俳茶居

俳茶居

       花の名をAIに問ふ夕長し (呑亀〉



早春の茶席 (2022年2月撮影)



昴の茶事設え(2019年12月7日撮影)
          

暑の茶事設え(2018年6月2日)



東風の茶事設え(2019年3月1日)


雛の茶事設え (2018年3月3日)



2017年秋の設え



竹の子に囲まれた野点茶会2015年4月



 

                                           中国茶会『樹水』第一回『 万緑の茶事』(2026年7月5日(日)人形町「茶韻館」) 開催御礼 

 念願叶い『喫茶茶会記中国茶会』改め「中国茶会『樹水(きすい)』」の、初めての茶会が2026年7月5日(日)、人形町茶韻館で開催となった。再開までに6年7か月の時間が過ぎていた。それでも温かく見守ってくれたお客様方に心より感謝の気持ちを伝えたい。又、快くお店を茶会会場とさせていただいた茶韻館亭主Mさんに謝意を伝えることとする。

 茶譜の表紙には長く主宰を務めた村田亜樹の書「茶譜」の文字が墨痕鮮やかに浮かび上がった。彼女も当然客のひとりとして参加していたに違いない。何とか無事に会催が出来、帰宅すると心地よい疲労感に包まれ、すぐに安眠を得てすっきりと翌朝を迎えたのであった。これからも折を見ての開催を心がけ皆様との一期一会を重ねることにしたい。  2026年7月8日 俳茶居

 

口上

「万緑(ばんりょく)」は、草木が力強く成長する夏の季語。俳人中村草田男の「万緑の中や吾子の歯生え初むる」により季語として定着したと言われています。

2015年3月に始まった喫茶茶会記中国茶会は、2019年12月(19回目)を最後に暫くお休みを頂いておりましたが、この度主宰であった村田亜樹の一字を拝し、中国茶会「樹水(きすい)」として再開の運びとなりました。万緑の茶事、懐かしい皆様と久しぶりの一期一会を愉しみたいと思います。

茶譜

月光白 冷茶(ウエルカムティー)          中国雲南省

石古坪烏龍 広東省潮州市鳳凰鎮石古坪村  2025年春製 青茶

黄観音   福建省武夷山市武夷山 2026年製 青茶(武夷岩茶)

茯茶   湖南省益陽市安化県     2013年1月製 黒茶

 

茶菓子      鳳梨酥(フォンリースー)      (台湾パイナップルケーキ)

ブルーベリーアーモンド           (東京都 豆源)

希水                   (京都府 和久傳)

 

奉茶人・スタッフ               俳茶居   渡辺隆徳

 

「天空茶会第二十六葉」開催御礼

 日本中国茶普及協会認定インストラクター会主催の「天空茶会第二十六葉」が、2026年6月27日(土)、京橋の「明治屋ホール(明治屋7階)」で開催され、多くのお茶好きの皆様と素晴らしい交流の場となった。小生も「翡翠」席にて淹れ手で参加、懐かしい皆様やはじめてお目に係る方々と愉しい一期一会となった。折から台風7号、8号が関東に接近し交通事情などの心配から間際でのキャンセルも発生したが、当日参加の方々で相当数カバーすることが出来たとのことである(延べ客数107名/全客席数120席)。荒天の中足を運んで頂いた心より感謝の気持ちを伝えることとする。天空茶会では茶席の他に、お茶淹れ体験、中国茶や関連グッズ販売会、蚤の市も開かれお客様と賑やかな交流の場となった。茶会の最後はHさんによる会派恒例の表演茶藝で締め「天空茶会第二十六葉」は無事お開きとなった。明治屋スタッフの皆様並びに日本中国茶普及協会理事の皆様に感謝申し上げることとする。そして悪天候の中、「天空茶会第二十六葉」に係ったインストラクター全スタッフの皆様お疲れさまでした。台風の余波の心配もあり、恒例の打ち上げが出来なかったのは心残りとなった。 2026年6月30日 俳茶居

 

