株主優待券の“見えざるコスト”について。 | なちゅの市川綜合研究所

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当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

私は長年優待族(風味)を続けており、日本特有のものともされる株主優待制度自体は

好きなのですが、株主優待には可視化されにくいコストが結構存在すると思っています。

 

外食をはじめとする優待券が、ランチやディナーのピークタイムに使用されることによる

会社側の売上遺失などは特に言うまでもなく、優待券が有償または無償で譲渡されたり

された場合も同様に売上遺失が発生し、ひいては業績の押し下げという形で株主に対し

逆還元されることとなります。また、クロス取引も合法的に実行できるため、“1日株主”

が、本来帰属すべき長期株主の利益を掠め取っていくことも出来るようになってますし、

株主優待制度は持株数と正比例で還元があるわけではないので、大量保有株主の方

割を食ってしまう構造になっている点など、歪みによるコストもあろうかと思います。

 

ただ、今回私が述べたいのは、そういう「配当至上主義の方が、優待族をいぢめる」的

なよくあるいい話ではなく、会社からもらってしまった株主優待券を行使することに付随

するコストについてとなります。分かりやすいように、外食株の優待券を例にとりますと、

実は以下のようなコストが存在すると考えています。

 

①店舗までの移動のコスト

優待券の使用は当該企業が運営している店舗に限られますので、住まいや職場から遠

い場合は、移動コスト(時間および金銭)が発生します。

 

②期限管理のコスト

半年から1年間の有効期限が設けられていることが多いため、管理手間が発生します。

 

③代替選択不可のコスト

目の前にある牛丼屋や居酒屋の優待券を持っていない場合、優待券を持っている少し

離れた牛丼屋や居酒屋へ足を運ぶこととなります。それでもすんなり入店出来れば良い

のですが、満席だった場合、遠く離れた自社の他運営店舗まで足を運ぶことになります。

①と似た様な話ですが、「あの時、目の前のお店に入っていれば・・・」と後悔します。

 

④クーポン・他割引の併用不可のコスト

優待券の場合は割引が併用出来ないことが多いです。ぐるなびに「10%オフ」のクーポン

が常時落ちているような場合は、優待価値も額面から10%割り引かれることとなります。

例えばマクドナルドなどはアプリにクーポンが沢山落ちており、株をやらない人はそちら

を使うケースが一般的なので、クーポン割引価格で利回りを計算すべきだと思います。

 

⑤持ち運びのコスト

優待券の場合は利用できる業態が限られるため、実務上は数社~数十社の優待券を

常時持ち歩いて、ある程度いくつかお店を選べるようにしておく優待族の方が多いと思

いますが、当然ながら持ち運びのコストが発生します。束になると意外に重いです。

 

⑥電子決済とのコンフリクトのコスト

Paypayやorigamiなどの電子決済の還元キャンペーンが多い昨今ですが、優待券を使用

する場合には、原則としてこれらの決済手段を利用しないこととなるので、大盤振る舞い

の還元キャンペーンを十分に活用出来ないこととなります。

 

⑦記憶面(メモリー)のコスト

実は地味に大きいと思っているのがこれです。「どこの会社の、どの優待券が、あと何枚

残っていて、どこの業態(街)で使えて、優待券はいまどこ(財布・ケース・封筒の山)にある」

といったことを何となくでも覚えている必要があるので、これが結構脳内のメモリーを食い

潰します。記憶力が無限にある方は良いですが、私も投資家の端くれですので、出来れ

投資先の会社の状況を把握しておくことなどに、メモリーを使いたいと思っています。

 

⑧デブコスト

わざわざいうまでもありませんが、外食は大体カロリー(あと塩分など)が高いです。たまに

優待券の消化に追われて、3食全て優待でまかなう優待族の方などもお見掛けしますが、

くれぐれも健康には注意していただきたいと思います。私も言えた義理ではありませんが。

 

 

いかがでしたでしょうか?優待券は貰った表面の額面で利回りを計算して喜んでしまって

いる方も多いと思いますが、色々な“見えざるコスト”が付帯しています。これらのコストは

優待券ではなく配当金に置き替われば、殆ど全て解消してしまうようなものです。また、

上記⑦は特に見落とされがちながら、非常に大きなポイントだと思っています。

 

何かみなさまの“お気付き”になるるようなことがあれば幸いです。

また時間があれば、株主優待券の“見えざるメリット”についても触れてみたいと思います。

 


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