常滑焼企画展『伊藤雅風 展 急須バカ』2016年、年末の川越「うつわノート」に行く | 俳茶居

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       煌々と唐十郎の夏帽子 (呑亀〉

 常滑焼企画展『伊藤雅風  急須バカ』

       2016年、年末の川越「うつわノート」に行く

 

伊藤雅風作藻掛け蓋碗(2016年12月17日撮影)

2016年12月17日、常滑焼の作家伊藤雅風氏の作品展を見に、久々川越「うつわノート」に行く。晴れた冬の空、風もなくピンと張りつめた空気は、西武線本川越駅より徒歩で向う私の背筋を伸ばしてくれた。道に迷うかなと思いながら、徳川家三代家光の乳母春日局ゆかりの喜多院まで来て、今回もまた一筋間違えた。ようやく看板を見つけ安堵しながら、戦前の木造二階建家屋に辿り着く。玄関を入ると何か心温まる気持ちになる。作家在廊日と承知していたので、入ってすぐに初対面の本人がいることに気が付いた。大きな体をかがめ丁寧な挨拶を返された。作品展を企画された「ギャラリーうつわノート」ご主人Mさんのブログを拝読。書かれている作家の来歴に触れ、「急須バカ」なる企画名にいたる心の経緯など推測。なるほどと合点がいった。

横手急須

完成度の高い作品群と向き合った。静謐な佇まいのギャラリィー空間に、凛とした茶器の数々が静かに語りかけて来る。「私をしっかり見て、よそ見しないで」などと、いずれの作品も貴婦人の上品な言葉遣いで、来廊者の心を虜にしてしまうようである。作品の前で立ち止まりしばらく無言で会話を交わしている作品と客の姿は、新しく主人になろうとする者へ、貴婦人からの口頭試問なのかも知れない。あまた作品の誘惑の中を無事無傷で泳ぎ切るのは至難の業のようである。

藻掛けの蓋碗を連れ帰ることが叶った。2年前、初めて作家の急須を手に入れていた。急須と蓋碗、ともにうす緑の藻掛けの作品。家に帰り並べて悦に入っている。

 茶器の美しさは何処から来るのだろうか。お茶淹れの理にかなうことは当然。ただその為に茶器の姿はどうあればよいのか。土との格闘、窯や釉薬、焼き方など作家のこだわりが作品に反映される。そして作家がようやく出来上がった作品をリリースする時の気持ちに想いが至る。

 不易流行は、雅風氏の作品にも窺える。オーソドックスでありながらシャープな意匠は、どのようにして醸成されたのか気になるところである。雅風氏たちの世代は、彼が独立するまでの師匠村越風月氏や、村田益規氏、伊藤成二氏など常滑の現代急須作家の大御所の次の世代となるのであろう。すでに彼等のエスプリを昇華し、我が道を行く雅風氏の作品に、常滑急須の今を確認することが出来た。慌ただしい年末、心温まる小江戸散歩となった。                     2017年1月11日 俳茶居    

                                                                              

静かな佇まいの貴婦人達

*ブログタイトル「壺迷」さんの「茶壺の発展と歴史 」は、解りやすい。

常滑焼歴史。明治期に宜興急須技術を導入のことなど。

後手急須