茶譜

茶席1 蜃景 しぇんじん

<11時/12時/14時/15時> 

淹れ手:中山理恵

■武夷岩茶 夜来香(陳年)ぶいがんちゃ いえらいしゃん(ちんねん) / 烏龍茶

■鳳凰単叢 鴨屎香 ほうおうたんそう やーしーしゃん / 烏龍茶

ご用意した2種類のお茶は、共に香りに特徴のあるお茶です。

鳳凰単叢の産地、烏崬山大庵で作られた鴨屎香の名は良いお茶であることを隠したいためにつけられたものだと言われています。

夜来香はずっしりした味わいが多い武夷岩茶の中では比較的軽やかで蘭に似た花香が穏やかに香ります。

2つのお茶の香りに包まれながら、思う存分お茶に酔ってください。

きっと...お席では幻が見えるかも⁉

 

※14時・15時の回を別の担当者を予定しておりましたが居住地が遠方にあり

 台風接近の予報を受けて交通機関への影響が懸念されることから

 上京を見合わせることとなりました。

 11時・12時の回を担当する中山理恵が終日、淹れ手を務めます。

 内容に変更はございますが、皆様に楽しんでいただけるよう心を込めておもてなしいたします。

 事情をご理解いただけましたら幸いです。

茶席2  清風朗月 せいふうろうげつ

<11時/12時>

淹れ手:山川幸代

■貢眉 こんめい / 白茶

福建省福鼎市太姥山産の白茶です。2018年のものなので8年前の茶葉ということになります。

摘み取られた時の新鮮な緑色は茶褐色へと変化し、カカオのような深い味わいとやわらかな甘みを作り出しています。白茶の楽しみはこんな経年による変化もあるかもしれません。まるで落ち葉のような野性味溢れる茶葉から、やさしい甘みが抽出されます。時を経た茶葉のじんわりとした自然の味わいをお楽しみください。

 

■蒙頂黄芽 もうちょうこうが / 黄茶

四川省雅安市産の黄茶です。2026年産。黄茶は緑茶によく似ていますが、悶黄という独特の製法によって茶葉の色と風味が変化しています。機械を使う製法が多くなっていますが、今回はすべて手作りにこだわった茶葉を雅安で手に入れました。

なかなかいただく機会の少ない黄茶ですので、ぜひ皆様と一緒に楽しみたいと思います。茶席では古くからの茶文化が残る蒙頂山の雰囲気などもお伝えします。

 

<14時/15時>

淹れ手:原泉

■白茶 はくちゃ / 白茶

茶葉を揉まずに、日光や風でじっくりと自然乾燥させるという非常にシンプルな製法で作られる白茶は、茶葉本来の繊細な風味とほのかな甘みが特徴です。お茶は白牡丹か寿眉を予定しています。

黄茶とのペアリングにご期待ください。

 

■霍山黄芽 かくざんこうが / 黄茶

黄茶は中国国内でも生産地が限られ四川省、湖南省、安徽省などが主な産地です。

霍山黄芽は、安徽省六安市 霍山県で作られ、現在では生産量が少なくなった黄茶のひとつです。緑茶と似た工程を経て作られますが、発酵を途中で止めて茶葉をゆっくり蒸らす「悶黄(もんおう)」という特殊な工程で作られる大変希少なお茶です。

茶席3 翡翠 かわせみ

<11時/12時>

淹れ手:茶米

■烏崬単叢 山茄葉 うーどんたんそう さんかよう / 烏龍茶

鳳凰単叢は、中国広東省潮州の鳳凰山脈一帯で作られる烏龍茶です。もともとは香りを活かせるよう一本の木ごとに製茶していたことから単叢という名がついたと言われています。

今回は鳳凰山脈の中でも特に標高が高い烏崬山で作られた烏崬単叢をご用意しました。

烏崬山は霧が深く、豊かな香りを生み出す産地として知られ、古くから多くの茶人を魅了してきました。

山茄葉は、葉の形が「山茄子」の葉に似ていることが名前の由来。フラワリーな香りで心地よい余韻が長く続きます。

初夏の風が通り抜けるような透明感のある香りと味わいをぜひお楽しみください。

 

■梨山紅茶 なしやまこうちゃ / 紅茶

標高二千メートル前後の台湾梨山茶区。高山茶の産地として名を馳せているこの地の茶葉で作られた希少な紅茶です。

昼夜の寒暖差と、霧に包まれた澄んだ空気の中で育つ茶樹は、豊潤な旨みを生み出します。

口に含むと、紅茶らしいやわらかな甘さの中に、高山茶らしい清らかな香りが重なります。

生産者は数々の受賞歴を誇る華剛茶業。

霧が立ち上る山からの恵みのような一杯をどうぞじっくり味わってください。

 

