【9640】セゾン情報システムズ/HULFT躍進、DOE10%基準で大増配の先には。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9640】 セゾン情報システムズ (東証JQS) OP

 

現在値 2,274円/100株 PER17.8 PBR2.71 3月配当 9月配当 株主優待なし

セゾン系。システム開発、情報処理手掛ける。ファイル転送ミドルウェア「HULFT」が収益源。


配当は3月末・9月末の年2回、合計円85円配当のため、配当利回りは約3.74%となります。
セゾン情報システムズは株主優待制度を実施しておりません。

業績を確認していきます。 
■2016年3月期 売上高 297億円 営業利益 26.5億円 EPS▲376円
■2017年3月期 売上高 310億円 営業利益 33.5億円 EPS 146円

■2018年3月期 売上高 303億円 営業利益 43.6億円 EPS 266円

■2019年3月期 売上高 236億円 営業利益 23.2億円 EPS 125円

■2020年3月期 売上高 240億円 営業利益 25.0億円 EPS 129円 ce
□2019年9月中 売上高 114億円 営業利益 15.5億円 EPS 84円(10/31)

2019年9月中間期の売上高は前年同期比0.9%増の114億円、営業利益は同26.1%増の15.5億円となり、期初予想を大きく上回りました。クレジットカードのシステム・インフラを手掛けるFintechPF事業については、クラウド化支援やRPA支援等が伸びたものの、既存開発案件の受注が減少したため反落となりました。その一方、ファイル連携ミドルウェアのHULFT事業については、「HULFT」の累計出荷本数が前期末比4,500本増の209,500本まで増加したほか、連携ツールの「DataSpider」についてもライセンス販売、サブスクリプションが非常に好調に推移して全社業績を大きく押し上げました。特にストック型のHULFT事業は他のFintechPF事業や流通IT事業に比べて利益率が圧倒的に高く、当該事業でセグメント営業利益を約12億円弱(調整前)を叩き出しました。


なお2020年3月期通期の予算については期初のものを据え置いており、売上高が前期比1.5%増の240億円、営業利益は同7.2%増の25.0億円を計画しています。FintechPF事業において当初計画よりも案件進捗が遅延しており、実際に同分野で上期で積み上げた受注高も前年同期比29.9%減(受注残高も同25.4%減)と低水準に留まっているため、見通し上はコンサバにみているものと考えられます。一方、HULFT事業については上期受注高は同22.3%増(受注残高同7.3%)と高水準で推移しており、既述のとおり利益率が非常に高いことから、見えがかり上の全社受注高・残高は減少しているものの、構成比変化による利益率の改善により大幅な増益を確保する見通しであり、通期では会社予算を上振れて着地する公算が高そうです。

 

今期は翌2021年3月期を最終年度とする3年中計の中間年度となっており、当初中計では売上高303億円→270億円、営業利益43億円→40億円と、まさかの減額目標値(!)でセットしていました。ところが、早くも今期初時点で表記数字を更に下方しており、現時点の翌期目標を売上高255億円、営業利益30億円に洗い替えています。これはFintechPF事業において見込んでいたIoTやAI、ブロックチェーン等の新規領域、いわゆる“新規三象限”分野を活用したサービスが、得意先のクレディセゾンや同社のプロセッシング子会社のキュービタスに思うように売り込めなかったことと、利益源のHULFT事業の海外展開が想定以下だったことが主要因であり、実勢に則して数値の置き直しをしています。

 

ただ、業績に関してはそんな感じで今一つの状況となっていますが、今期初の下方ロール時に新たな新配当方針を決定しており、そこが当社最大の投資論点となります。新基準は「DOE10%」「自己資本比率50%~70%」「TSR(対同業種比較した上での配当込トータルリターン)重視」であり、従来基準の「配当性向30%」から大きく踏み込んだ内容になっています。実際に配当額は前期の年45円から85円に実に40円も大増配する見通しであり、DOE10%基準にサヤ寄せしていく形となりますが、既述のとおり今期業績は強含んでいるので、着地は更に増配含みと言えます。

 

これは本社をクレディセゾングループの牙城である池袋サンシャインから、築浅の赤坂インターシティAirに移転完了したことで資金需要が一巡したことなども理由の一つとしてあろうかと思いますが、実際のところは村上ファンド系のエフィッシモが依然として33%の株を握当社筆頭株主としており、このアクティビストとしての影響力が顕在化したものとみられます。エフィッシモはかつて当社株の買い増しTOBを仕掛けた際、親であるクレディセゾンへのシステム開発に関する78億円の和解金支払い事件が発生し、事実上の焦土作戦を採られ“煮え湯”を飲まされた過去がありますが、当時と今とではCG潮流の変化などもあるため、素直に増配カードを切らされたものと考えています。親のクレディセゾンとしても子会社である当社を親子上場させておく理由が求められる時世のため、「吐き出すだけ吐き出してから・・・」というシナリオも考えられます。

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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