“スーツ離れ”顕著だが、今期の株主還元もフル水準へ・AOKIホールディングス(8214)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8214】AOKIホールディングス(東証1部) OP

現在値 1,005円/100株 PER15.9 PBR0.62 3月配当優待 9月配当優待

紳士服専門店2位。複合カフェやカラオケ、結婚式場『アニヴェルセル』も。
配当は3月末・9月末の合計46円配であり、配当利回りは4.58%となります。

AOKIホールディングスは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末時点で単元株を

保有する株主に対しAOKI・ORIHICAの20%割引券を5枚(他割引併用可)やカラオケ・

コートダジュール、複合カフェの快活CLUBの20%割引券を10枚進呈しております。割引

券のため優待利回りの算出はしませんが、さらにこれとは別にアニヴェルセルの10万円

分の割引券も付いてきます。

業績を確認していきます。
■2016年3月期 売上高 1,885億円、経常利益 176億円、EPS 127.7円
■2017年3月期 売上高 1,940億円、経常利益 138億円、EPS 83.3円

■2018年3月期 売上高 1,984億円、経常利益 140億円、EPS 84.8円

■2019年3月期 売上高 1,939億円、経常利益 118億円、EPS 53.3円 

■2020年3月期 売上高 1,940億円、経常利益 117億円、EPS 62.8円 ce

□2019年6月1Q 売上高 433億円、経常利益▲1.2億円、EPS▲3.3円(8/7)
□2019年9月2Q 売上高 840億円、経常利益 8.5億円、EPS 4.7円 四e

2019年3月期の売上高は前期比2.3%減の1,923億円、経常利益は同15.1%減の140億

円となり、予算を下回り2桁の減益着地となりました。主力のファッション事業については、

既存店売上高101%を予算の前提としていましたが、天候不順の影響にくわえ、ビジネス

スタイルの変化に由るスーツの趨勢減もあり、97.8%水準に留まりました。また、婚礼事業

についても年末の福岡店の閉鎖にくわえ、受注苦戦も響き、挙式組数は前期の6,088組

から、5,708組へ減少しました。その一方、カラオケ事業は前期並みで凌いだほか、複合

カフェ事業については夏の避暑需要や改装効果の発現により、既存店売上高は105.2%

と高水準をマークました。ただ全社トータルの業績としては、構成比の大きいファッション

事業が押し下げ役となり、トップライン段階から前期割れとなってしまいました。

 

進行期である2020年3月期の予算については、売上高が微減の1,940億円、経常利益は

1.2%減の117億円を予想しています。例年通り下期偏重決算となる見込みですが、前提と

なる既存店売上高をファッション事業で100%、複合カフェで事業101.8%で置いており、

退店続くカラオケについては、新たにエンタメ事業というカテゴリーを設定した上で、複合

カフェ事業と統合する方針です。一方、婚礼事業については、受注の状況がオンハンドで

ある程度把握可能ですが、今期の挙式組数は閉店した福岡店をネットしたベースで5,525

組まで減少するほか、改装投資も嵩むため、大幅なセグメント減益が予想されています。

なお、去る8月7日に公表された1Q決算によれば、ファッション事業と婚礼事業の苦戦が

顕著な一方、エンタメ事業は好調に推移しており、コントラストが際立ってきていますが、

主力のファッション事業の底打ちが見えない限りは、今期も未達が濃厚かと思われます。

 

当社は期限の定めはないものの、中長期的な定量目標として、営業利益率を7.5→12.0%、

ROEを3.2→10.0%、EPSを53.3→180円(矢印の前は直近実績)へそれぞれ伸長させる計画

をもっています。ここ数年はファッション事業を中心とした不採算店の閉鎖や改装、カラオケ

・複合カフェへの業態転換を進めてきましたが、こうしたS&Bの取組はほぼ一巡しており

当面は既存店活性化にする方針です。主力のファッション事業では、急速な“スーツ離れ”

が続く中で、可洗スーツや高伸縮スーツといった機能性商材の投入だけでは対応が難しく

なっていることから、確実にスーツを着る層への訴求と高単価化を目論見、「Aoki Tokyo」

というオーダー専門店の展開を始めています(平たく言うとコナカのDifferenceのパクリ)。

 

また、これまで当社利益を大きく牽引してきたブライダル事業(アニヴェルセル)は過当競争

と施設老朽化による客離れで頭打ちから減少に転じてきているため、会社側は施設改装を

テコ入れの柱に据えているものの、他事業とのシナジーが薄いため、利益が出ているうち

に事業会社の売却を含めたリストラが望まれます。そして当社で唯一気を吐いているのが

エンタメ事業であり、当セグだけは成長の伸びシロがあるものの、肝心の店舗物件の供給

(ファッション事業やカラオケ事業の閉鎖不採算店)が減ってきているため、思惑通りに出店

が進められるかどうかはやや疑問とも言えます。そのため、現時点では当社の中長期的な

成長シナリオを展望するのは難しく、何は無くとも本業のファッション事業の底入れだけが

待たれる状況となっています。

 

業績がかような状況であるため、当社における投資論点はもはや株主還元のみとなって

おり、配当性向を30%基準に定め、実績期に実施した記念配当を除き累進的な配当政策【15→17.5→22.5→33→36→40→43→44→45→46円(予】を実施しています。

またこの配当政策とは別に総還元性向を50%に定めており、本年8月には15億円(1.16%)

の自社株の取得を決議しているため、何だかんだで今期も総還元性向は100%水準まで

達する見通しであり、同業の青山商事同様に非常に高い株主還元が続きます。

 

*参考記事① 2018-08-11 1,538円 OP

業績頭打ちだが、大型記念配当で今期はフル還元へ・AOKIホールディングス(8214)。

 

*参考記事② 2018-01-16 1,669円 OP

複合カフェ踊り場で、引き続き株主還元に着目・AOKIホールディングス(8214)。

 

 

会社四季報 2019年3集夏号

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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