<14時/15時>

 淹れ手:佐藤正夫

■鳳凰単叢 佳常種 ほうおうたんそう かじょうしゅ / 烏龍茶

広東省潮州市鳳凰鎮烏崬獅頭村(標高980m)で、樹齢240年と云われる木から作られたお茶です。梔子の花香と古木特有の木の香りが特徴です。砂糖黍に似た甘韻があり静かに長く続きます。お茶の育った山水の息吹、どうぞお楽しみください。

 

■六亀喬木野蜜紅茶 ろくかめきょうぼくのみつこうちゃ / 紅茶 

台湾高雄市六亀区の山中には樹高10mに及ぶ野生古茶樹林があります。その茶樹をもとに、製茶師の劉文華・ 劉士輔さん親子は茶園、製茶所を立ち上げ、時間を掛け商品化を成し遂げました。無農薬無肥料で作られた自然の力が漲る台湾紅茶をお楽しみください。

 

茶席4 白南風 しろはえ

<11時/12時/14時/15時>

淹れ手:茶朋

■大禹岭高冷茶 だいうりょうこうれいちゃ / 烏龍茶

標高2,000メートル以上の高地「大禹嶺」は、栽培面積が少なく採れるお茶は大変希少です。

台湾の伝統工法である炭手焙煎を今も守り続ける茶師が、 大禹嶺の自身の茶園で育てた青心品種の茶葉を、丁寧に仕上げています。

遠赤外線と龍眼の樹の香気に引き出されたすっきり繊細な香りと甘さ、余韻がいつまでも沁み渡ります。

 

淹れ手:まゆりん

■今生無悔 こんじょうむかい / 烏龍茶

今回ご用意したのは2011年に製茶され、15年の時を経てなお豊かな香りを楽しめる秘蔵のお茶です。

1999年の大地震の際、手入れができず虫(ウンカ)の恵みを受けた茶葉を伝統技法でじっくり焙煎したことで、これまでにない極上の甘い蜜のような香りが奇跡的に誕生しました。

一般的には「貴妃茶」と呼ばれますが、「将来を心配するより、悔いのない今を生きたい」という作り手の不屈の想いから「今生無悔」と名付けられています。

時を重ねてさらに深まった、豊かな芳香をどうぞ心ゆくまでお楽しみください。

 

 

初夏の風を感じる爽やかな白南風の茶席で、清らかな香りの「高山烏龍茶」と、甘く芳醇な「貴妃茶」、対照的な二つの台湾茶が織りなす香りに包まれ、心ほどける非日常の時間をお過ごしください。

茶席5  笑福 しょうふく ~笑う門には福来る~

<11時/12時/14時/15時>

淹れ手名:森田攻

■茉莉針王 九窨 まりしんおう きゅういん / 花茶

福建省の福州市、長楽区にあるジャスミン茶製造工場にて2024年につくられました。

福建省の長楽エリアは、ジャスミン茶に使用するアラビアジャスミンの単弁種でも最高品質のお花が採れるエリアになっています。

なお、商品名の「茉莉針王」とは、新芽のみの茶葉(福鼎大毫種など)に九回お花を入れ替えて作ったジャスミン茶のみがつけられる名称です。

また、このお茶は、2024年に開催された

「福州茉莉花茶茶王コンテスト」「全国茉莉花茶質量診察会」(中国での表記)で優勝したお茶です。

 

 

淹れ手名:笹部晃司

■普洱生茶 圓融 ぷーあるなまちゃ えんゆう / 黒茶

製茶:2010年

雲南省の中でも普洱茶の名産地として知られる勐海と易武。勐海は力強く野性的、易武は華やかで果実味がある普洱茶の産地とされています。本来は交わらないこの二つの産地から生まれた普洱生茶が「円融」です。

十五年以上の歳月を重ねて得られたまろやかさに加えて、見事に調和した個性が深みのある味わいを生み出します。ゆっくりと広がる円熟のハーモニーをご一緒にお楽しみください。

茶席6 青蓮華 しょうれんげ

<11時/12時/14時/15時>

淹れ手:嬉怡茶樓(きいちゃろう)

