【5019】出光興産/油価回復で配当復元期待も、東亜石油へのTOBが不透明。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5019】出光興産(東証一部) OP

現在値 2,699円/100株 PER53.4 PBR0.73 3月配当 9月配当 株主優待なし

石油元売り2位。石油化学や原油・石炭開発も。昭和シェル石油と2019年4月に経営統合。

 

今期予想配当金は年2回・合計120円のため、配当利回りは約4.45%となります。
出光興産は株主優待制度を導入しておりません。

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 31,903億円、営業利益 1,352億円 EPS 551円 

■2018年3月期 売上高 37,306億円、営業利益 2,013億円 EPS 845円 

■2019年3月期 売上高 44,251億円、営業利益 1,793億円 EPS 401円 

■2020年3月期 売上高 60,450億円、営業利益▲38.6億円 EPS▲76円 

■2021年3月期 売上高 45,000億円、営業利益 950億円 EPS 50.4円 ce修正(2/9)

□2020年9月2Q 売上高 20,157億円、営業利益 31億円 EPS▲108円

□2020年12月3Q 売上高 32,113億円、営業利益 493億円 EPS▲25円(2/9) 

 

2020年9月中間期の売上高は前年同期比32.8%減の2兆157億円、実質利益(注:表記営業利益に持分法利益を足し、在庫影響を除したもの)は同738億円の悪化となる▲251億円となり、会社予想との比較は無いものの、概ね市場予想水準での進捗となりました。予算前提の油価はバレル30.0$のところ、実績36.7$となり国内の精製マージンは堅調に推移しました。その一方、昨年1~3月の油価急落による在庫影響、及び、タイムラグ影響を受けた越ニソン製油所の持分取込損失が1Qに▲300億円程発生しました。ニソンは2Qに入って油価の持直しで在庫評価益を計上したものの、上期を通して軟調な海外市場の影響をモロに受けた格好となりました。

 

2021年3月期の通期見通しについては、3Q時点で増額しており、売上高が前期比25.6%減の4兆5,000億円(期予:3兆9,000億円)、実質利益は同801億円の良化となる550億円(期予:250億円)を予想しています。足許の油価市況を踏まえて、通期のレート前提を1バレルあたり25.4$→42.4$(2月以降は51.0$)に引き上げており、これにより在庫評価が良化することに加え、主要4品の経済活動の正常化にともなって3Qの販売数量が前年同期比98.8%に回復している状況を織り込んでいます(但しJET燃料は同55.7%と低調)。一方、越・ニソン製油所については安定稼働しているものの、シンガポール市況の悪化や期初の油価急落影響を通期で引きずり、引き続き厳しい状況となっています。

 

当社は昨年4月の昭和シェルとの経営統合が完了したことから、これまでの中期経営計画を1年ローリングしており、今期を起点とする3年後の2023年2月期に実質利益2,600億円、ROE10%超、FCF4,000億円を新たな目標に据えています。主な成長ドライバーは、総事業費1兆円のうち当社が1,500億円を投じた10年越しのプロジェクトである越・ニソン製油所(JV:ベトナム国営石油、ペトロベトナム、三井化学)であり、2018年12月より商用運転を開始しています。当初は設備トラブルもあり一昨年末にやっとフル操業状態となったものの、昨年初には新型肺炎禍による油価の暴落に見舞われたため、中計最終年度頃に見込まれていた黒字化が一層遠のく格好となりました。

 

かような状況からニソンは当面アテに出来ないほか、期待の再エネ事業についても、足許では寒波による電力スポット価格(JPEX)の上昇によるマイナス影響を受けているような状況です。ただ再エネに関しては、全固体リチウム電池材料の事業化や豪石炭鉱山遊休地におけるバイオマス発電、ソーラーパネル再生等の各種取組により、現状の発電量0.1GW水準から10年後に4.0GW水準まで引き上げる計画であり、中長期的には石油事業からの脱却を目論んでいます。また、上場子会社の東亜石油(5008)をTOBを実施しており、現状当社が国内で7か所保有する製油所を同社の既存製油所も含め再編・合理化していくものとみられます。特に東亜石油は世界でもごく僅かしかない重質熱分解装置を唯一保有しているほか、扇島(川崎)に莫大な土地を保有していることから、相応のポテンシャルを有していますが、足許ではアクティビストファンドに対抗されており、TOBの成立は不透明な状況となっています。

 

他方、最大の投資論点である還元方針については、今次中計発表で「総還元性向50%」にくわえて、配当金下限を160円に定めたほか、還元額の10%以上を自社株買いすることとしていました。然しながら、新型肺炎禍による油価暴落による環境の激変もあり、配当予想を40円減配となる年120円へ下方修正しています。会社側では今期業績見通しの良化にともない、いくらか復元配意向があるとみられるものの、まずはこの120円が下限としてコミットされるものかどうかを見極めたいと思います。

 

*参考記事① 2020-09-12 2,371円 BY

【5019】出光興産/中計配当金下限160円を早期に反故、新ガイドの提示が待たれる。

 

*参考記事② 2020-03-06 2,664円 BY

【5019】出光興産/ニソン製油所モタつくも、配当金フロア160円に安心感。

 

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