夜の街灯だけが頼りの帰り道。
人通りはほとんどなくて、静まり返った道路に自分の足音だけが響く。
コートの襟を立てて歩きながら、
冷たい空気が肌に触れるたび、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じる。
ひとりで歩く時間って、なんだか心が敏感になる。
途中で横を通り過ぎた自転車の音や、遠くに聞こえる車のエンジン。
ほんのわずかな気配に、思わず息をひそめて振り返ったりしてしまう。
それだけで、体の奥の方が熱くなる気がした。
歩道の向こうに、男性が信号待ちしているのが見えた。
見てはいけないと思いながら、つい視線が合う瞬間を想像してしまう。
すれ違うだけなのに、距離の近さや匂いを勝手に意識してしまう自分に苦笑した。
無人の帰り道だからこそ、
普段は気づかない自分の感覚がすこしだけ揺れる。
冷たい風が髪を撫で、手をポケットに入れた指先の感触に、
小さな火照りを覚える。
家まであと少し。
静かな夜の時間が、ほんの少しだけ甘く、切ない余韻を残す。
こういう瞬間を独り占めできるのも、悪くないと思った。