■雲南白茶 うんなんはくちゃ / 白茶

今回ご用意したのは雲南省の野生高山白茶になります。少数民族の方々に分けて頂きました。

品名は「prime of moon」〈月の満ち欠け〉。

将来茶摘み師になる8歳から16歳の少女たちが先輩茶摘み師に連れられ、新月の日に神聖な儀式により摘まれた茶葉になります。

茶席名の「青蓮華」は仏様の眼差しという意味もあるそうです。仏様の深い眼差しに見守られながら、くつろぎのひとときを分かち合えたら幸いです。

 

淹れ手:結葉

■東方美人 とうほうびじん / 烏龍茶

東方美人は台湾を代表するお茶であり、いくつもの産地で作られています。その中でも最高級品を産出する地域のひとつが、新竹県峨眉峡と言われております。

昨年秋に台湾茶を学ぶツアーに参加し、その新竹県峨眉峡の名茶師である徐耀良さんの元を訪ね、買い求めてきたものです。徐さんにお会いし、茶にかける厳しさと愛情を間近で感じることができました。

繊細で美しい姿かたちの茶葉、上品で透明感のある蜜の香りと甘さ、飲んだ後に残る複雑で優美な香味をお楽しみください。

 

「秘蔵の普洱茶を愉しむ会 易武編」(2026年3月20日)開催御礼

 

 阿部克彦氏秘蔵の普洱茶を飲み続け、今回で13回目の会が叶った。前回は昨年4月27日であった。少し時間が経ったが、その間12月27日には席主松田さんの雲南茶旅の成果報告を兼ねた、「プーアル茶の故郷雲南の茶産地を旅して」のレポートを兼ねた茶会が開かれた。呈茶は阿部さん担当され、スタッフも同じメンバーとなった。

 

 そして今回、テーマは「易武」。西双版納の東部、かつて茶馬交易の起点として栄えた町で、老街には古い茶商も残っている。松下智先生の名著「茶の民族誌」(1998年)において、西双版納は第一章で取り上げられ、茶樹の淵源の地であろうと推論されている。その為「茶」の魅力に取り憑かれた者たちは、この地を目指し、その地で造られたお茶に神秘を感じているのかもしれない。良き普洱茶は、造られてから熟成を重ね数十年経っても成長を続けるものが多い。普洱茶ファンは、単に飲み物としてだけではなく、資産として大切にしている大富豪までいるのである。大富豪ではない私達は、阿部氏のお陰で氏のコレクションから素晴らしいビンテージ茶の席に着くことが叶うのである。氏は若き頃、松下智先生の研究ツアーの一員として、西双版納の野山を駆け巡った時期があり、現地で手に入れた茶葉コレクションの価値は計り知れない。

 

    おいで頂いた11名のお客様にスタッフの一人として心より謝意を伝えたい。易武の貴重な茶葉提供と、3時間にわたる茶会で呈茶を担当頂いた阿部さんに感謝である。そして長年この会を見事に主宰される茶韻館店主松田さん、スタッフKさんに御礼申し上げることとする。

 

秘蔵プーアル茶を愉しむ会  易武編

主催:ティーハウス茶韻館2026年3月20日

 

易武野生七子餅茶 永聘號 生茶  2000年代前半  易武正山 勐臘県 

普洱沱茶     大益  熟茶  2000年代前半       勐海県

普洱珍蔵    易武老號 生茶  2000年代前半  易武正山 勐臘県 

雲南易武麻黒茶荘  生茶  2000年代前半 易武正山麻黒古茶林 勐臘県 

普洱茶磚         熟茶  1990年代    西双版納

スペシャルティー 大樹紅茶 2025年4月 喬木野生山茶 台湾高雄市六亀

 

 

 

 2025年10月で25周年を迎えた台湾高山茶専門店「三宝園」さんが、店主(店主 綱島春子 逝去について – 台湾高山茶の三宝園)の逝去に伴い、現在のお店を2026年3月8日で閉店し、同ビルの2階でショップのスタイルを変えて3月12日より再スタートすることとなった。

 

綱島春子さんの遺影

 

