395億円、営業利益 32.8億円 EPS 94.8円(1/10)

■2021年11月期 売上高 400億円、営業利益 29.8億円 EPS 86.1円 ce

□2020年5月2Q  売上高 181億円、営業利益 16.0億円 EPS 47.9円 ce 

2020年11月期の売上高は前期比23.0%増の395億円、営業利益は同9.5%減の32.8億円と増収減益となり、期初予算との比較でも増収減益となりました。主力の中古マンションの販売・賃貸事業については、幅広いエリアでの拡販を推進したことから、同セグメント単独の売上高は同34.6%増まで増加しましたが、一方で弾力的な価格設定(要は値下げ)も合わせて実施したため、利益水準は想定線までは届かなかった模様です。また、アドバイザリー事業については仲介件数の増により横ばいの利益を確保したものの、インベストメント(転売)事業については前期までに販売を全て終了したため、原価計上のみとなりました。


進行期である2021年11月期の予算については、売上高が1.1%増の400億円、営業利益は9.1%減の29.8億円と連続で減益を見込んでいます。主力の中古マンションの販売・賃貸事業については、事業環境としては低金利の継続や新築価格の高騰により底堅い需要が見込まれるほか、中古マンションの市中流通量もタイト化しているため、需給の引き締まりにより堅調な状況が続くとみられます。但し、当社については実績期での大量販売や、競合激化による在庫仕入難も相俟って、物件残高が減少(689億円→665億円)に転じているため、売上が作りづらい状況となっています。また、アドバイザリー事業も微減、インベストメント事業もゼロでみているため、“踊り場”の色が強い一年となる見通しです。

 

本来であればこの2022年11月期は5年中計の最終年度の位置付けであり、当初は売上高230→500億円(CAGR17%)、営業利益は35→85億円(CAGR19%)を目指していましたが、本年1月の本決算公表時にこの目標を正式に取り下げています。この非常に強気な予想の背景には順調な販売用不動産の存在(期末簿価ベースで665億円)がありましたが、上述のとおり仕入難と拡販策によりこの残高は減少に転じており、と同時に販売諸経費等を差し引いた推定含み益もこの1年で実に19億円も減少して、150億円になっています。足許の物件価格高騰を踏まえれば、仕入も販売も何もしなければ含み益が増える筈であるため、見た目以上に含み益が顕在化されてしまっているような状況です。

 

また本中計の達成前提として、販売用不動産残高を2倍以上の1,000億円へ積み上げることをKPIとし、かかる財務を手当するために2018年9月にUBSに対して約40億円分のMSワラントを発行した経緯があります。ただ下限行使価格が@2,342円と発行決定時の水準よりも大幅に高いところで設定していたため、結局行使が進まずに資金調達出来ず、本来であれば仕入を注力すべき時にアクセルを踏んで全然買えなかったことも今般の中計取り下げに繋がったものと解されます。

 

そのため株主還元についても、これまでも緩やかな増配基調を継続していたものの、ついに6円減配の年26円(配当性向30.2%基準)予想となったほか、2019年・2020年と段階的に株主優待制度を縮小・廃止するに至っています。これはひとえにMSワラントによる資金調達の目処が立たなくなってしまっていることが原因と考えられ、会社側の財務温存スタンスは極めて鮮明なものであると考えています。

 

*参考記事① 2020-03-26 1,258円 OP

【3230】スター・マイカ/単純転売に頼らないモデルを確立も、財務ケアは依然課題。

 

*参考記事② 2019-03-12 1,318円 NT

転売事業縮小と財務余力乏しく、中計達成は困難か。スター・マイカ(3230)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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