【2193】クックパッド/海外事業はアルゴリズム影響も強く、果てしない“種蒔き”が続く。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_9912.jpg

【2193】クックパッド(東証一部)  OP

現在値 320円/100株 PER71.1 PBR1.47  12月配当(無配) 株主優待あり

料理レシピサイト最大手。個人向け有料会員、広告収入が柱。生鮮ECを育成。
配当基準日は12月末ですが、無配予想となっています。

クックパッドは株主優待制度を実施しており、12月末時点の単元株主に対して、自社プレミアム会員の6ヵ月利用クーポンを付与しておりますので、配当優待利回りは約5.25%となります。また1年長期保有により同クーポンは12ヵ月となるので、その場合の利回りは約10.50%となります。
(別途、友人等に配布可能な6ヵ月利用可能な同クーポンを3枚進呈あり)

業績を確認していきます。 
■2016年12月期 売上収益 168億円、営業利益 50.1億円 EPS 8.7円  
■2017年12月期 売上収益 134億円、営業利益 53.9億円 EPS 32.6円 

■2018年12月期 売上収益 118億円、営業利益 16.6億円 EPS 3.8円  
■2019年12月期 売上収益 117億円、営業利益 3.0億円 EPS▲9.0円

■2020年12月期 売上収益 116億円、営業利益 8.2億円 EPS 4.5円 四e 
□2020年6月中間 売上収益 57.0億円、営業利益 3.9億円 EPS 2.4円 四e 

2019年12月期の売上収益は前期比1.0%減の117億円、営業利益は同81.6%減の3.0億円となり、期初予想との比較は無いものの壊滅的な減益となりました。国内事業については「プレミアム会員」と呼ばれる課金会員の期中平均人数は前年比2.4万人増の201.7万人へと微増したほか、海外事業の月間利用会員数(課金区別のなし)は同164万人増の4,185万人と順調に増加しました。その一方、好採算の広告売上が食品業界のTVCMへの回帰や店頭販促強化傾向により減少したほか、海外事業(ロシア・ギリシャ・ハンガリー)子会社ののれん代を一括で減損認識したため、これがIFRS上▲7.7億円の営業利益を押し下げることとなり、大幅減益の主原因となりました。


進行期である2020年12月期の予算については非開示となっているものの、売上高はほぼ横ばいの116億円、経常利益は2.7倍となる8.2億円程度が観測されています。KPIである国内事業の課金会員数は200万人前後で長らく横ばいを続けており、これが安定的な収益基盤にはなるものの、無課金を含めた平均利用者数は3年前の6,000万人から足許で5,200万人強まで減少しているほか、食品メーカーの戦略の広告戦略見直しに伴い広告売上が伸び悩んでいる点が懸念事項となります。海外事業については、会員の積上げが進んでいるものの、Google等サーチエンジンのアルゴ変更の影響を色濃く受けており、(先行投資期間のためどのみち赤字ではあるものの)外部環境に振られる展開が続いています。なお、利益については実績期における海外事業のれん減損の剥落で大幅な増益に転換するものとみられます。

 

当社は中長期経営計画及び定量目標を設定していないものの、2017年からの10年間を「投資フェーズ」と位置付けており、国内首位を確固たるものとするほか、海外も進出各国で圧倒的首位を確保することを志向し、短期・中期の利益(株価も)を犠牲にする旨のアナウンスをしています。そのため、残りの向こう7年間はP/L的な見所は少なくなる見通しであり、KPIである内外会員数の推移や、海外事業における会員課金開始や広告事業の本格展開などが定性的な材料となります。

 

国内事業については、2017年に傘下の動画配信子会社が三菱商事を相手先に第三者割当増資を実施し40億円の調達に成功しています。この動画配信については、POP小型サイネージをスーパー店頭に15,000台(5,700店舗)に設置しているほか、「cookpadLive」という著名人同時実演型配信アプリを強化しており、こちらも主力サイト同様にゴールド会員という課金システムを搭載しており、サイトのみならず動画の課金会員を増やしていく目論見ですが、此方は足許の状況も今後の見通しも一切非開示となっており、現状ではこれといった成果が無く当面は赤字が続くものと解されます。

 

かような状況のため、仮に何かの新規サービスがヒットしたり、海外課金を開始して儲かり出したとしても、向こう7年間を投資期間として位置付けている以上、再投資に回して利益成長させない公算が高いとみられます。そのため、当社における投資論点としては、340億円程の時価総額に対して無借金で230億円程を保有する“現金の塊”の当社を、創業者である佐野陽光氏その他経営陣がバイアウトしたりするシナリオや、当面は大きな赤字をタレ流すことが確実である海外事業を切り捨てて、優良な国内事業に絞られるのを待つといったシナリオとなりそうです。それでもFANG等が“物量作戦”で来たら簡単に吹き飛んでしまう根源的なリスクを孕んでいるため、現金同等物の多寡だけが企業価値と株価の下支えになるような展開が当面続くと予想しています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村