 お店の最終日の一日前に伺い、お元気だったころの春子さんの遺影に感謝の気持ちを伝えることが叶った。頻繁にお邪魔したことは無かったが、会派の年二回のお茶会「天空茶会」の前には、案内ハガキを置かせてもらっていたこともあり足を運んだ。温厚で気さくな方であった。2026年1月6日永眠とHPにあり、昨年元気な時にお会いしたことしか記憶になく、まだまだお茶の話が出来たのにと残念でならない。伺った日はご常連がおにぎり他持ち寄りで、いつもと変わらない茶飲み会となっており、事情を知らないで来たお客様にもお茶を出しもてなした。先に失礼した小生、一期一会を囲んだ皆様との最期の言葉は「又お会いしましょう」であった。お店のスタッフKさま、長い間ご苦労様でした。次の人生頑張って下さい。

閉店・移転のお知らせ

  有り難う 坐高さん

2025年3月に上梓された俳句集「問答無用」

   

 令和7年(2025年)7月7日、長く俳句の会「五駒会」で席を共にした坐高さんが逝去されました。告別式後、荼毘に付されお骨を拾う役を頂き、万感の想いが込み上げました。

    2002年に始まった「五駒会」句会の発起人の一人、宗匠のいない句会の宗匠の役割を担われました。メンバーは、坐高、かなぶん、華翔、榛名、呑亀の五駒、最初は全員広告会社A社の現役でしたが、やがて皆OBとなりました。坐高さんは会社卒業後晴耕雨読に徹し、50坪の畑を借り農民になりました。俳句も四季折々「土」との係わりからの作品が増えていった気がします。

    句会での坐高さんは実にカッコ良く、句評は的確で時に厳しくありながらも温厚な性格が伝わるものでした。それは明確な美意識と倫理観から来るものでした。残されたメンバーは、話し合いを重ね四人での会の継続を決めました。それが坐高さんへの一番の供養になると考えたからです。心に残る俳句を「五駒会俳句集Ⅰ」、「五駒会俳句集Ⅱ」と2025年3月に上梓された俳句集「問答無用」から紹介し、坐高さんを偲びたいと思います。

 

 秋の水遥かな魚の世の匂ひ (五駒会俳句集Ⅰ)

〈句評〉 

    秋の清らかな水に心癒される。その匂いは地上に魚が登場した昔、彼らが知った水と同じ高貴な匂いがしたに違いない。

 葱畑の真中のネールサロンかな (五駒会俳句集Ⅱ)

〈句評〉

    深谷名物葱畑の真ん中にネールサロンの店が出来た。すごい時代だと言いたげであるが、そのことを否定も肯定もしない。そこに坐高さんの態度が出ている。変貌する深谷を作品として残したかったのだろう。

栄一像じやぶじやぶ洗ふ立夏かな (五駒会俳句集Ⅱ、問答無用)

〈句評〉

    敬愛する澁沢栄一公の像、自らもコンシェルジェであり庭掃除も職務とした栄一記念館。立夏の大掃除に銅像に磨きをかける坐高さんが目に浮かぶ。一万円札の顔が栄一に変わる話を喜んでいる坐高さんを思い出す。

全五段鉛板運ぶ師走かな  (問答無用)

〈句評〉

    珍しく仕事の話。広告会社の営業マンだった坐高さんの年末の話。新聞広告の原稿は鉛板だった時代が長かった。大きな扱いをする営業は運ぶ量も増える。全五段とはちょっと控えめの様である。

霾るや問答無用の死が迫る   (五駒会俳句集Ⅱ、問答無用)

〈句評〉

    妹君を看取る時期の話のようだが、自身への覚悟でもあろう。「霾る(つちふる)」と言う難しい季語が効いている。俳句集「問答無用」のタイトルもここから来たのであろう。

深谷にて生涯終へむ根深汁

 〈句評〉

    産土への心境。故郷で生涯を終えたいと願う人は多いが、叶わない人も多い。季語根深汁がぴたりと嵌り温かい。願い通り晩年を深谷で過ごし物故された坐高さんは幸せ者である。

 

    やがて五駒会の皆が坐高さんの居る所で顔を揃える日が来たら、また五駒で句会を開くことといたしましょう。坐高さんそれまで少しお待ち願います。

                                                     令和7年11月  呑亀

 涼しさや友と持つ箸友の骨  (追悼句)

 

*上記追悼文は2025年12月発行のÅ社OB会会報に掲載されたものです(追悼句は加筆)。

 

 

慈眼寺 芥川龍之介の墓

 

 2025年10月13日(月・祝)、銀座藍画廊句会のメンバーで秋の吟行となった。台風が避けてくれた為、天候に恵まれ豊島区駒込の染井霊園、慈眼寺、とげぬき地蔵界隈を散策、その後カラオケ店で句会、最後は居酒屋で打ち上げのフルコースとなった。

