【3287】星野リゾート・リート投資法人/LTV引き上げで対応も、外部成長に手詰まり感。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3287】星野リゾート・リート投資法人(東証REIT) OP

現在値 283,600円/1株 PER10.7  P/NAV0.51 4月分配 10月分配

星野リゾートをスポンサーとするホテル特化型。LTV35%近傍など堅実な財務戦略。

予想分配金は年2回の合計26,474円配で、分配金利回りは約9.33%となります。

星野リゾート・リートはかつて投資主優待制度がありましたが、既に廃止されています。

業績を確認していきます。

■2018年4月期 営業収益 55.4億円、経常利益 26.2億円 DPU 12,338円

■2018年10月期 営業収益 58.0億円、経常利益 28.3億円 DPU 12,796円

■2019年4月期 営業収益 59.2億円、経常利益 28.7億円 DPU 12,974円

■2019年10月期 営業収益 60.8億円、経常利益 29.2億円 DPU 13,173円(12/16) 
■2020年4月期 営業収益 61.5億円、経常利益 29.3億円 DPU 13,234円 ce修正

■2020年10月期 営業収益 61.2億円、経常利益 29.3億円 DPU 13,240円 ce修正

 

2019年10月期の決算は、営業収益が前期比2.7%増の60.8億円、経常利益が同1.8%増の29.2億円とほぼ予算通りの水準で着地しました。2018年12月末に取得した「界 アルプス」および、昨年3月末に取得した「ニラカナイ西表島」、「日航高知旭ロイヤル」の3物件・計89億円分(加重平均NOIは6.4%)が通期寄与して増収しました。一方、歩合賃料のタイムラグにより2018年6月に発生した大阪北部地震や、同年9月の台風発生とそれに伴う関空閉鎖等によるマイナス影響(特に歩合100%のハイアットリージェンシー大阪)をこの期で受ける格好となったものの、冒頭の3物件のデット取得によりオフセットしました。なお分配金については、前期比+200円、予算比+64円となる13,174円で落着しています。

 

進行期である2020年4月期の予算については、営業収益が1.1%増の60.8億円、経常利益が0.5%増の29.3億円を見込んでいます。歩合賃料のタイムラグにより、引き続き2018年の地震や台風の影響を遅れて受けるほか、大阪の大量供給による需給悪化(H&R大阪本町、完全歩合のハイアットリージェンシー大阪)や日韓関係悪化によるマイナス影響が大きく、成りの場合は減収減益予算となるものの、軽井沢・那覇の2物件(※後述)を取得することで穴埋めし、増収増益を予想しています。然しながら、昨年12月半ばに開示された本件予算には年明けから本格化した新型肺炎の影響を織り込んでいないため、未達公算が極めて高いとみられます。一応、期初時点の分配金予想については、60円増となる13,234円を予想しています。

 

当法人は元よりレバレッジが低い安定運用をしていたため、従来のLTVのコントロールレンジを35%→上限40%に引き上げており、実際に分配金の減少が見込まれる今2020年4月期にデットによる期中取得を実行しています。取得したのは星野リゾートの新業態ホテルである「BEB軽井沢(21.7億円/鑑定NOI5.9%)」、「ソルヴィータホテル那覇(38.6億円/鑑定NOI5.2%)」で取得しています。本件取得により、LTVは35.7%→37.8%に上昇する見通しであり、上限までの残りの取得余力は64億円となります。これら2物件は他社オペレーターよりも実績が良好とされるスポンサー運営物件であり、固定と歩合のミックス賃料ですが、若者向けで安価な軽井沢はまだともかく、取得金額の高い那覇の方が新型肺炎によるインバウンド減少等の影響をシャープに受けているものとみられ、苦労する物件を抱え込んでしまった印象です。

 

本来的には本法人はPOによる外部成長がメインのリートであり、スポンサーである星野リゾートの物件パイプラインが300億円程あるほか、これとは別に「星のや沖縄」や話題の「OMO7大阪新今宮」を含む政投銀との共同ファンドのパイプラインが600億円程あるため、玉自体は十分に用意されている状況です。ただ、2020年をメドに年間分配金を4%程度成長させつつ、年間200~250億円買っていくことでAUM2,000億円を目指していましたが、現状のP/NAV0.5倍付近の株価水準でのPOは現実的ではなく、当面は既存で抱えている物件のテコ入れのみの内部成長に頼る格好となりそうです。低簿価物件の売却による含み益顕在化などの策も考えられますが、現状の不動産流通市場で目論見通りの売却を実行するのもまた困難であり、手詰まり感が強い印象です。

 

*参考記事① 2019-10-04  594,000円 OP

来年から一段高い分配金成長が期待される、星野リゾート・リート投資法人(3287)。

 

*参考記事② 2019-03-01  532,000円 OP

地震・台風影響をLTV引き上げでカバー、星野リゾート・リート投資法人(3287)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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