高配当のJT株に飛びついていいのか問題。 | なちゅの市川綜合研究所

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最近、日本たばこ産業(JT)株についてディスカッションをする機会があったので、個人

家さんの間でも利回り的観点から感心が高いと思われるため、ちょっと整理してみたい

と思います。論点としては、昨今のJT株のじり安基調に起因して生じる高い配当利回りに

飛びついていい・買い増していいのかどうか・・・とかそんなところになろうかと思います。

 

手元に最新の四季報の夏号があるので、現時点(2019年5月末)と1年前、2年前の夏号の

利回りを調べてみます。①JTだけでなく、比較的利回りが高い他の数銘柄とも抽出します。

今回は②三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、③NTTドコモ(docomo)、④三井物産

(Mitsui)を比較参考銘柄にしました。商社は商事でもよかったのですが、MUFGと三菱被り

になるので、あえて物産で比較しています。

 

        ①JT ②MUFG ③docomo ④Mitsui

May/2019 ①6.16% ②4.91% ③4.77% ④4.72%

May/2018 ①5.11% ②2.89% ③3.93% ④3.67%

May/2017 ①3.33% ②2.58% ③3.68% ④4.01% ※参考記載

 

大局的観点で言えば、銘柄問わずこの2年間で配当利回りがかなり底上げされているの

は確認出来るかと思います。2019年5月末を現時点として、まずは一年前の2018年5月末

と比較すると、どの銘柄も100bps.近く利回りが上昇しています。昨今は株主還元強化の風

潮が強いので、まぁそれはその通りなのですが、注目したいのは銘柄間のスプレッドです。

 

2018年5月末時点で、①vs②で222bps.、①vs③で118bps.、①vs④で144bps.の差があった

のですが、2019年5月末時点では、①vs②で125bps.、①vs③で139bps.、①vs④で144bps.

となっており、スプレッドが縮小ないしほぼ変わっていないことが確認出来ます。つまり、

①JTは足許の配当利回りが6%水準を超えてしまっているものの、1年前との比較では他

銘柄との利回り差が変わってないので、見えがかり上は“バーゲンセール状態”に見える

ものの、このような観点でいえば、足許の株価水準は妥当な範囲であると言えます。

なお、②MUFG、③docomo、④Mitsuiともに、表記の配当以外の株主還元として、相応規

模での自社株買いを実施している(すると思われる)点についても留意すべきかと思います。

 

ちなみに参考までに2年前の2017年5月末時点の利回りを最下段に表記しています。当時

は今程他銘柄とのスプレッドはありませんでした。JTがこれほど高利回りになってしまった

のは世界的なダイベストメントの流れに他ならず、フィリップモリスやアルトリアなど、他の

グローバルたばこ株も含め、反ESG銘柄というだけで少なくとも100bps.くらいのプレミアム

を乗せられてしまうのは仕方ない範囲かと考えています。

 

というわけで、足許のJT株価については利回り的観点だけで言えば、特に割高でも割安で

なく、妥当な株価水準にあると考えています。

 

会社四季報 2019年3集夏号

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