今朝、明け方近く

『パラノイドパーク』を鑑賞しました。


今年公開されたガス・ヴァン・サント監督最新作です。



ウンチクたれる前に、言わせてください。



何で、私は彼の映画を見ると、

こうも幸せな気分になるんでしょうか。


それはもう、単純に好みの問題で、

客観的に作品を語ることを困難にさせます。



観た後に、

タイトルとなっている公園の名前を、

そっと3回くらいつぶやいてみてください。


Paranoid Park...


Paranoid Park...




Paranoid Park...



ちょっとだけ体が軽くなる。



Elliott Smithは、いつまでも優しく唄ってくれてる。




(原作の小説には、

この公園の名前は違った名前で出ているそうです。)




原作があって、映像作りに専念出来たためか、

商業的な製作の割には

映像はいくぶん実験的なものになっています。



8ミリや家庭用ビデオの映像。

早回しによるスローモーションの多用。

ポートレイト。




前3部作といい、

アメリカのアンダーグラウンドの系譜の、

完全に映像アートを意識したものになっていると思います。



先日、写真美術館で「液晶絵画」展を観に行きましたが、

このコンセプト、面白いですよね。

数年前からよく見受けられる、新しいポートレイトのかたち。

ビル・ヴィオラの「はつゆめ」展も大好きでした。



殺害のあとのシャワーのシーンを

スローモーションでじっくりと見せるのは、最高ですね。

最後暗く光を失っていくあたりが特に。


『サイコ』リメイクへの自己言及だったりするんでしょうか笑



ただ、全体を観ると

撮影はクリストファー・ドイルじゃなくても良かったのかも知れない。





音の扱い方も独特でした。



彼の作品を好きな人なら、

最初のシーンから、

今までのヴァン・サント作品とは違った音・音楽の使い方に、

気付くはずです。


そして音楽と映像のズレ。


明らかにミスマッチな音楽をかけてくる。


それだけじゃありません。


音の位置を定位させないんです。


声が右と左でバラバラに聞こえてきたり、

カットバックになると、カメラの位置によって声の位置が変わります。





全体的に言って、本当に「これ」といって目立って良いところは

ないです。


でも良いんです、これで。

もう前もって言っておきます。


私のブログは全てネタバレです。


なので、レビューを書くときには

タイトルに作品名を出します。


観てから読んでもいいし、読んでから観てもいいし。


*****************************


先ほど

『レポマン』

を鑑賞いたしました。


映画通なら知ってるだろう、という渋い選択です。

ちょっとだけ何かでレビューを読んだことがあって、

気になってて、

そんであまり情報も無く観たので、かなり楽しめました。



84年、アメリカ作品。

アレックス・コックス監督。


あまりメジャー、とは言えない監督ですが、

経歴がすごくて、

オックスフォード、UCLAに在籍してたというから驚きです。



驚き、というのも、

この作品、

間違いなくB級バカ映画の側面があるからです。




UFO

エイリアンの死体4つ

パンキッシュな主人公と頭悪そうな仲間達

ついでに頭悪そうなCIAの女性エージェント

カーチェイス

マッドサイエンティスト

青白く光りながら飛ぶ車のラスト




どうですか、このやばいワードの数々。

間違いなくsomething感じるでしょ。


ちなみに「レポマン」というのは、

repossession manの略で、

ローン未払いの客の車を回収する職業のことです。

主人公がひょんなことから、その仕事に就くわけです。

そこからストーリーが展開していくんです。



でもこの作品、そんなバカ映画として楽しむこともできるんですが、

もっともっと味わいの幅があります。





まず撮影監督のロビー・ミューラー。



冒頭のクレジットで「なんか聞いたことあるなー」って思って、

最初20分くらい観たところで、

ジャームッシュの

『パーマネント・バケーション』『ダウン・バイ・ロー』『ミステリー・トレイン』

といったあたりを思い出していたら、

後者2作品の予想は本人そのままズバリでした。


『パリ、テキサス』など、ヴェンダース作品も手がけている、

といえば何となく、ああそうか、って感じですよね。

(『パリ、テキサス』は本作とハリー・ディーン・スタントンつながり)


登場人物とカメラの間に独特の距離感がありますね。

徹底して人物を撮ってるはずなのに、あの距離感。


そしてアメリカっぽい色と構図!

