茶空間『汲古』「早春の新茶会」と茶の「気」について | 俳茶居

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       義仲寺や秋立つ空に塚二つ (呑亀〉

 茶空間『汲古』「早春の新茶会」と茶の「気」について

茶席の茶葉と設え

茶人堀井美香氏の夢が広がった。

 京都北野天満宮近く、上七軒は京都最古の花街。それよりほど近い町屋造りの一角に茶空間『汲古』(きゅうこ)が2023年3月に誕生し、京都の新たな茶文化発信空間を始動させることとなった。

玻璃製の蓋碗

 『汲古』(きゅうこ)とは、「出会いを大切にし、そこから人生の新しい道を汲みだす。」と茶譜のあいさつ文にある。亭主の気持ちが込められた空間で2023年4月21日「早春の新茶会」の客となった。次々と呈茶される素晴らしい春のお茶に、客はなんども桃源郷を浮遊することとなる。この時期これだけの新茶を用意することの難しさを思い、亭主の胆力や仕入れネットワークの確かさ、そして茶会への思いを強く意識させられることとなった。茶譜にある黄茶「温州黄湯」は、初めての体験であった。

歴史ある陽羨雪芽の姿

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      【茶空間 汲古】 早春の新茶会

       茶譜  ~心躍る新芽の競演~

緑茶   【開花龍頂】 炒青・ 浙江省開花  3月 8日

緑茶   【恩施玉露】 蒸青・ 湖北省恩施  3月25日

緑茶 【老川蒙頂甘露】 炒青・四川省名山区  3月18日

緑茶   【陽羨雪芽】 烘青・ 江蘇省宜興  3月16日

黄茶   【君山銀針】  湖南省岳陽君山区  3月16日

黄茶   【温州黄湯】  浙江省温州市平陽  3月 2日

紅茶【英徳紅茶・英紅九号】広東省清遠市英徳  3月 9日

點心 三種

  「新茶上市」春の訪れとともに、新茶の季節が始まります。小さな

  新芽には、生命観あふれる茶の「気」が満ちています。外観の美し

  さ清々しい香り、豊かな口感をお楽しみください。

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黄茶の名茶君山銀針の姿

 

 茶の「気」について

 生物は季節を体内時計で感じ取り、一年を一区切りとし、毎年今なすべきことを自ら行っている。中国で考案された季節の仕分け方法「二十四節気」の春(立春・啓蟄・雨水・春分・清明・穀雨)、地上の生物は新たに目覚め旺盛な活動を始める。茶もこの時期今年の新芽を出し、新しい力(気)をその芽に込めるのである。それぞれのお茶の生産日から、茶畑の息吹や大自然の理が伝わって来るのである。

 『汲古』茶会で頂いたお茶は、茶譜の口上にあるようにそれぞれのお茶が持つ「気」が漲ってた。香りを聞き口に含み目を閉じると、気分は一気に海を跨ぎ空を渡り、茶葉それぞれが育った大自然の中へと私達を連れ去ってしまうのである。茶席はやがて終わるが、連れ去られた心が現実に戻るには少しの時間が必要となる。余韻という良い言葉があるが、それは今でも続いている。又、茶席でそのことを泰然と司る亭主の技倆と志の高さには感謝の言葉しかない。一期一会、茶人堀井美香氏のご活躍を祈念し再会を期すものとする。          2023年5月4日 俳茶居

英紅9号の姿と茶器