梅ジャム | 仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

ピアノ調律師をしています。何気ない日常の中に密かに隠れている輝きを見つけたい、そんなことを考えながらつらつらと書いています。

(これじゃ、ピアノが可哀想だよな。)


錆とカビだらけの公民館のピアノを見て、そう思った。











普通なら、ピアノを綺麗に直して、いい状態にする提案をする。


でも、そこにはそんな余裕はない。年に一度の半額に割引した調律代を捻出するだけで精一杯なのだ。


「ピアノを大事に使いましょう。」


「ピアノを買い替えるお金はないので大事にしましょう。」


手書きの注意書きがその切実さを物語っている。


「さっき作った梅ジャム。よかったら食べてね。」






調律の終わりに、公民館の管理をしている年配の女性が、半額の調律代とともに手作りのジャムを瓶に詰めて持たせてくれた。


「うひゃー、酸っぱい!」


次の日の朝に、リッツに付けた手作りの梅ジャムを口に入れて


思わず顔をしかめながら、


でも、あのピアノって


案外、幸せなのかもしれないなって


思ったのは


ジャムの後味が、


思いのほか、


やさしかったからだろうか。