前回、物価上昇でカレーショップの営業に影響が出ていることを書きました。
その中で平均工賃の話もしましたが、就労継続支援B型の報酬は「いかに利用者さんに工賃を支払っているか」を評価して報酬が支払われています。
この背景には就労継続支援B型の工賃の低さが挙げられていました。
以前は職員配置の体制と利用者の定員によって基本報酬が決められていました。しかしこの体系では高い工賃を支払っている事業所も低い工賃の事業所も同じであることに疑問が呈されていました。また低工賃の事業所が多く目立っていた現状もあり、現在のような平均工賃の支払額による報酬体系に変更されました。
ただ、正直この報酬体系が良いのか・・・というと、疑問です。
もちろん高工賃を支払っている事業所を評価する仕組みは大事だと思いますし、それは適切に評価されるべきものだと思います。一方で「工賃の低い事業所の報酬は低く」という考え方が適切かというと、それは違うのではないかと感じます。
現在の報酬体系が導入される前、一般的な就労継続支援B型の報酬は1日584単位でした。
これは定員20名で職員配置(利用者:職員の比率)が7.5:1の事業所に適用された報酬で、定員が多い事業所や職員配置が10:1の事業所の場合はこの報酬より低くなっています。
現在前年度の平均工賃が1万円以下で上述と同じ規模施設の報酬は、1日537単位です。
1単位=10円の考え方は基本的に変わらないので、以前に比べると47単位下がっているので、単純に1日あたり470円減額されています。(1単位=10円は地域差を考えて1番低い場合で、東京23区の場合は11円になります。ただ今回は計算を単純にしてわかりやすくするため、10円としています。)
1日470円の差と言ってしまえばば小さいように感じますが・・・
これが1ヶ月になれば9400円になります。これは1人あたりで、定員20人規模になると18万8000円になります。年間にすれば225万6000円になるので、大きな金額になります。また当時と比べ現在は物価が上昇していますのでその影響は多大なものになります。
もちろん基本報酬だけでは成り立たないので、そこに加算報酬も入れます。
でも何でもかんでも加算が取れるわけではないので、加算がもらえるのも限度があります。ですから加算がついたから劇的に変わる・・・というものではありません。
以前に東京都の就労継続支援B型における平均工賃の分析を書いたことがあります。
この時に書いたのは、障害種別ので平均工賃の違い。障害種別に見た時に
・身体障害の方だけを対象にした施設の月額平均工賃は14,047円
・知的障害の方だけを対象にした施設の月額平均工賃は18,426円
・精神障害の方だけを対象にした施設の月額平均工賃は10,822円
・障害種別を問わない、複数の障害種別を対象にした施設の月額平均工賃は15,388円
というものでした。これは令和3年度のもの。
で、先日令和5年度の平均工賃を計算してみました。すると、次のようなものでした。
・身体障害の方だけを対象にした施設の月額平均工賃は23,595円
・知的障害の方だけを対象にした施設の月額平均工賃は23,794円
・精神障害の方だけを対象にした施設の月額平均工賃は20,715円
・障害種別を問わない、複数の障害種別を対象にした施設の月額平均工賃は21,610円
令和3年度に比べ平均工賃額が上がっていますが、これは平均工賃の計算方法が変わったため。以前は純粋に1年間に支払った工賃金額を支払った人数で割っていましたが、今は支払った工賃金額を年間の事業所開所日数と延べ利用人数とそれを12で割る方法で計算しています。以前に比べ平均工賃が上昇しているように見えるのは、それが理由です。
が、それでも精神障害の人の平均工賃は他に比べて低いです。
平均工賃の計算方法が変わって若干の是正・差の縮まりは見られますが、それでも平均工賃差は以前として存在しています。既に以前の記事で、障害特性の違いにより同列に見ることができないのではないか、ということを書いています。精神の人が継続して長い時間仕事をすることは結構大変なことで、一般就労をしているのであれば別ですが、それが難しい人が集まって作業をしているのですが、不安定さが出てくるのは当然ではないかと思います。
また平均工賃の高い事業所について考えれば、そこから就労に結びついているかも評価のポイントではないかと思います。平均工賃の高い事業所がそれを維持するために結果として利用者さんを就労に向けられないのであれば、それは見方を変えれば「工賃を稼げる人を囲い込んでいる」とも見られかねません。高い工賃を得られるのであれば、一般就労に向けてさらに高い収入を得られるようにすることのほうが、障害者も所得から税金を納める人にすることで国の財源を確保するためには有利なことではないかと思います。要は事業所の中だけに留めるのではなく、社会で貢献してもらうことのほうが大きな意味のあることだと思います。
なので、既に国としては一般就労に向けた取り組みの評価を行なっています。
高工賃の事業所であれば、単に高工賃だから報酬を高くするだけでなく、さらにそこから一般就労に結びつけたことを大きく評価することのほうが「高工賃事業所の評価」として適切ではないのかと感じます。それができない事情があれば、それこそが1つの課題だと思います。例えば「保護的環境だからできるけど、一般就労ではそれが困難」というのであれば、それも歴とした理由ですから、そこに社会課題として焦点を当てる必要があるのではないかと思います。
低工賃の事業所にはそれなりの理由があるように、高工賃の事業所も単純にそれでよし・・・という訳ではないようにも思います。そう考えたとき、平均工賃の一軸で報酬の評価をすることが適切なのか、と思います。もし評価するのであれば平均工賃は評価軸の1つであり、多面的な評価から考えていく必要があるのではないかと思います。正直、障害福祉施設の運営は非常に大変で、常にギリギリの状態です。よく「福祉ビジネス」なんて言葉も聞きますが、普通に事業をしていたら余るような黒字なんか出ません。
労働者の収入をあげていく、と国は一生懸命になっていますが・・・
でも公定価格が決められている福祉事業は、国が言っているような収入増加なんかできませんよ。だって、賃上げ相当分の報酬転嫁がされていないんですから。処遇改善手当なんて、全ての福祉事業従事者に支払われるものではないのですから、結果的にそれは事業所の負担になるだけのことです。それでもって「福祉人材が足りない」って・・・そりゃそうだよ、って思います。だって必要な手当てをしていないんだから。いつも言っていますが・・・国がどれだけ「本気」なのか、見せて欲しいものです。









