【1928】積水ハウス/自社株買い枠削減も、増配基調継続の意志は強い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【1928】積水ハウス(東証1部) NT

現在値 1,933円/100株 PER10.7 PBR1.19 1月配当株主優待 7月配当

鉄骨主力の住宅首位。リフォームや保育園など非住宅事業も展開。海外育成中。
配当は1月末・7月末の年2回合計82円配当のため、配当利回りは約4.24%となります。

積水ハウスは株主優待制度を実施しており、1,000株以上を保有する1月の株主に対して、魚沼産コシヒカリ5㎏を進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.60%となります。(※同利回りは1,000株保有時。5㎏=3,000円、と仮定した場合における想定の利回り)

業績を確認していきます。

■2017年1月期 売上高 20,269億円、営業利益 1,841億円 EPS 175円

■2018年1月期 売上高 21,850億円、営業利益 1,955億円 EPS 193円 

■2019年1月期 売上高 21,603億円、営業利益 1,892億円 EPS 186円

■2020年1月期 売上高 24,151億円、営業利益 2,052億円 EPS 205円 

■2021年1月期 売上高 24,150億円、営業利益 1,750億円 EPS 167円 ce修正

□2020年7月2Q 売上高 11,679億円、営業利益 926億円 EPS 87.1円(9/10)

 

2020年7月中間期については、売上高が前年同期比3.3%減の11,679億円、営業利益は18.0%減の926億円となり期初予算との比較はないものの減収減益で折り返しました。主力の請負型/戸建事業新型肺炎禍で受注が低調だったものの、賃貸住宅事業については既受注分の工事進捗で増収となり、両事業とともに高単価化が進み、退職給付増や増税前仮需剥落といった要素を排除すれば採算性については改善しました。また、国際事業については豪州での戸建分譲や、中国での

マンション分譲が進捗したものの、前年上期の米国賃貸住宅の大型売却の剥落で大幅反落、再開発事業についても傘下REITへの物件拠出が小規模となり、このほか鴻池組子会社化による上乗せがあったものの、埋めきれませんでした。


なお2021年1月期の通期予算についても修正しており、売上高が前期比変わらずの24,150億円(従予:25,850億円)、営業利益は同14.7%増の1,750億円(従予:2,060億円)に減額しています。請負型の戸建事業については受注から売上計上まで約半年、賃貸事業については約1年間のタイムラグがあることから、新型肺炎禍の営業制限等の影響をこの下期に色濃く受ける格好となります。そのため、既に開示されている10月までの月次受注開示によれば、賃貸事業を除いて前年同期を上回る水準まで回復してきているものの、これら貢献は主に翌期以降となります。また、昨年10月に中堅ゼネコンである鴻池組を連結子会社化したことにより、建築・土木事業において営業利益が通期で150億円程の上乗せされ、実際に土木の受注は堅調に推移しているものの、国際事業と再開発事業の後退が厳しく、下方修正を余儀なくされています。


当社は今期から新たな第5次中計(3ヵ年)を公表しており、最終年度の2023年1月期に売上高27,000億円(CAGR4%)・営業利益2,200億円(CAGR2%)を目標数値を目指しています。新中計では従来型ビジネスである戸建住宅や賃貸住宅で微増を見込む一方、推定約8,000億円弱のエクスポージャーを有する海外事業を横ばい、傘下REITへの販売が主となる再開発事業の投資家分譲益を弱くみており、本中計期間はほぼ成長しない前提で組んでいました。ただ結果として、昨今の新型肺炎の本格化により、そもそも野心的に無かった本計画は維持可能な水準に留まったものと考えています。

 

新型肺炎前に練られた(であろう)本計画はかなりの“入れ繰り”が発生するものとみており、元より増益を予想していた戸建や分譲住宅事業については、戸建事業の3ブランド化により“積水ハウスノイエ(単価23~24百万円)”という新製品を投入し、廉価帯の営業強化により更なる上積みが見込まれます。また、在宅勤務増加による書斎等ニーズの増加でリフォーム事業も上振れ期待が高まり、会社側では単価5百万円を超える受注を全体の35%まで引き上げる目論見を描いています。

その一方、2018年に傘下のREIT2法人を合併させて、AUM5,000億円超の総合型REITへの纏め上げを済ませており、新型肺炎前までは順調にPOを繰り返して成長(当社は売却益を計上)させてきたものの、資本市場に不透明感があることから、これまでのような物件拠出は難しいと考えられます。そのため、REITを中心とする再開発事業や国際事業の低迷を、どこまで本業の戸建等で相殺出来るかどうかが中計達成のポイントとなりそうです。

 

なお、財務面については引き続き余裕のある状況であり、自己資本比率は49.4%(D/Eレシオは0.46)水準をキープしています。会社側は中期的な配当性向40%を公約として掲げており、今期は当初記念配込で5円増の86円配当を予想していたものの、期中に82円まで4円減額しています。また、ROE基準として10%(実績11.5%)を設定していることから、期初には150億円の自社株購入枠(1.02%)を設定したものの、配当同様に50億円まで減額していますが、これは期初時点で示した総還元性向53.4%を守るという意味においての配当と自社株買いのミックス変更であり、中長期的には累進的な増配基調を守りたいという意志があるようです。

 

*参考記事① 2020-06-11 2,159円 NT

【1928】積水ハウス/向こう3年は低成長見通しで、投資論点は株主還元へ移行か。

 

*参考記事② 2019-12-19 2,390円 OP

懸案の海外は復調気配、追加の自社株買いに期待・積水ハウス(1928)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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