【9384】内外トランスライン/中計達成時期を3年後ろ倒しへ、過剰なキャッシュの活用が論点。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9384】内外トランスライン(東証一部) OP

現在値 1,087円/100株 PER9.0 PBR1.23 6月配当12月配当優待

独立系の国際海上輸出混載首位。豊富な仕向け地と運航頻度が強み。
配当は6月末・12月末の年2回合計34円のため、配当利回りは約3.13%となります。

 

内外トランスラインは株主優待を実施しており、12月末現在の100株保有株主に対して、1,500円相当のカタログを進呈しているため、配当優待利回りは約4.50%となります。

業績を確認していきます。
■2016年12月期 売上高 199億円、経常利益 13.3億円 EPS 45.2円 
■2017年12月期 売上高 217億円、経常利益 15.8億円 EPS 122円 

■2018年12月期 売上高 232億円、経常利益 16.5億円 EPS 118円

■2019年12月期 売上高 228億円、経常利益 15.9億円 EPS 112円 

■2020年12月期 売上高 240億円、経常利益 16.8億円 EPS 120円 ce

□2019年3月1Q 売上高 53.9億円、経常利益 3.3億円 EPS 23.6円(4/30)
□2019年6月2Q 売上高 116億円、経常利益 7.6億円 EPS 54.5円 ce


2019年12月期の売上高は前期比1.8%減の228億円、経常利益は同3.8%減の15.9億円となり、増収増益を見込んでいた期初予算から一転して、減収減益となりました。主力の輸出混載(LCL)と輸出フルコンテナ(FCL)において、米中貿易摩擦の影響や、中国自体の景況感悪化にともなって取扱数量減となり、堅調だった米国・インドによる穴埋めと2Qからのサーチャージ改定による転嫁だけでは補いきれませんでした。また利益面については、トップラインの低調と、予定していなかった内外釜山物流センターの期中取得による販管費の増加が響きました。

 

進行期である2020年12月期の予算については、売上高は5.1%増の240億円、経常利益は5.4%増の16.8億円を予想しています。米中貿易摩擦による影響一巡が見込まれるほか、2019年から実施したサーチャージ改定効果の通期寄与が見込まれるため、反発を見込んでいます。なお、4月30日付で1Qが開示されており、新型肺炎による消費者の食料品備蓄ニーズの増加等で新EPA発効済の欧州産食品の取り扱い数量増加といった好材料が確認されるほか、通期予算も据え置いているため、意外に順調な業績進捗が確認されるものの、会社側のスタンスは「新型肺炎の影響が試算出来ないから取り敢えず据え置く」といった姿勢であり、予算の達成確度は不透明な状況と言えそうです。

 

実績期は3年中計の最終年度であり、売上高300億円(CAGR10%)、営業利益21億円(CAGR17%)を業績目標としていましたが、少なくとも定量面については大幅未達で終了しました。定性的には、AEO通関業者認定を取得したため、通関・梱包・国内配送といったフルライン化を進めたり、インドやミャンマーといった海外拠点の新設・拡張や、韓国の拠点拡大など一定の成果がありましたが、米中の貿易摩擦や中国景気の減速といったマクロの影響や、トラック運送料や倉庫作業料といった人件費系コストアップの影響を受けて、厳しい経営環境から数字が伸ばせませんでした。

 

新中計については、3年後の2022年12月期に売上高300億円(CAGR9.5%)、営業利益21億円(CAGR7.0%)と数値を据え置いているため、従来中計を3年後ろ倒しにした格好となります。注力方針としては、通関業者となったことによるフォワーディング事業の強化や海外拠点の拡大などいった内容になっており目新しさは無く、米中摩擦や新型肺炎下のかような不透明な状況を鑑みるとオーガニック成長はアテに出来ないため、新中計の達成可否は新規のMA案件の有無に左右されると思われます。


財務面については、無借金状態を継続しており、企業規模に見合わないネットキャッシュ約63億円を丸抱えしている状況です。手金で相当規模のMAを出来る機動性を維持しているものの、ここ最近は特にMA案件もないため、株主還元の強化が望まれます。配当性向30%基にで増配基調にあったものの、配当額は【16.3→16.5→25→30→32→32→34→34円】、と足許で増配がストップしており、今期の期初時点の配当予想も34円(配当性向28.3%)に留まっているような状況です。

 

*参考記事① 2019-10-29  1,389円 OP

MAと資金需要なく、自社株買いが期待される局面・内外トランスライン(9384)。

 

*参考記事② 2019-04-09 1,344円 OP

業績伸長鈍化も、米中貿易摩擦影響は限定的か・内外トランスライン(9384)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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