 染井霊園は有名人の墓所が多い。岡倉天心、二葉亭四迷、高村光雲・光太郎・智恵子など。慈眼寺では芥川龍之介、谷崎潤一郎(京都より分骨)が有名である。染井吉野桜もこの地で誕生、駒込駅近くに発祥の地の碑を訪ねることが出来る。

谷崎潤一郎の墓(真ん中)と谷崎家の墓

 

 いつも吟行で思うのは時間が足りないこと、投句間際でバタバタとなる。今回もそんな感じであったが、秋の午後、霊園・お寺・とげぬき地蔵通りと世代にぴったりのエリア散策を満喫した。カラオケルームで歌を歌わず句会をしている姿はなんとも不思議な光景だが、個室で廉価(最初の飲み物だけ注文)静かな良い句会スペースであった。句会の結果はどうだったのかは、ご想像にお任せするとして、楽しい午後の一日を演出してくれた幹事の皆様へ感謝を伝えたい。

              2025年10月26日 俳茶居

   吟行句四句中二句 

 慈眼寺に秋の水借る古き井戸

 秋風に風葬の吾浮かべ見む

中秋節茶會に、芭蕉「奥の細道」の旅立ちを想う

 茶は湯が出来る音から始まる

 

 長かった酷暑の9月。それでもお彼岸あたりから涼しくなり始めた。暑さ寒さも彼岸までである。2025年10月1日、富田直美(ちょし)さんの主宰する「中秋節茶會」に越谷へ出かけた。会場は明治の趣のある「はかり屋」の一階のカフェ。「はかり屋」創業は明治18年(1885年)、2018年リノベーションが叶い、ショップとレストランの複合店として再生された。旧日光街道沿いに140年の歴史を残す建物である。

 ウエルカムティー他3種の美味しいお茶を頂いた。会場の形態で、4人客のテーブル席と、カウンター席4人と別れて呈茶を受けることとなった。早く着いた小生、テーブル席に胡坐の着席をお許しいただいた。お客も揃い時間となると、二艘の小舟は中秋の月を目指し、しばし中国茶の旅に出たのであった。一期一会、テーブル席4人は時間経過とともに打ち解け、愉しい語らいとなった。点心も「かき氷」の後、中秋節に合わせ「月餅」と「白玉ぜんざい」の見事な取り合わせに舌鼓を打った。時が経ち愉しく月へ向かっていた小舟は、元の場所に静かに戻ることになる。夢の時間が現に戻るには、暫しの余韻が必要となる。そして夢が覚めると、漸く客同士別れの挨拶をし、最後に主宰のちょしさんに感謝を伝え、涼しさを感じる日光街道を江戸に向かい歩き出した。

 満ちて引く地球の水を揺する月  (俳茶居)

                        2025年10月4日  俳茶居

 

落ち着きを感じるちょしさんの茶器

 

 行く春や鳥啼き魚の目は泪(奥の細道最初の句)

元禄2年弥生、松尾芭蕉は「奥の細道」の旅で江戸千住を発ち、まず日光を目指し越谷の町も通った。当時大きな宿場であった越谷だが、随行の曽良の日記には、春日部で一泊のあと翌日の宿泊は栃木の間々田となっており、越谷は初日に通り抜けただけの様である。俳句も残されていない。

 

 

テーブル席の茶の木からはかり屋の玄関を望む

 

中秋節茶會 2025年10月1日 於:お茶を贈る人(越谷「はかり屋」)

茶譜

歓迎茶(冷茶) 月悦茶“白秋” 猿島産蜜香紅茶 金木犀 白木耳

文山包種茶    2025年 春

玉山白茶     2024年

鳳凰単叢 南姜香 2024年

 

点心

刨冰 / 紅豆湯 (お茶を贈る人)

中秋月餅     (悦納)

司茶:富田直美(麗茶) 点心:お茶を贈る人 企画:村松悦子(月悦)

 

安藤雅信氏の茶海二つ 懐かしい

それぞれの八十年前の夏

 

「八十年前の夏・祈り」(作:松林真澄 2025年)

 

