【8214】AOKIホールディングス/紳士服不振で複合カフェ頼りだが、超高水準の株主還元続く。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8214】AOKIホールディングス(東証1部) OP

現在値 960円/100株 PER15.2 PBR0.59 3月配当優待 9月配当優待

紳士服専門店2位。複合カフェやカラオケ、結婚式場『アニヴェルセル』も。
配当は3月末・9月末の合計46円配であり、配当利回りは4.79%となります。

AOKIホールディングスは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末時点で単元株を保有する株主に対しAOKI・ORIHICAの20%割引券を5枚(他割引併用可)やカラオケ・コートダジュール、複合カフェの快活CLUBの20%割引券を10枚進呈しております。割引券のため優待利回りの算出はしませんが、さらにこれとは別にアニヴェルセルの10万円分の割引券も付いてきます。

業績を確認していきます。
■2016年3月期 売上高 1,885億円、経常利益 176億円、EPS 127.7円
■2017年3月期 売上高 1,940億円、経常利益 138億円、EPS 83.3円

■2018年3月期 売上高 1,984億円、経常利益 140億円、EPS 84.8円

■2019年3月期 売上高 1,939億円、経常利益 118億円、EPS 53.3円 

■2020年3月期 売上高 1,925億円、経常利益 113億円、EPS 62.8円 ce

□2019年9月2Q 売上高 827億円、経常利益▲4.9億円、EPS▲11.5円 
□2019年12月3Q 売上高 1,271億円、経常利益▲0.9億円、EPS▲15.6円(2/6)

2019年9月中間期の売上高は前年同期比2.0%減の827億円、経常利益は同赤字転落の▲4.9億
円となり、公表予算との比較はないものの減収減益となりました。主力のファッション事業については、予算前提の既存店売上高100%に対して前年割れの97.9%となりました。これはビジネスウェアの変化による趨勢減や天候不順が主な要因であり、消費増税前の8月・9月の駆け込み需要を取り込んでも(9月単月は同113%)前年に届きませんでした。婚礼事業については昨年末に閉店した福岡店の分を控除してなお期初5,525組の受注を抱えていましたが、結婚式多様化等の理由で他既存施設の受注も低迷しており、トップラインの減少によりセグメント赤字に転落しています。一方、エンタメ事業のカラオケや複合カフェについては、複合カフェを積極出店(40店)したほか、既存店売上高も前提の105.2%に対して、106.6%で着地させており、積極的な出店と店舗改装が奏功し、引き続き好調な状況が続いています。

 

なお2020年3月期通期の予算については中間時点で減額しており、売上高が前期比1.3%減の1,925億円(従予:1,940億円)、経常利益は同5.0%減の113億円(従予:117億円)に修正しています。例年通り下期偏重決算となる見込みですが、前提となる既存店売上高前提をファッション事業で98.5%、エンタメ事業103.2%へそれぞれ置き直しをしています。ファッション事業は構造的不振から不採算店の閉鎖を加速させる方針であり、今期の店舗純減は▲52店を予定しており、今期末の展開店舗数を645店まで縮小させます。また、婚礼事業についても受注苦戦が鮮明であり、改装や広告宣伝費に費用を投じることから、大幅なセグメント減益となる見通しです。また、唯一善戦しているエンタメ事業についても、既存店の好調が続いているものの、今期は通年で130店もの出店を予定しているため、先行費用増によりこちらもセグメント減益となる公算です。そのため、全セグメントでの減益公算が高いことから、トータルで微減益を予想する会社予算は明らかに過大であり、下方修正後予算もまた未達圏にあると判断されます。

 

当社は期限の定めはないものの、中長期的な定量目標として、営業利益率を7.5→12.0%、ROEを3.2→10.0%、EPSを53.3→180円(矢印の前は直近実績)へそれぞれ伸長させる計画です。ここ数年はファッション事業を中心とした不採算店の閉鎖や改装、カラオケ・複合カフェへの業態転換を進めてきましたが、こうしたS&Bの取組はほぼ一巡しており当面は既存店活性化にする方針です。主力のファッション事業では、“スーツ離れ”という趨勢減が続く中で、可洗スーツや高伸縮スーツといった機能性商材の投入では市場対応しきれないことから、一部都心店舗などでオーダースーツなどの高単価路線へと舵を切っていますが、今後スーツに代表される紳士服市場が良化する可能性は低いことから、店舗省人化および広告効率化、ひいてはエンタメ事業への人員シフトを進めて事業自体を縮小させていくものと考えられます。

 

またブライダル事業については、これまでは施設の圧倒的なグレード感をウリに集客し、高収益を誇っていましたが、施設老朽化等による客離れが進んでいます。会社側は婚礼付帯ビジネスとして宝飾や保険などで底上げを図っていますが、根本解決は期待出来ないほか、現時点で新店の開業予定も開示されていないことから、ファッション同様に事業縮小方針と考えられます。かつての主力2事業がかような状況のため、基本的に伸び盛りのエンタメ事業にほぼ全てのリソースを投じていくものと考えられ、複合カフェ・カラオケ・フィットネスの3業態で年間100店前後の出店をする計画であり、特に足許で展開中の“フィットネス併設型複合カフェ”が独自性のあるフォーマットとして受け入れられるかどうかが、今後の当社の伸びシロを占う上でのポイントとなりそうです。

 

上述のように主力2事業がシュリンクしている状況のため、当社における投資論点はもはや株主還元のみに絞られていますが配当性向を30%基準に定め、記念配当を除き累進的な配当政策【15→17.5→22.5→33→36→40→43→44→45→46円(予】を実施しています。またこの配当政策とは別に総還元性向を50%に定めており、昨年8月には15億円(1.16%)、本年2月にも15億円(1.17%)の自社株買いを実行してきているため、今期の総還元性向も50%どころか、100%を軽く超過してくる見通しであり、事実上のフル還元となる公算です。

 

*参考記事① 2019-08-30 1,005円 OP

“スーツ離れ”顕著だが、今期の株主還元もフル水準へ・AOKIホールディングス(8214)。

 

*参考記事② 2018-08-11 1,538円 OP

業績頭打ちだが、大型記念配当で今期はフル還元へ・AOKIホールディングス(8214)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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