漁協が元凶って | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 若い人が漁業に参入してるという話題をテレビで取り上げてまして

 それは良かったなと興味を持ってみてましたら

 

 漁協や仲買人が漁業者の収入を搾取していて、ネットで直接販売することにより、漁業者の収入は向上して消費者も安く買えるようになった

 協同組合が新規漁業者が着業する際の弊害となっている

 

 っていうような主旨のこと

 

 

 テレビに出てた方が100%そう思っているのか、制作側が意図を持ってそのように編集したのかは解りませんけど

 

 まあ、最近の国のスタンスはそういう協同組合が元凶みたいなものですので、国の意図を反映したか、政策の人が国の主張を鵜呑みにしての報道かもしれません

 

 

 力不足・努力不足かもしれませんが、私も漁協の一職員として漁業収入向上のために日々努力してるつもりですけど、海況に左右される漁業の場合は供給が安定しないので、実際のところ直接販売はなかなか難しいです

 

 しかも、最近は魚を捌くことができないご家庭が多く、丸のままでは売れません

 どんなに安くしても

 「捌けないから」

 「キッチンが生臭くなるから」

 「生ゴミの処理が大変」

 っていう主婦の方がほとんどです

 

 丸のまま売れるのなら、安く、スピーデイーに販売できますが

 魚を捌いてから販売となると、衛生管理が整った作業場が必要ですし、捌く人の人件費もかかりますし、時間もかかる

 

 

 個人で魚をネット通販することをリアルに考えてみましょう

 

 200gサイズの○○を4尾っていう注文が来たとします

 まず、そのサイズの魚が4尾揃えられるかが問題になります

 魚はサイズがばらばらなので、指定サイズを揃えるためには大量の魚が必要になる

 けど

 条件が揃えば1tあるかも知れないし、条件が揃わなければ全く獲れないときもある

 

 大漁の時は魚が余り

 不漁の時は注文に応じられない

 という問題が発生しますよね

 

 天然の魚介類の場合、往々にして需要と供給のバランスはとれないんです

 

 たくさん獲れたとしても売れなければ収入になりませんし

 注文に応じられなければ信用をなくして、以降買ってもらえなくなる

 

 色んなところにネットワークを持っている仲買人さんなら、この問題をなんとかできるんですね

 直接販売よりは価格が落ちるかも知れませんけど、水揚げした魚を全て引き取ってもらえる、全て収入に変えられるっていうのは非常に大きなメリットです

 

 1t水揚げして600キロは市場の倍の値段で売れた

 けど、400キロ売れ残った

 っていうのと

 確実に水揚げした魚を全て引き取ってもらう

 どっちがいいですか?

 

 

 注文があった魚が魚市場の相場では1,000円だとして

 それをネット通販で2,000円で売るとしましょう

 

 通販だと運賃や梱包資材がかかります

 クール便で送るとなると梱包資材を入れて1,500円ぐらいはかかる

 送料を上乗せすれば3,500円になります

 はたしてそれは一般に流通してるものより安いのかどうか?

 

 

 しかも、漁業者は魚を捕ってきた後で、宅配便の集配時間までに選別・箱詰め・発送作業を行わなくちゃなりません

 あと、納品書や請求書を作ったり、受注作業も必要です

 販売した商品の代金回収もあります

 10万円の利益を出しても、10万円の販売代金が回収できなれば利益無しですからね

 

 最近は販売代行サービスやカード会社を使えば確実に代金回収できます

 けど、その代わりにマージンを取られます

 当然これも経費となります

 けっこうお高いです。マージン

 漁協や魚市場の販売手数料よりだいぶ

 

 漁協や魚市場の販売手数料は漁業者からの搾取で、販売代行サービスやカード会社の手数料はそうじゃないってことなんでしょうか?

 

 それからクレーム対応がありますね

 鮮度が悪いとか、頼んだものと違うとか

 あと、配達したら相手が不在だったとか、返品とか

 その対応は本当に大変だし、時間もお金もかかります

 

 今年の秋からの話をすれば

 漁協経由で魚市場に販売すればインボイスは必要ありませんが、直接販売となればインボイス対応が必要となります

 インボイスの事務はたいへんですよ

 

 漁業者と家族でこの一連の作業を全部やれますかね?

 

 小規模ならやれるかも知れませんけど、利益を大きくしようと思ったらとても手が回らなくなるでしょう

 そこで人を雇用したら人件費が発生します

 人件費は高いですよ、仕事があるときだけ働いてくれる人ってなかなかいないから、周年で雇用すると社会保険料も発生するし、時間外手当だの休日出勤手当だのも出てくるし、それに間に合うだけの水揚げをしていかないと間に合わない

 ネット通販だと土曜や日曜も注文が入ってきます

 でも、雇用した人は土日休みじゃなきゃ働かないっていう人がほとんどで、休日出勤はしてくれませんからね

 おまけにある程度の期間雇用すれば有給休暇も発生する

 雇用した人が休みの日は経営者である漁業者やその家族が受注作業を行わなくてはなりませんよね

 雇用主の休みがなくなります

 

 直接販売で確かに収入は向上するかも知れませんが

 手元に残るお金と、漁業以外に係る労力と時間を考えるとどうでしょうかね?

 

 テレビに出てたのは大消費地のそばに住んでる方でしたので、そういう環境であれば直接販売も成り立つのかもしれません

 でも、それが日本国中に当てはまるのかどうか?

 

 

 目端の利く漁業者がたくさんの漁業者を傘下に置いて、魚をかき集めればコンスタントに魚を供給できるでしょうし

 大量の魚を取り扱えば、人件費を含めた経費もペイできるでしょう

 それが進んでいくと、大きな利益を得るごく少数の漁業者と

 それ以外の小作農みたいな漁業者という構図になってしまいませんか

 

 それが資本主義だっていうのかもしれませんけど

 

 私は多くの漁業者が同じ様な収入を得るチャンスを持てる

 協同組合

 という形が好きです

 その形を維持するために必死こいて働いてるつもりですけど

 

 その形を弊害と呼ばれるのはもの凄く悲しい