ザ・アメリカです。




あとは、何気に出てくる台詞に感じ取れるこの作品の核。


「UFOはタイムマシンなんだ。

毎年南米に出る行方不明者は、

タイムマシンで過去へ連れて行かれるんだ。」


なるほど。

「他者とは未来」である。

監督がインテリであることを考えると納得です。


エイリアンの死体が4つであるのと、

エイリアンの死体の不思議な力によって消された人物が4人であるのは

偶然ではないようです。




タイムマシンといえば!


この作品が公開されたのは84年ですから、

実は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の前年ですね笑





この作品を観て思うのは、

最近の映画って、なんて不自由なんだろう、ってことです。

最近のほとんどの映画は、言葉に置き換えても問題が無い。


この作品を、言葉で伝えるのは無理ですよ。


アメリカ映画にはそういった奔放さの系譜があります。

もっともっと、出てきて欲しい。



ロバート・アルドリッチの『キッスで殺せ』

へのオマージュであることを思いながら、

改めてそう感じるのでした。

さきほど

『殺人に関する短いフィルム』

を鑑賞しました。


ポーランドのクシシュトフ・キェシロフスキ監督の

87年作品です。



驚いたことに

昨日観た

『4ヶ月、3週と2日』

の舞台設定は’87年のルーマニア。


全く意識してませんでした。


最近自分、

なにか予知能力みたいなのがあるんじゃないかと思います。

無意識に数珠繋ぎに作品を選んでるんですよ。

正直気持ち悪いです。




この作品で取り上げられるテーマは


「暴力の行使」。



「殺人を犯せば、

加害者も被害者も裁く者も、

そこにはいなくなる。」



といえば、

『4ヶ月~』

と同じ主題であり、



「最終的に暴力を取り締まるのが、

国家権力であり、

そこに国家と暴力の不条理が露呈する。」



といえば、以前『TOKYO!』の解説で紹介した

大島渚の『絞死刑』と同じ主題になります。



また、

中盤のクライマックスである殺人のシーンで、

被害者の顔が布で覆われたまま殴打されたこと、

作中の「クラクフ郊外」という台詞から、

レヴィナスの「汝殺すなかれ」の「顔」を連想することも出来るでしょう。



でも、正直この作品にそんな解説はしたくありません。



あの画面の黒くつぶれた部分に何を感じる?

あんな緩慢な殺人シーンを未だかつて観たことがあったか?

こんなにも「窓ガラス」を意識した、その遊び心に安堵を覚える。



自分の中にある

「映画的」な瞬間がたくさん詰まった映画だからです。



これだからポーランド映画はやめられない。




以前、

結構本気でポーランド行きたいなと考えたことがあります。


京橋のフィルムセンターでポーランド映画特集があって、

ウッチ映画大学の近年の卒業制作のフィルム上映と、

そこの先生によるティーチ・インもあったんです。

そう、ポーランドには国立の映画学校があるんですよ。


ヨーロッパには結構国立の映画学校があるみたいですが、

なんてったってウッチの卒業生にはアンジェイ・ワイダやポランスキー、

そしてこのキェシロフスキがいるわけですから、

そりゃ惹かれるってもんです。


旧東側だっただけに、

視覚芸術にはもともとうるさい素地があるんですよ。

それが良い形で受け継がれてるみたいでしたね。



そしてわが日本に目を移すと、

国立の映画学校といえば、、、、


東京芸大大学院映像研究科

なんですね。




うーん。。。

どうなんだこれは。