建仁寺『四頭茶会』という愉悦 | 俳茶居

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 建仁寺『四頭茶会』という愉悦

会場の建仁寺

 

「方丈」正面の掛け軸 室町時代の画家秋月筆「龍虎の図」中央に栄西画が掛けられている

 

私達の茶礼が終わり和やかな表情を見せる供給僧

 

 2023年4月20日、京都建仁寺『四頭茶会』(⇐クリックで「四頭茶会」の詳細がわかる)にようやく参加が叶った。毎年、開山栄西の誕生日(4月20日)に催されている四頭茶会。コロナ禍の始まった2020年に参加直前で中止が決まり3年間(3回)開催が出来ない状況が続いた。2023年漸く再開されることとなり、感慨深い茶会となった。栄西が修行した中国南宋代の禅宗の寺で行われていた茶礼を、日本で再現したと理解してよい。作法は、「禅宗寺院内の修道行事・法式・作法等を規定した清規(しんぎ)に従うもの」とある(一般文献での初見は、室町期の軍記物『太平記』に「四頭式茶礼」記述が見られる。)。建仁寺以外にも京都東福寺、鎌倉建長寺でも同様の茶礼が行われている。

建仁寺は至る所茶の木があり摘み頃であった。

 

 建仁寺四頭茶会、四頭は四主頭(ししゅちょう)のことで、4人の正客(しょうきゃく:主位、賓位(ひんい)、主対位、賓対位)が対座する禅院斎宴の着席法である。正客4人にはそれぞれ8人の会衆(相伴(しょうばん)客)がつく。今年客は正座から椅子席(嘗てはそうであったと思える。中国には正座の習慣はない。)となり、一回の客数もコロナ禍の影響か本来は36人(9人×4組)のところ、今年は28人(7人×4組)〈*詳しくは冒頭の『四頭茶会』を検索〉となっていた。宋代中国、禅宗寺院で行われていた茶礼、儀礼的要素は大きいが、客へのもてなしの心が感じられる茶礼である。供給の僧(お茶淹れに携わる僧)は時に柔和な表情を見せ、客の緊張を和らげるようであった。驚いたのは、四頭茶会が終了後会場の写真撮影が許可されたことである。いつからそうであったのかは分からないが、時代の変化を目の当たりにしたようであった。当日は方丈での主席四頭茶会の他、建仁寺境内三つの塔頭での薄茶席二席と煎茶席一席、野点の番茶席、本堂他での点心席が用意されており、朝から午後一杯お茶尽くしの一日となった。廻り終えた私達は、4年を掛け漸く本懐を遂げた安堵と充足感に暫く浸っていた。茶旅をご一緒した茶友MさんTさんをねぎらい、愉悦を分かち合いたい。また、茶会の参加の為にご尽力いただいた茶友Hさんに心より感謝の気持ちを伝えることとする。

点心と献立表

 

 方丈での案内役の導師に「一般公開されなかった3年間、四頭茶会はお寺の関係者だけで継承されてきたのでしょうか。」と問うた。答は意外にも「すべて中止」されていたとの返事、四頭茶会の歴史としても大変な事件であったのである。

         2023年4月29日 俳茶居

咲き誇る中庭の牡丹