草食系の大作戦 -9ページ目

草食系の大作戦

草食系進化論

今年は礼に告白をしようと思っていた。

礼と二人でご飯に行ったり、星を見に行ったり…
礼の誕生日を二人で過ごしたりもした。仕事終わりの俺に、ご飯をつくってくれたりもした。
休みの日に、遊びに行ったりもした。
礼の話を聞いているのが、何よりの楽しみだった。このまま時間が止まればいいのにと何度も思った。

そんな時だった…
俺の勤める会社の労務管理は無茶苦茶だった。俺は、事故を起こし、腰と肩を負傷し、今でも違和感を感じない日はない。会社から言われた事に俺は、精神的に参ってしまい、うつ状態になってしまった。

肉体的にも精神的にも回復した頃には、会社を辞めたくて仕方なかった…

しかし、後輩の為にもなんとか踏ん張るしかなかった…
『やっぱりあいつは将来の両さんじゃなかった』周囲の期待が崩れて行くのがわかった…
辛かった…
俺は俺だ。
そう何度も自分に言い聞かせていた。

辛いがやるしかなかった。
大変だったが、数字はしっかりと残した。後輩もちゃんと育った。
しかし、俺に残ったのは、達成感ではなく、虚無感だけだった…

この時から、礼との間に今までのような関係はなくなっていた。
俺には、礼の事がよくわからなくなっていた…
礼が遊ぶ男は、俺だけではない…
他にもたくさんいる…

『今が楽しければ、なんでもいい』
礼のこの言葉聞いて以来礼と少し距離をとりはじめていた…

俺は、仕事での頑張りが認められ大きなプロジェクトを任されていた。
仕事に没頭する毎日だった…

礼との間に生まれた隙間が徐々に大きくなっていたのに、俺はまだ気付いていなかった。


一年目が終わろうとしていた。

両さんが異動となり、俺は、支店の中で一分野のリーダーに抜擢されるまでになっていた。後輩もできることになった。あの時の俺に、仕事に関して、怖いものなど何もなかった。将来の両さんだと、周囲の期待をヒシヒシと感じる毎日だった。

そして、当時の上司は今年一年の行動が問題視され、飛んでいった。結局は、栄転となったのだが…

そして、礼の異動はなかった。
俺は、礼の異動を密かに期待していた。そうすれば、周りの目を気にしないで済むと思っていたから…
この時ぐらいから、礼からというものが色々と多くなっていった。

俺は、よく何故彼女がいないのかと聞かれることが多い。
このブログを書いていてわかった。
タイミングや状況に理由を見出して、自分を傷つけないように、自分で守り続けていただけなんだって、こんなに傷付く恋愛から逃げていただけなんだって…

あたって砕けろ!!という言葉がある。
もう何も怖いものなんてなくなっていた…

そして、二年目をむかえた。


その年のクリスマス。
俺は礼と一緒にいた。

俺には、相田さんという指導係がいる。
兎に角、熱血でクールな俺とは合わない事が多い。でも、面倒見の良さはピカイチである。よく、礼と付き合えと言われていた。俺は、恥ずかしくてひたすら否定していた。礼もおんなじ事を言われていたみたいだった。
そして、礼が『絶対にありえない』って言ってたと、みんなの前で笑い話にしていた。

そんな、相田さんの提案でクリスマスを四人で過ごす事になった。
ただ、この時の俺は礼の事が好きだと自分で気付いていなかった。
俺は、鈍感だった。そして、不器用だった。
何事もなく、クリスマスは終わっていた。

俺は、礼の言った『ありえない』という言葉が気になっていた。

何かに理由をつけて、自分が傷つかないように自分を守っていただけなのかもしれない。自分が傷つかないように、礼の事が好きだという事に、気付かないようにしていただけなのかもしない。


そんな、男が一人の女性を守れるのだろうか?