【3167】TOKAIホールディングス/見えがかりは堅調だが、営業費の未消化寄与が大きい。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3167】TOKAIホールディングス(東証1部) NT


現在値 1,010円/100株 PER15.6 PBR1.98 3月配当優待9月配当優待

東海地盤。LPガスのザ・トーカイとCATV等のビック東海が統合。
配当は3月末・9月末の合計28円配のため、配当利回りは2.77%となります。

TOKAIホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末・9月末の年2回、単元株を保有する株主に対して、500円分のQUOカードや"水セット"など選べる優待を進呈しております。なお、クオカードを選択した場合における配当優待利回りをは約3.76%となります。

業績を確認をしていきます。

■2017年3月期 売上高 1,786億円、営業利益 127億円 EPS 64.5円 

■2018年3月期 売上高 1,860億円、営業利益 109億円 EPS 51.1円   

■2019年3月期 売上高 1,916億円、営業利益 130億円 EPS 59.3円

■2020年3月期 売上高 1,959億円、営業利益 142億円 EPS 62.9円 

■2021年3月期 売上高 2,053億円、営業利益 150億円 EPS 64.6円 ce   
□2020年6月2Q 売上高 451億円、営業利益 37.8億円 EPS 18.6円(7/30)

 

2020年3月期の売上高については、前期比2.3%増の1,955億円、営業利益は8.9%増の142億円となり期初予算水準で着地し、連続で過去最高を更新しました。主力のLPガス事業については、商圏拡大による契約獲得を図り、2019年4月に買収した下仁田町ガス事業や、同年8月に20.7%の持分を取得した伊勢崎ガスがフルに寄与しました。LPガス同様にCATV事業や通信・サービス事業、アクア事業についてもMAやクロスセルの一層の進展による契約数を積み上げ、継続契約顧客数は期初の2,902千件から101千件純増の3,003千件となり、モメンタムが加速しました。なお、利益面の良化が顕著なのは、前期に高騰したガスの仕入値がひと段落したことや、好採算の法人向け通信需要が堅調だったこと等に由ります。


2021年3月の予算については、期初時点から開示しており、売上高は4.8%増の2,053億円、営業利益は同5.5%増の150億円を予想しています。継続契約顧客数は期初の3,003千件から102千件純増させ期末3,105千件まで積み上げる計画であり、LPガスについてはMAによる商圏買収による積み上げを目指すほか、趨勢減の続くISPをはじめ大手通信会社との競合激化により苦戦中のMVNOなど通信系のテコ入れを図ります。去る7月30日には1Qを開示しており、売上高は前年同期比1.5%減の451億円、営業利益は17.1%増の37.8億円と利益のみ高進捗を示していますが、これは新型肺炎による営業自粛で顧客獲得費用が未消化だったほか、解約を見送った顧客も多かったことにより採算性が良化したことに由るものであり、一時的な利益増と考えられます。


今期は4年中計の最終年度となっており、この2021年3月期にも売上高3,339億(CAGR17%、その後2,743億円に減額)、営業利益225億円(CAGR15%、その後185億円に減額)を目標としていましたが、新型肺炎による影響もあり減額後修正計画にも大きく届かない見通しです。達成へのドライバーとして、MAやアライアンス投資に1,000億円の巨費を投じる計画であり、MA等による商圏拡大と、CATV・ガス石油・情報通信等の既存会員に他商品も売るクロスセルの比率を7%から20%へ引き上げることが基本戦略となります。

 

MAについては、ここ数年は主力のLPガス事業において自治体からの事業譲受による商圏拡大を進めてきたものの、昨年10月には東京電力EPと折半出資の合弁会社を設立し、東海3県における都市ガス事業についても本格的に展開していく方針です。さも東邦ガスからのシェア奪取と見せかけて、実は中部電力管内での陣地取りを進めたい思惑のある東京電力の金看板を借りて、LPガス・都市ガスの2軸で地盤の中部圏の深堀りを狙います。また、昨年9月には岐阜の建設業者である日産工業買収(年商20億円)、本年3月には仙台CATV(年商10億円)などガス事業以外の分野に関してもMAを進めており、規模は小粒ながらもガス以外の事業の拡大も志向しています。

 

本4年中計開始からの3年でMAやアライアンスを11件も実施し、会員数約35万人/売上高76億円/営業利益5.5億円を積み上げたものの、既述の通り目標には遠く及ばない公算です。なお、この6月にはベトナム7位のLPガス事業会社の傘下子会社の45%持分を取得したほか、MaaSへの取組強化としてゼンリン子会社と提携するなど、とこれまでとは明らかに毛色の違うMAやアライアンスを強化してきているため、次期中計はこの辺の取組による新たな成長ストーリーが投資論点となりそうです。

 

財務面については、2015年に100億円規模のMSCBを発行したほか、その後の順調な業績により自己資本の積上げが進んだため、自己資本比率は38.0%水準まで回復しています。それでも会社側は引き続きMAによる外部成長志向が根強いため、財務温存を優先する公算が高く、配当については引き続き年28円配(配当性向44.3%)を据え置く可能性が高いとみられます。

 

*参考記事① 2020-01-20 1,067円 OP

【3167】TOKAIホールディングス/全セグメント順調で、通期は上振れ濃厚か。

 

*参考記事② 2019-08-21 997円 OP

中計未達公算も、高い外部成長志向は健在・TOKAIホールディングス(3167)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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