転売事業縮小と財務余力乏しく、中計達成は困難か。スター・マイカ(3230)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3230】スター・マイカ(東証一部) --

現在値 1,318円/100株 PER15.1 PBR1.41 5月配当優待 11月配当

中古区分所有マンションへ投資し賃貸と売却を組み合わせて物件運営。
配当金は5月末・11月末の年2回で合計32円で、配当利回りは2.43%となります。

スター・マイカは株主優待制度を実施しており、100株以上の11月末株主に対して1,000円

分のクオカードを進呈しているため、配当優待利回りは約3.18%となります。

業績を確認していきます。
■2015年11月期 売上高 193億円、営業利益 24.6億円 EPS 61.6円
■2016年11月期 売上高 209億円、営業利益 32.5億円 EPS 92.7円 
■2017年11月期 売上高 230億円、営業利益 35.7億円 EPS 114.2円 

■2018年11月期 売上高 302億円、営業利益 38.3億円 EPS 118.4円 

■2019年11月期 売上高 334億円、営業利益 29.5億円 EPS 86.9円 ce

□2019年5月2Q  売上高 171億円、営業利益 18.2億円 EPS 58.7円 ce 

2018年11月期の売上高は前期比31.2%増の302億円、営業利益は同7.4%増の38.3億円と

なり、期初の予想を上回って着地したものの、中間時の増額修正予算に対しては微妙に

届かない形での落着となりました。主力の中古マンションの販売・賃貸事業については、

積極的な営業活動と、昨今の既存住宅の再活用機運の高まりが追い風となり、販売が

順調に推移したほか、賃貸も地方都市での仕入れを増やしたため収入が増加しました。

またインベストメント事業についても、上期に売却した一棟卸の収益物件が大きく貢献し

た結果、中古マンションの賃貸事業に匹敵する規模の利益を(転売で)稼ぎ出しました。

進行期である2019年11月期の予算については、売上高が10.3%増の334億円、営業利益

は同23.0%減の29.5億円と2桁の増収を確保する一方で、利益は2割強もの大幅な減益を

予想しています。主力の中古マンションの販売・賃貸事業については、実績期において

地方都市での仕入れを増やしたこともあり、順調に物件残高が積み上がっているものの、

投資用収益物件の“単なる転売事業”が実態の姿であるインベストメント事業については

今期中での物件売却を完了させることとしており、これが全社業績に響く格好となります。

実際、同セグメントの予想利益は実績期の半分以下にまで落ち込む見通しとなっており、

事業丸ごとの廃止を視野に、利幅を狙わずに粛々と物件処分を進めるものとみられます。

 

当社は本年1月に新5年中計として前中計をローリングしており、最終年度である2022年

11月期に売上高230→500億円(CAGR17%)、営業利益は35→70億円(CAGR15%)という、

かなり強気な定量目標を掲げています。この強気予想の背景には順調な販売用不動産

の増加(簿価ベースで562億円、コスト控除後の含み益143億円)が挙げられますが、今期

の減益予想は案外であり、インベストメント事業の縮小と中古マンションへのフォーカスは

会社としてもシナリオ通りと思われるものの、中古マンション事業だけで達成出来るような

業績目標値ではないため、足許では一転して達成に不透明感が漂う状況となっています。

 

また、本中計期間の5年間で、中古マンション事業における販売用不動産残高を2倍以上

の1,000億円へ積み上げる前提となっており、その財務を手当するために昨年9月にUBS

に対して約40億円分のMSワラントを発行しています。希薄化率は7.2%で、下限行使価格

も一番低いもので@2,342円、と大幅に高いところで設定されているため、既存株主に対

して配慮された内容となっているものの、現在の株価水準はその6割以下なので、行使が

進む可能性が低い状況です。そのため、会社側目論見である、エクイティ調達40億円に

対し4倍のレバレッジをかけることで、160億円分の仕入を増やすことは難しくなっており、

少なくとも財務戦略の面においては“空振り”してしまっているものと判断されます。

 

また、株主還元についても、当社は増配基調を継続【7.5→9→14.5→23→29→32→32円

(予】していたものの、図らずも中長期的な配当性向目標である30%を“減益予想”という形

で達成してしまう見通しとなったことや、既述のとおりMSワラントによる資金調達の目処が

立たなくなってしまっていることから、今期で増配基調は完全にストップしたとみてよろしい

かと思われます。配当の据置予想と同時に、株主優待制度の縮小までメスを入れてきた

ことから、会社側の財務温存スタンスはかなり鮮明なものであると理解しています。

 

*参考記事① 2018-10-29  1,487円  --

一部指定替時の増資回避も、その後のMSワラント発行は案外。スター・マイカ(3230)。

 

*参考記事② 2018-03-13  2,256円  --

ローリング後の新中計は強気路線へと回帰、スター・マイカ(3230)。

 


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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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