【8591】オリックス/MICE-IR注力で事実上の中計取り下げも、株主還元は一層充実か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8591】オリックス(東証一部) OP

現在値 1,913円/100株 PER8.1 PBR0.81 3月配当優待 9月配当

総合リース首位。事業多角化、海外展開は業界では突出。MA積極的。
今期予想配当金は年2回・合計76円のため、配当利回りは約3.97%となります。

オリックスは株主優待制度を実施しており、3月末に単元以上を保有する株主に対して、5,000円分のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約6.5%となります。なお、3年以上保有の場合は進呈額が倍になりますので、同利回りは約9.20%となります。また別途、当社施設等でのサービスが受けられる株主優待カードも進呈しています。

業績を確認していきます。
■2016年3月期 売上高 23,692億円、最終利益 2,601億円 EPS 198円
■2017年3月期 売上高 26,786億円、最終利益 2,732億円 EPS 208円 

■2018年3月期 売上高 28,627億円、最終利益 3,131億円 EPS 244円 

■2019年3月期 売上高 24,248億円、最終利益 3,237億円 EPS 252円 

■2020年3月期 売上高 24,059億円、最終利益 3,096億円 EPS 245円 con

□2019年9月2Q 売上高 11,112億円、最終利益 1,591億円 EPS 124円 

□2019年12月3Q 売上高 16,843億円、最終利益 2,443億円 EPS 190円(2/3)


2019年9月中間期の売上高は前年同期比11.8%減の1兆1112億円、最終利益は同3.5%増の1,591億円で着地し、期初予想との比較はないものの、コンセンサスと比では底堅い着地となりました。前期1QにあったREIT向け大型ホテル売却が剥落したほか、法人金融事業における経営者保険にかかる代理店手数料の減少というマイナス影響があったものの、完全子会社化した大京で増税前の駆け込み需要があったほか、大和証券Gへのオリックス・リビングの売却(推定500億円)や、事業投資のコンセッション収入が増加しました。また、これ以外にも新規投資先であるAvolonとNXT Capitalの通期業績寄与が始まったほか、フ―リハンの株式売却益計上も上乗せとなり、やや不動産事業で数字を作った印象が強いものの、増益を確保した格好です。


進行期である2020年3月期の通期予算については、例年通り段階利益等の詳細を開示していないものの、コンセンサスによれば、売上高が2兆4059億円、最終利益は3,096億円程度が現時点で見込まれております(会社予想は3,400億円→3,000億円に減額済)。去る2月3日に開示済の3Q決算によれば、最終利益は2,443億円に達しており、会社予想に対する利益進捗率は81%に達していることから、上振れ着地の公算が高そうです。3Q期間では事業投資において2件のPE投資先の売却益が計上され、これが想定を上回った模様です。なお、新型肺炎によりコンセッション(空港)、ホテル、航空機リース事業への影響が懸念されるものの、空港についてはパンデミック等の発生リスクも一定程度織り込んでいることや、ホテルも事業規模が小さく、航空機リースについても長期契約が多いため影響は軽微であることから、取り敢えず今期業績のインパクトは限定的な範囲であると思われます。

 

当社は今般中期的な定量目標を変更しており、従来は2021年3月期までの年間純益成長率「4~8%」、ROE「11%」、健全性基準としてレーティング「A格」の維持を目標に据えていましたが、大型投資案件への注力や景気の後退を理由に、年間純益成長率目標を取り下げました。また、ROE「11%」の達成時期も3年後ろ倒して2024年3月期としたほか、レーティング「A格」の維持についても努力目標に変更し、全ての項目で下方修正した格好となります。

 

ただ現在明らかになっている投資パイプラインだけで1.3兆円を具体化させているほか、新規MA枠1.0兆円も想定しているような状況であるため、事実上の取り下げに近い中計の下方修正により“経営の自由度”を確保しにいったものと考えられます。これはつまり、パイプラインで最大の投資となる米MGMや地元企業とのJVとなる大阪のMICE-IRへの注力が目的であり、本事業に向こう5年で6,500億円を突っ込んでいく計画です。大阪案件は3社競合となるため取れる確度は不明(判明するのは夏前とされている)であるものの、成就を前提とした場合の2026年3月期の全社最終利益は4,000億円、2029年3月期に5,000億円というアウトルックが示されており、巡航後は年あたり500億円程の利益寄与が見込まれる大型案件となるため、当社の主要な投資論点としては一旦はこのMICE-IRとなります。

 

そしてもう一つの当社における投資論点である株主還元方針については、前期に既に配当性向を3%も引き上げて30%水準まで到達させていますが、今期の配当については30%もしくは前期並みの76円のどちらか高い方を採用することとしていますので、上振れ可能性は残るものの、おそらく76~78円水準で着地するものとみられます。ただ、昨年10月に1,000億円(5.5%)の自社株買いを公表しているほか、会社側は毎年この水準感の自社株買いを検討しているフシもあるため、今後の配当成長は鈍化する可能性があるものの、逆に総還元性向は上昇することもあろうかと考えています。

 

*参考記事① 2019-08-14 1,475円 BY

満を持しての「自社株買い発動」が待たれる状況・オリックス(8591)。

 

*参考記事② 2019-02-06  1,648円 OP

大京完全子会社化&配当性向30%はサプライズ大きい・オリックス(8591)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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