【7458】第一興商/カラオケ逆風も自己資本厚く、残存者利益獲得の好機到来か。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_0621.jpg

【7458】第一興商 (東証一部) OP

現在値 3,400円/100株 PER317.7 PBR1.52 3月配当優待 9月配当優待

業務用通信カラオケ『DAM』で業界首位、直営でビッグエコー・飲食店。
配当金は年2回の合計113円のため、配当利回りは約3.32%となります。

第一興商は株主優待制度を実施しており、100株以上の3月末・9月末株主に対して、当社利用券(カラオケ店舗・飲食店舗で利用可)を5,000円分を進呈しておりますので、配当優待利回りを算出した場合は約6.26%となります。

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 1,420億円、営業利益 206億円 EPS 193円 

■2018年3月期 売上高 1,413億円、営業利益 211億円 EPS 230円
■2019年3月期 売上高 1,420億円、営業利益 196億円 EPS 274円 

■2020年3月期 売上高 1,462億円、営業利益 190億円 EPS 221円 

■2021年3月期 売上高 1,147億円、営業利益 72億円 EPS▲10.7円 ce修正(8/7)

□2020年6月1Q 売上高 166億円、営業利益▲11.8億円 EPS▲91.1円 (8/7)
□2020年9月2Q 売上高 442億円、営業利益▲13.0億円 EPS▲71.5円 ce修正(8/7)

2020年3月期の売上高は前期比1.7%増の1,462億円、営業利益は同3.1%減の190億円となり、予算比で増収を確保したものの、利益は未達となり連続減益となりました。利益柱のカラオケ事業においては、営業資産の増加(賃貸シフト)によりリース収入が増加したほか、2019年秋に新機種である「LIVE DAM i」を投入し好調に推移したため、当該セグは増収増益となりました。一方、カラオケ・飲食店事業については、1月までは既存店が好調に推移したほか、前期出店の「渋谷センター街本店」や「梅田茶屋町本店」といった大型店の出店による上乗せも寄与したものの、2月後半以降の新型肺炎影響の本格化により、3月単月では4割の減収に沈み、大幅減益となりました。

 

進行期である2021年3月期の予算については、1Q時点で開示に踏み切っており、売上高が21.6%減の1,147億円、営業利益が53.9%減の73.0億円と大幅な減収減益を予想しています。主力のカラオケ事業については、顧客店舗であるカラオケ業者やカラオケ飲食店が休業(時短営業)ないしは廃業に追い込まれていることから、稼働台数の6%減少を見込むほか、賃貸シフトに踏み切ったことが裏目に出る形でリース料減免にも応諾しているような状況です。カラオケ・飲食店事業については、緊急事態宣言前後の約1ヵ月間で全面休業に踏み切ったほか、その後の時短営業や密集度の高いカラオケ自体への忌避傾向など足許でもアゲインストの状況が続いています。会社側では10月には前年の9割水準に戻る想定で予算を組んでいるほか、2Q・3Qでボトムラインで雇用調整給付金の戻りを20億円分既に織り込むなど、やや楽観的に数字を取り込んでいる印象も強く、最終黒字を見込む予算には下振れ懸念があります。


当社は中長期的な経営計画を開示していないものの、今後の成長戦略として、カラオケ事業におけるエルダー市場の深耕を志向しており、デイサービス大手のツクイと協業して認知症を軽減する介護予防・健康増進のプログラムの研究を進めているほか、NTTとはコミュニケーションロボットの共同開発を進めています。当社のエルダー(向け)システムは全国各地の高齢者施設や自治体関連施設に既に導入されはじめていますが、上述のような機能面での拡充だけでなく、「松平健」といったエルダー向けコンテンツの拡充により、エンターテイメント性と付加価値の強化を図っています。既にカラオケ事業は、カラオケの専門店や、スナック等の飲食店向けはほぼ飽和してしまっているため、ブルーオーシャンとなっている高齢者向け施設の開拓が中長期的な業容拡大のキーファクターとなります。

 

一方、新型肺炎禍における当座の成長施策としては、繁華性のある駅前商業立地にかなりの空き物件が出ていることから、賃料を抑制しつつ、新規出店を積極化させるものとみられます。特に当社はカラオケ機器の賃貸リース収入で積み上げた自己資本が非常に厚く、足許水準でも60%を超えるなど外食他社やカラオケ他社を圧倒しているため、積極出店出来る体力もあることから残存者利益を確保しやすい事業環境になったという見方も出来ます。また商業ビルを賃借だけでなく、オンバランスで持つということにも手慣れた会社なので、カラオケ・居酒屋・カフェ等の複合用途による自社利用前提で空ビル一棟買いということも可能であり、逆に“泳ぎ幅”が広がったと言えます。


なお、株主還元については、最終損益均衡圏にもかかわらず年113円配当の配当予想を据え置いているほか、足許8月には50億円(2.8%)という当社にしては大きめな自社株買いを公表しており、手厚い自己資本を活かした資本政策がダイナミックに打たれており、好印象です。

 

*参考記事① 2019-09-10  4,755円 NT

業績頭打ち感強く、今後の資本政策に注目・第一興商(7458)。

 

*参考記事② 2017-01-28 4,520円 NT

積極的な株主還元姿勢が一歩後退、第一興商(7458)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村