店舗純増僅少で、PB商品の卸売展開に活路・西松屋チェーン(7545)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7545】西松屋チェーン(東証1部)  NT

現在値 944円/100株 PER20.0 PBR0.96 2月配当優待8月配当優待

ベビー・子供衣料と生活雑貨のロードサイド大型店を全国展開。配当金は2月末・8月末の年2回計21円で、配当利回りは2.22%となります。

西松屋チェーンは株主優待を実施しており、100株を保有する2月末・8月末現在の株主に対して、年2回・1,000円分の株主優待カードを発行しておりますので、配当優待利回りは約4.34%となります。別途、3年以上保有を継続する株主への長期優遇制度があります。

業績を確認していきます。
■2016年2月20日期 売上高 1,328億円、経常利益 61億円 EPS 58.2円
■2017年2月20日期 売上高 1,362億円、経常利益 80億円 EPS 79.0円  
■2018年2月20日期 売上高 1,373億円、経常利益 71億円 EPS 74.0円

■2019年2月20日期 売上高 1,381億円、経常利益 39億円 EPS 34.1円  

■2020年2月20日期 売上高 1,450億円、経常利益 50億円 EPS 47.0円 ce 
□2019年8月20日2Q 売上高 713億円、経常利益 24億円 EPS 22.2円 

□2019年11月20日3Q 売上高 1,086億円、経常利益 32億円 EPS 29.0円(12/13)

2019年8月中間期の売上高は前年同期比3.2%増の713億円、経常利益は同26.1%減の24億円と
なり、期初計画を下回りました。出店に関しては、通年計画50店(純増ベース40店)に対して20店を出店したものの、不採算店の閉鎖や大型店へのリプレイスも積極的に進めたことで閉店数も14店まで膨らんだため、ネットした期末の店舗数は1,010店止まりとなりました。ベビー消耗品・服飾雑貨が好調に推移した一方で、気温上昇や梅雨明けの遅れにより衣料品が不振となり、本上期も在庫処分のための値引き販売を強いられる結果となりました。既存店売上高については、何とか99.4%と前年並みを維持したものの、人件費や家賃といった原価上昇により利益が潰された格好となります。


なお、2020年2月期の通期予算については2Q開示前に減額しており、売上高が前期比4.9%増の1,450億円(従予:UNCH)、経常利益は同27.0%増の50億円(従予:65億円)に修正しており、増益幅が縮小する見通しです。既に開示されている3Qの数字によれば、出店数は通期計画の50店に対して34店とややビハインドしている一方、閉店数については29店へ更に膨らんできており、店舗純増数は前期末比でほぼトントンまで伸び悩む可能性もありそうです。月次の既存店売上高は期初から10ヶ月分が開示されており、こちらは99.8%水準に踏みとどまっていますが、出店による外部成長が効かずトップラインが伸びてこないのと、人件費や家賃といった原価上昇で利益が削られる見通しです。12月13日に開示済の3Qの数字もあまり強くなく、修正予算はなお過大な印象です。

 

当社は中期的な業績の目標値として、5年後となる2024年2月期に売上高1,800億円(CAGR5%)、経常利益180億円(CAGR36%)を目指していますが、これは本来2023年2月期に目標としていた数値のため、事実上1年後ろにローリングされた形となりますが、計画の発射台となる前期の数字が壊滅的だったほか、既述のとおり進行期もさえない状況なので、目標感としてはやや画餅的となっています。

 

基本的な戦略としては、出店によるトップラインの増加と、PB商品自社開発による利幅の確保が二本柱となります。PB商品に関しては、アイリスオーヤマなどと同様に家電メーカーOBの採用を継続しており、安価で機能性に優れたベビー用品・玩具等を自社で開発し、開発したPB商品を1,000店舗を超えるの自社の店舗網に乗せ、所謂“SPA化”を推進していますが、足元でスクラップ&ビルドを急速に進めていることの弊害で、店舗数が伸ばせていない点がPB商品展開上もネックになっています。そのため、開発したPB商品を台湾・香港・中国・ベトナムなどアジア圏への輸出を始めているほか、中国最大のECサイトである天猫(Tmall)にも出店することでロットをこなす計画であり、子供服ではユニクロ、紙おむつ等ベビー雑貨ではAmazonとの競合が激化する中で、PB商品開発・卸売によるメーカー機能に活路を見出す方針です。


なお、財務に関しては相変わらずの無借金経営かつ400億円の現金を抱えるチタン級の好財務となっているほか、これとは別に有価証券を65億円程保有しており、体力を持て余しています。それでも配当については配当性向32.4%水準(減額修正後は44.6%水準)となる21円配の据置を予想しており、これとは別に少量の自社株買いを定期的に実施しているものの、物足りなさが目立ちます。足元の株価低迷により、現金同等物と時価総額のスプレッドが潰されており、事業価値のバリュエーションが日々薄くなる中で、唯一のカタリストはアクティビストによる外圧となりますが、昨年の株主総会で買防策が向こう3年間分も更新されてしまったほか、いちごトラストも株を処分してしまったので、株価的には引き続き無風状態が続くものとみられます。

 

*参考記事① 2019-06-15  869円 NT

ユニクロや他社EC拡大で、ビジネスモデル揺らぐ・西松屋チェーン(7545)。

 

*参考記事② 2018-05-19  1,307円 NT

盤石の好財務も、株主還元強化には向かず・西松屋チェーン(7545)。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

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