台湾紀行〈2013年4月〉その④ 鶯歌の街に、追憶の「常淡茶舎」陽炎ふ | 俳茶居

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       煌々と唐十郎の夏帽子 (呑亀〉


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蔡榮祐-不流茶組 鶯歌陶器博物館蔵 撮影筆者


台湾紀行 〈2013414日~18日〉その④  

鶯歌(イングー)追憶の「常淡(じょうたん)茶舎」陽炎ふ


2012年12月閉店した西荻窪の茶館「常淡茶舎 」のカウンター越しの棚に整然と並んでいた濃い緑色の茶器類(特に茶盤)を思い出すのにしばらく時間がかかった。台湾新北市の (イングー)陶器博物館で陶藝作家蔡榮祐の作品を見た時であった。その作品は私の心を強く捉えた。足は瞬間接着材で固定され、その作品の前から離れることが出来なかった。そして「おやどこかで見たことがある。」と、脳細胞が急回転を始めた。記憶が西荻窪の茶館の棚に繋がり、心の中のもやもやが解消されひとり頷いた。固まっていた足も自由になった。


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蔡榮祐作品展 ポスター 〈鶯歌陶器博物館〉

 

台湾陶藝の至宝蔡榮祐製作の茶器にまつわる話は、翌日さらに思い知らされることとなるのだが、博物館を出て鶯歌の陶器商店街で茶器を探していると、商店街の中にある「陶禮陶坊」という洒落た小さな店にたどり着いた。ご亭主は若く真面目な性格のようで、表情は終始崩さず、値引き交渉は厳しいと思わせた(本当は優しい男性で、買い物が終わってから美味しい文山包種茶をたっぷりと飲ませてくれ、台湾お茶事情に話が及びご高説を伺った。名刺には茶藝師・評茶員とあった。)。お店で設え用の敷物と二重のガラス製茶海などを購入したのだが、ふと鍵のかかるガラスのショーケースに目をやると、あの蔡榮祐作の茶器が数点置かれていた(私が見た鶯歌商店街の他のお店では見ることは無かった)。高価な作品であることは予想できたが、値段を見て直ぐ、今の私に手の届くものではないと理解することが出来た。鶯歌の街で西荻窪「常淡茶舎」の茶器とご亭主のにこやかな顔が浮かんだ。


*〈ブログ記事