【3244】サムティ(東証一部) OP
現在値 1,164円/100株 PER7.04 PBR0.67 11月配当優待 5月配当
関西軸に投資用マンション開発、不動産再生販売等を行う。賃貸が安定収益柱。
配当金は5月・11月の年2回、合計82円のため、配当利回りは7.04%となります。
サムティは株主優待制度を実施しており、11月時点の3単元超保有株主に対して、当社が運営するセンターホテル東京、大阪の宿泊券を各1枚ずつ進呈しております。これらを1枚5千円として換算した場合の、3単元保有時想定配当優待利回りは約9.87%となります。
業績を確認していきます。
■2016年11月期 売上高 524億円、営業利益 85.8億円、EPS 196円
■2017年11月期 売上高 604億円、営業利益 101億円、EPS 234円
■2018年11月期 売上高 842億円、営業利益 140億円、EPS 283円
■2019年11月期 売上高 855億円、営業利益 153億円、EPS 247円
■2020年11月期 売上高 1,000億円、営業利益 175億円、EPS 246円 ce
□2020年5月2Q 売上高 412億円、営業利益 120億円、EPS 190円 四e
2019年11月期の売上高は前期比1.5%増の855億円、営業利益は同9.7%増の153億円となり、期中で微増額修正したものの、結局はおおむね期初予想水準での着地となりしました。不動産事業については、傘下の住宅REITに対して、昨年8月末に青葉台(54億円/153戸)、錦糸町(15億円/93戸)など計22棟の賃貸マンション総額188億円をバルクで突っ込んだほか、ホテルアセットについても「エスペリアイン大阪本町」、「エスペリアホテル長崎」にくわえ、開発中の「メルキュール京都ステーション」についても先行して土地を売却しており、これら開発型案件の利益率が特に高かったことから、利益については一段増となりました(なおこのうち一部はホテルREIT向けのウェアハウジングとみられます)。
進行期である2020年11月期の通期予算については、売上高が16.9%増の1,000億円、営業利益は13.7%増の175億円を予想しています。業績の原資となる開発用地の残高については、実績期の仕入予算250億円に対して273億円を積み上げています。また、一部固定資産を含む棚卸資産の残高についても、同400億円に対して588億円と高水準を確保しており、傘下のREITに下ろす地方の小型レジだけではなく、北新地徒歩1分で物件価格は100億円を優に超えるとみられる大和証券大阪支店ビルといった希少な優良物件も含まれています。売上予算の内訳としては、開発型は21物件492億円、転売型は30物件274億円、その他投資分譲で6物件61億円を其々計画していますが、予算達成の鍵は傘下REITのPO可否にあり、現状では不透明な状況と言えそうです。
今期は新3年中計「サムティ強靭化計画」の2年度目となっており、3年経過後の2021年11月期に営業利益200億円(CAGR12%)を目指すほか、その他のKPIとしてROE15%(当初16.9%)、自己資本比率30%(当初37.9%)を設定しています。今回中計については、従来のP/L重視の業績拡大戦略から一変して、アセット品質や財務余力の確保を優先したB/S温存志向の強い内容になっており、傘下REITにおけるAUM残高の積み上げを目指すほか、REIT向けに利回りの取れる地方での仕入・開発に注力するような組み立てとなっています。実際、財務面の手当として、2018年9月に発行済株式数が1.5倍となるライツ・オファリングで149億円を調達しています。
その上で、従前より提携関係にあった大和証券グループ本社が、2019年5月に当社自社株処分と転換社債の割当を受ける形で127億円を出資し、当社持分の3割を握る筆頭株主に躍り出ています。この協業関係のひとつの成果として、上述の大和証券大阪支店ビルといった通常は買えないような超希少物件が入手出来たり、大和証券は既に4本のREIT(オフィス公募、住宅・ヘルスケア公募、住宅私募、ホテル私募)を運用する一大REIT運用会社であるため、当社開発物件の新しい出口として活用出来るという分かりやすいメリットが期待出来ます。逆に昨年8月には大和証券が当社傘下REITの三社割当増資を“親引け分”を除いて一手に引き受け、持分は異例となる40%超水準まで引き上げており、スポンサーとREITの両方で一層関与の度合いを深めています。
今年は当社主導で公募のホテルREITを立ち上げる計画でしたが、足許の新型肺炎ショックで、ホテルの営業状況もさることながら、物件としてのホテルの売買市況も軟調な推移が予想されます。そのため、目論見通りのホテル売却が出来るか否か不透明な状況となっているほか、別角度の論点として資本市場がボラタイルなため、そもそもホテルREITを上場できない可能性もあるため、中計を達成するための前提がいくつか崩れている印象を受けます。そのため、表記の中計業績目標達成のためには、大和証券の追加支援(その場合は希薄化がともなう場合もある)や、新型肺炎の劇的な収束などが必須となるため、少なくとも現時点では達成が難しいと解されます。
なお株主還元については、配当性向を30%水準まで切り上げており、今期は3円の増配となる年82円配当(配当性向33.2%)を予想しています。やや出し過ぎの印象もありますが、自己資本比率は現時点で32%ほどを確保しているため、まずまず許容範囲かと思います。
*参考記事① 2019-10-24 1,994円 OP
大和証券G入りで、業績モメンタムは再加速へ・サムティ(3244)。
*参考記事② 2019-03-26 1,473円 OP
150億円規模のライツ完了で、財務は一段良化・サムティ(3244)。
*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。