【5019】出光興産(東証一部) BY
現在値 2,664円/100株 PER8.0 PBR0.64 3月配当 9月配当 株主優待なし
石油元売り2位。石油化学や原油・石炭開発も。昭和シェル石油と2019年4月に経営統合。
今期予想配当金は年2回・合計160円のため、配当利回りは約6.01%となります。
出光興産は株主優待制度を導入しておりません。
業績を確認していきます。
■2016年3月期 売上高 35,702億円、営業利益▲196億円 EPS▲225円
■2017年3月期 売上高 31,903億円、営業利益 1,352億円 EPS 551円
■2018年3月期 売上高 37,306億円、営業利益 2,013億円 EPS 845円
■2019年3月期 売上高 44,251億円、営業利益 1,793億円 EPS 401円
■2020年3月期 売上高 61,000億円、営業利益 1,650億円 EPS 331円 ce修正
□2019年9月2Q 売上高 30,000億円、営業利益 603億円 EPS 150円
□2019年12月3Q 売上高 45,606億円、営業利益 1,081億円 EPS 215円(2/14)
2019年9月中間期の業績については、仮に前年同期から昭和シェルを100%連結したと仮定した概算値との比較を前提として、売上高は前年同期比13.8%減の3兆円、実質利益(表記の営業利益に持分法利益を足し、在庫影響を除したもの)は同55.7%減の697億円となりました。主力の燃料油において、米中貿易摩擦等に端を発した油価下落によるスプレッドの縮小や、昨年より商用運転を開始したニソン製油所についても、設備トラブルによる生産量減少により持分法取込利益が想定以下で推移しました。また、潤滑油等を扱う基礎化学品についても中国の減速が響いたほか、太陽電池も引き続き赤字となりました。利益面については、昭和シェルとの統合シナジーが想定超とみられるものの、油価下落の影響が大きく、実質的に2桁の減収減益となりました。
2020年3月期の通期予算も2Q時点で減額しており、売上高が前期比11.1%減の6兆1,000億円(従予:6兆9,700億円)、実質利益は同23.0%減の1,680億円(従予:2,200億円)に修正しています。足許の油価市況を踏まえて、通期のレート前提を1バレルあたり70.0$→63.1$に引き下げたほか、販売数量の減少、ニソン製油所の設備トラブルによる取込利益減少、そのほかパラキシレン、スチレンモノマー等基礎化学品の低調な状況を織り込んでいます。なお、去る2月14日に3Qが開示されており、油価の低迷がスプレッドと在庫に効いているものの、課題のニソン製油所が昨年末に修繕工事を完了し、年明けからフル生産に入っていることから、4Q単独期間より取込利益が回復するものと期待されます。ただそれでも、足許の新型肺炎流行による全般的なエネルギー価格の下落影響が大きく、子会社である東亜石油で発生した火災による設備不稼働もあるため、修正予算の達成は難しいとみられます。
当社は昨年4月の昭和シェルとの経営統合が完了したことから、これまでの中期経営計画を1年ローリングしており、翌期を起点とした3年後の2023年2月期に実質利益2,600億円(CAGR16%、今期落着見通し1,680億円が前提)、ROE10%超、FCF4,000億円を新たな目標に据えています。主な成長ドライバーは、総事業費1兆円のうち当社が1,500億円を投じた10年越しのプロジェクトであるベトナム・ニソン製油所(JV:ベトナム国営石油、ペトロベトナム、三井化学)であり、2018年12月より商用運転を開始しています。既述のとおり、設備トラブルもあって当初は安定操業していなかったものの、修繕を終えてフル操業に入っているため、赤字のピークは今期(▲400億円)であり、中計最終年度の頃には若干の黒字か収益均衡圏まで持ち直すことが期待されています。
また、このニソン製油所の安定操業以外にも、想定よりも前倒しで昭和シェルとのシナジー効果が発現していることや、潤滑油や有機EL材料、バイオマス燃料、その他太陽光電池の黒字化などいくつか成長のドライバーも存在します。大前提としてある程度の水準の油価(中計上は1バレル60$)が前提にはなるものの、現時点でこのローリング後の中計を支持したいと思います。
そして当社における最大の投資論点である株主還元方針については、今次中計発表で「総還元性向50%」にくわえて、配当金のフロアを160円に定めたほか、還元額の10%以上を自社株買いすることとしました。中計最終年度である2023年2月期より先についても同様に、配当金フロア160円を定めると共に、更なる増配・自社株買いを示唆していることから、株主還元策に一層の弾みがつくことが期待されます。なお、今期は120億円(1.59%)の自社株買いを実施していることから、配当と自社株買いを合算した総還元利回りはおよそ7~8%にまで達する見通しです。
*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。