【9201】日本航空 (東証一部) BY
現在値 2,668円/100株 PER9.8 PBR0.77 3月配当優待 9月配当優待*
国内線・国際線ともに2位。公的資金投入とリストラで更正法終結。
配当は3月末・9月末の合計110円のため、配当利回りは4.12%となります。
日本航空は株主優待制度を導入しており、3月末の単元株保有株主に対して、国内便が半額になる株主割引券を進呈しておりますので、1枚3,000円換算した場合の優待利回りは約5.24%となります。(※2単元保有の場合には、9月にも追加で1枚発行されます。)
業績を確認をしていきます。
■2016年3月期 売上高 13,366億円 営業利益 2,091億円 EPS 481円
■2017年3月期 売上高 12,889億円 営業利益 1,703億円 EPS 456円
■2018年3月期 売上高 13,832億円 営業利益 1,745億円 EPS 383円
■2019年3月期 売上高 14,872億円 営業利益 1,761億円 EPS 432円
■2020年3月期 売上高 14,860億円 営業利益 1,400億円 EPS 269円 ce修正(1/31)
□2019年9月2Q 売上高 7,598億円 営業利益 813億円 EPS 147円
□2019年12月3Q 売上高 11,308億円 営業利益 1,201億円 EPS 221円(1/31)
2019年9月中間期の売上高は前年同期比1.3%増の7,598億円、営業利益は同16.0%減の813億円となり、会社予想との比較はないものの増収減益となりました。国際線旅客数については、上期ASK+2.5%と供給を増やしたものの、日本発の高単価ビジネス需要の伸び悩みや競合激化、中国旅客の減少によりRPK+0.9%止まりとなり苦戦が鮮明となりました(国際線の予算前提はASK+3.1%、RPK+0.9%)。一方、国内線については前年同期の天災・天候影響が無くなったこともあり、若年層を中心とした個人旅客を中心とした前売運賃需要が底堅く推移し、旅客数・有償座席利用率等は過去最高を更新しました。ただ利益面については、上述のトップライン減少が響いたほか、油価影響以外ではエンジン償却方法変更で約50億円の費用増、発着枠拡大に備えた先行費用増が嵩み、実力ベースでも約100億円強の減益で落着しました。
2020年3月期の通期予算については、3Q時点で大きく減額しており、売上高が前期比0.1%増の14,860億円(期初予:15,630億円)、営業利益は20.5%減の1,400億円(期初予:1,700億円)まで修正しており、ベースとなる前提指標についても国際線下期はASK+1.8%→+1.6%/RPK+4.8%→+2.7%、国内線下期はASK+3.2%→+3.0%/RPK+1.3→+2.9%にそれぞれ修正しています。今期は国際線の増便効果があるものの、ビジネス需要減少やインバウンドの減少、競合激化といった事業環境に加えて、足許で激しさを増す新型肺炎による中国客の減少や国内線ビジネス客についても追加でマイナス影響もあり、この新型肺炎の影響は修正予算には殆ど織り込んでいないことから、表記修正後予算でもなお過大であり、落着の数字は更に下押しされるものとみております。利益についても、既に油価下落による費用減330億円分(前提:SGK90.0$→76.8$)を掃き出したほか、その他費用効率化で100億円の良化を織り込んでいるものの、トップラインの減少を埋められない見通しです。
当社は俗に言う「8.10ペーパー」による羽田発着枠不利配分の回避を企図して(?)、中計目標設定は通常保守的に行われる傾向があるものの、現時点でローリング済の最新の3年中計では翌2021年3月期に売上高16,000億円、営業利益1,800億円(償却費変更があるので実態は1,700億円)を見込んでいます。なお、2021年3月期に発生する羽田空港の国際線発着枠拡大については既に日系航空会社25便分(全50便)の配分が決定されており、当社枠は11.5便増(ANAは13.5便増)となっていますが、この配分自体はANAより少ないながらも“質のJAL、量のANA”とされる経営方針の違いによるものであり、当社意向に沿う配分がなされた模様です。
そんなわけで羽田発着枠配分のイベントこそ一応無事に通過したものの、今期~来期にかけては新型肺炎で大幅な減速が見込まれるほか、東京五輪の開催も微妙になっていることから、保守的に設定しているはずの表記中計目標も未達が確定的な情勢です。そのため、当社における投資論点はあくまで次に示す株主還元にあると考えています。
これまで当社は、株主資本配当(DOE)3%と配当性向30%の還元基準を定めていましたが、欠損金繰越控除制度適用終了と通常税率採用によりEPSが削られてしまうため、「株主資本配当率(DOE)3%超、配当性向35%、総還元性向35~50%」の新基準に切り替えています。今期は上期で200億円(2%)の自社株を購入したほか、下期も更に追加で200億円(2.3%)を買ってきており、年間配当の110円を足し合わせた今期の総還元性向の出来上がりは現時点で85%を超過する見通しです。会社側はこの自社株買いについて「非常に強い株価メッセージ」と公言しているため、翌期も相応の水準で買ってくる蓋然性は高く、翌期も総還元性向は50%を超えてくることが期待されます。
*参考記事① 2019-09-03 3,313円 BY
羽田枠は11.5便増加で決着、高水準の株主還元続く・日本航空(9201)。
*参考記事② 2018-09-05 4,058円 OP
油価上昇が気掛かりも、修正中計の株主還元強化は評価・日本航空(9201)。
*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。
特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に
基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。