79年9月発売「しなやかに歌って」のB面の「娘たち」は、しっとりとしかもエロティシズムも感じさせる曲ですが、その歌詞、
♪甘い香りに誘われて 河のせせらぎの中を
娘たちが渡ってゆく 今日も一人一人一人・・・
鏡の中を通ったら 二度と無邪気な日々には
戻れないと知っているのに 今日も一人一人一人・・・
と、「恋人宣言」間近なこの時期、心は友和さんの元へと戻れない河を、芸能界から普通の社会へ、そして娘から大人へと渡っていく決意が窺える。
が、その約4か月後の79年12月発売の「愛染橋」では、「娘たち」のあの世のものとも、この世のものともつかないような世界から、古風で純和風な女へと姿を変え、
♪橋の名は愛染橋 ただ一度渡ればもう戻れぬ
振り向けばそこから想い出橋
うちは愚かな女やからね 人生もよう知らん
けれどあなたに手招きされて 渡りたい 渡れない
と、一生のうちに幾度とない大事な決断の時に、この橋を渡っていくか留まるかと揺れ動く女心を切々と歌っている。
シチュエーションは違えど、寿退社が明白となってきたことを知る、阿木燿子さんと松本隆さんは、デビュー直後に千家さんや酒井さんが通してきた「私小説」を、山口百恵自身の物としてこの時期に復活させたように思えます。
曲はじゃぁ「娘たち」と「愛染橋」をどうぞ。
★娘たち ~ 愛染橋★
写真を1枚 こんな表情もたまらない!