 ジクレー(デジタルリトグラフ)版画家、松林真澄氏の進化スピードは速い。2025年8月9日~20日開催、『デジタル版画展“これは現実か!”』 JR大崎駅歩2分のO(オー)美術館。力作「八十年前の夏」3点シリーズ作「新吟(うめき)・鎮魂・祈り」を鑑賞した。写真家川田喜久治氏の原爆ドーム内壁の写真集からインスピレーションを得たとお聞きした。80年前に止められた時間に80年後何かを足す芸術家の魂は、並の人間の胆力では成しえない仕事である。

 8月、世界は80年前の人類の過ちを振り返り、それぞれが内省する時である。人類の現実は容易ではないことは理解している。ただ厳しい現実に対し、諦めず言葉や作品を発し続けているのも表現者の力なのである。

 会場には日本版画界の巨匠、星野美智子氏の作品も展示されておりご健在を確認することが叶った。

鏡の中に捉えられた視点(作:星野美智子)

 

 

 

天空茶会第二十四葉 開催御礼 <成長する背骨>

湖緑の茶席(撮影インスト会)

 

山音の茶席

 

    日本中国茶普及協会認定インストラクター会主催の『天空茶会第二十四葉』が、2025年6月29日(日)中央区京橋の明治屋ホールで開催され、延べ115人のお客様と茶席を囲み、素晴らしい交流の場となった。

茶席の他、平野裕美先生によるセミナーが(午前の部・ネパールとの出会い、午後の部・ベトナムの新風)開かれ参加者の好評を得た。

    おいで頂いたお客様に心より感謝の気持ちを伝えたい。2011年に始まった天空茶会、途中コロナ禍で開催出来なかった期間もあったが、14年の歳月を想うときお客様の長きにわたるご厚誼に心より御礼申し上げることとする。日本中国茶普及協会理事の皆様の変わらぬご支援に感謝申し上げ、明治屋ホールのスタッフの皆様のご配慮に謝意を伝えることとする。

     

奏の茶席

 

 天空茶会は当会派の『背骨』と常々言っている。組織が全体で高みを目指すとき、そのことを象徴するような催しが必要となる。幸いにも私たちには「天空茶会」を積み重ねることで『背骨』と言う宝物を成長させてきたのである。そこでは淹れ手、裏方を問わずスタッフを務めることで学ぶことが多い。練習会で先輩たちの叱咤激励を受け、初めての淹れ手に挑戦したインストラクターの方々、自ら背中を押し表演茶藝に果敢に取り組まれたNさんなど、全スタッフの想いが茶会の良き雰囲気を醸し出し、お客様を心地よく包み込む催事が完成したのである。『背骨』はゆっくりと確実に成長している。

嫻靜の茶席

 

     万緑席で淹れ手を務めた。唯一の男子茶席、ペアを組んだのはAさん。もう中堅に入るAさんは重焙煎凍頂烏龍茶、私は石古坪烏龍茶を淹れた。仕事が忙しい現役のAさん、練習会参加の都合がつかず、二人だけの練習会設定となった。ただ2・3の確認事をして、実践練習を繰り返し、愉しく美味しい練習会となった。私の淹れる石古坪烏龍茶は、烏龍茶の始まりとの説もある軽焙煎。二つの烏龍茶、お客様の一煎目を服した後の顔はにこやかに見えた。                      2025年7月3日   俳茶居

 

 

清翠の茶席

 

万緑の茶席(撮影インスト会)

 

天空茶会第二十四葉 茶譜

茶席1 湖緑 こりょく

■明前都匀毛尖  貴州省 緑茶2025年一番摘み 淹れ手:山川幸代

■雲南・金芽茶  雲南省 紅茶2024年春    淹れ手:横倉志津子

 

茶席2 万緑 ばんりょく

■石古坪烏龍 広東省潮州市 烏龍茶2024年5月製 淹れ手:佐藤正夫

■重焙煎凍頂烏龍 台湾南投県 烏龍茶      淹れ手:新井方寸堂 

 

茶席3 奏〜kanade〜 かなで

■紅烏龍茶 台湾台東縣鹿野郷    烏龍茶2024年製 淹れ手:まゆりん

■武夷正岩茶白瑞香 福建省武夷山  烏龍茶2023年製 淹れ手:美風香

 

茶席4 山音 やまおと

■樟樹湖高山茶 台湾嘉義県  烏龍茶     淹れ手:吉田エンジェル真樹

■白毫銀針  福建省福鼎市  白茶2018年製        淹れ手:胡優

 

茶席5 清翠 せいすい

■三峡碧螺春 台湾新北市   緑茶2025年明前      淹れ手:茶米

■烏崠単欉東方紅炭焙煎 広東省潮州市 烏龍茶       淹れ手:河野求実子

 

茶席6 嫻靜 かんせい

■四季春茶 台湾南投県  烏龍茶  2024年春茶     淹れ手:平井まり

■雲南野生餅茶 雲南省西雙版納易武山 黒茶 製後約20年 淹れ手:國枝ゆか

 

 

⊛お茶と暮らしの研究家 平野 裕美氏をお招きして特別セミナー 

世界の茶産地を訪ねて第三弾

茶と共に ~ フィールドワークから見えてきたもの ~

中国・台湾・インドなどの歴史的産地を胸に外側からお茶を見てみた

そこにある大切なもの ネパール ・ ベトナム より

*セミナー午前の部 ネパールとの出会い

*セミナー午後の部 ベトナムの新風

 

 

下北スズナリ、「少女仮面」観劇 老婆に休日はない

 

 2025年6月18日、渡辺えり演出・主演の芝居「少女仮面」(唐十郎作・オフィス3〇〇特別公演)を下北沢スズナリで観た。渡辺にとり古稀の節目となる作品である。彼女の挑戦する姿勢を応援したい。ただ、身体を芝居の最大の武器と考えた唐十郎のドラマツルギーに、彼女の肉体は拮抗することが出来たのだろうか。しかしそんなことも織り込み済みの客席には愚問に近く、2時間近い一幕芝居を演じきった彼女や役者たちに心より安堵した。劇中主役の春日野八千代の危惧する「老」を現実が凌駕しているようであった。肉体から発せられる台詞が演技者の鎧となり芝居(虚構)が成り立つと思うのだが、長い台詞回しに苦労する場面が散見し、彼女が演じる春日野の鎧は脆そうに私に届いた。ただその倍の舞台のエネルギーが、渡辺と世代の近い川村毅(老婆役)や、劇団の役者達のパワーにより彼女を十二分に補い盛り立てていた。

【少女仮面とその時代】

 「少女仮面」は1969年早稲田小劇場の為に書かれた戯曲。翌年、岸田戯曲賞を受賞している。半世紀が経っても色褪せず、再演が繰り返される唐作品のひとつ。唐十郎は今も健在なのである。

 ’60年代・’70年代、唐十郎と彼の劇団(「状況劇場」その後の「唐組」)が、演劇界に与えた影響は大きい。近い世代の私達は、「人さらい劇団」と呼んでいた。半年に一度、新作のテント公演は日本の南から北へ巡った。東京に紅テントが立ち上がる前に、数か所公演があり、その情報は北上する公演先の客の心を揺らし動員に寄与した。そしてテント裏では人さらいが行われていたに違いない。根津甚八や小林薫ら多くの若者たちは、唐十郎とその劇団の魔力にさらわれたのである。当時、超満員東京公演に何度も遭遇している。客はテントの中で、椅子も座布団もない床に胡坐坐になり観劇したのである。巷は政治の季節であり、異議申し立てをする若者達が路上を疾駆する時代であった。そのエネルギーは演劇を目指す者たちにも影響を与え、多くの旧態を破壊し、変革をもたらしたのである。その中で紅テント公演は、中心的な役割を果たしたのではないか。半世紀の時が経ち、唐十郎は2024年5月5日物故する。しかしその霊魂はいまだ狼煙のように、あちこちでくすぶり続け時々焔となり、私達を熱く照らしているのである。

 渡辺えりの古稀の悲願は、この作品で達成されたのであろう。公演のガイドブックには、演劇を生業としたいきさつや唐との縁が丁寧に触れられていた。渡辺えりは稀有の天才を次世代に繋ぐ役割を買って出たのである。50年100年後、唐十郎を日本のシェークスピアにせんが為に。

 終演後、息を切らせながら今回の公演の為に作ったグッヅの紹介に時間を割く渡辺えりの姿が残影となり何かを象徴していた。

 変貌した下北の町に今も暖簾を守っている街中華「珉亭」、その健在を確かめ寄らずに帰った。    2025年6月18日   俳茶居

 

      煌々と唐十郎の夏帽子  (拙句)