8冊目:ほたるいしマジカルランド
寺地はるな
2025/07/29
★ひとことまとめ★
みんな毎日お疲れ様
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
大阪の北部に位置する蛍石市にある老舗遊園地「ほたるいしマジカルランド」。「うちはテーマパークではなく遊園地」と言い切る名物社長を筆頭に、たくさんの人々が働いている。アトラクションやインフォメーションの担当者、清掃スタッフ、花や植物の管理……。お客様に笑顔になってもらうため、従業員は日々奮闘中。自分たちの悩みを裡に押し隠しながら……。そんなある日社長が入院したという知らせが入り、従業員に動揺が走る。
【感想】
先日鬼滅の映画見てきました
鬼の中で猗窩座のストーリーが一番印象的だったから、今回の映画も本当に良かった…
有無を言わさず無惨に腕ぶっこまれて鬼にされたからってのもあるなあ。
他の鬼たちと違って、なりたくてなったわけではないというね。
しのぶの最期も悲しかった…でもしのぶの死無しには童磨には勝てないからね…仕方ないんだけどね…。
次は童磨VSカナヲ・伊之助かな~?
さて。
ほっこり、感動できるような本を求めて…そういうときは寺地さんだろうと思い読みました
あと、本をパラっと開いたときに、自分と同じ名前の登場人物がいたことも読もうと思った決め手だった
予想通りのいいお話だった
大阪北部の架空の都市・蛍石市にある老舗遊園地「ほたるいしマジカルランド」を舞台にお話が展開されていきます。
ほたるいしマジカルランドの名物社長、”マジカルおばさん”こと国村市子が病気のためしばらく休養する、というところからお話がスタートします。
私が「なるほど、そういう話の作り方もあるのか」と思ったのは、各話のタイトルが月~日曜日までの曜日で、それぞれ主人公が異なるところです。
登場人物たちは遊園地のスタッフなのでどのお話にも出てくることになるんですが、読み進めていくごとに登場人物たちを別の視点から見ることができておもしろかったです。
紗英の気持ちわかるな~。
すごく昔の成功体験や、褒められた体験をずっと握りしめて今に至る。何が何でも成功してやる!夢を叶える!という意気込みもない。くじけずにあきらめずに何度も挑戦する不屈の精神もない。
ただなんとなく、ぼんやりと毎日できることだけをやって過ごしている。
紗英が村瀬に感じる気持ちと同じように、私よりももっと向いている人がいるんじゃないかな、と毎日思う。
このお客様は私が担当するよりも、誰々が担当した方がもっとうまくいくんじゃないか。私にはきっとできない。いっそのことやめてしまった方がお客様のためにも会社のためにもいいのかもしれない。
そうやって後ろ向きな気持ちも感じつつ、でもできるところまでやってみよう、自分の限界までやってみよう、という気持ちもあるから辞めずに続けている
明日急にカリスマ営業になれるわけでもなくて…本当に少しづつしか変わらないんだけれど、それでも昨日より、今この瞬間よりできることが増えればいいと思って続けてる。
みんなそんなものなのかな~?自信を持って胸を張って毎日働けている人ってどのくらいいるんだろうね
紗英と村瀬の関係がどう進展していくのか気になるな~。恋人にならなかったとしても、お互いを鼓舞しあって、上手くほたるいしマジカルランドを盛り上げていってほしい。
村瀬も無駄なプライド捨てられてよかったよね。プライドって本来は「誇り」だけど、人生において障害になるときのプライドって「誇り」とは違うよね。むしろ誇りがなくて、人にはそれを気づかれたくないから自分を大きくみせるもの、自分の心を防御するための防御壁に近い気がする。
そういう変なプライドがあると人の助言とかも素直に聞けなくなるよね~
自分の成長のためには、そんな変なプライドは捨てた方がいいんだよね~。
八重子のお話は胸がしめつけられたなあ…。
八重子がものすごく悪人にされているけれど、一番悪いの夫の洋介だよね。いまだったら産後鬱って病名ついてるはず。
育児は八重子に任せっぱなし、八重子のことは気にもかけない・相談も乗らない、育児がうまくいかなければ母親失格呼ばわり…。
一番近くにいる夫には突き放されて、頼る先もなくて一人でずっと悩んでいて、そんなときに優しく抱きしめてくれる友達がいたら、たとえその人がマルチの勧誘でも心許しちゃうよね
借金までしてマルチにのめり込んでいったのは確かに悪いことだったけれど、じゃあ夫であるお前は妻に寄り添おうとしたんですか?って話。
寄り添わずにマルチだけ無理やりやめさせて、また孤独になったら八重子はアルコール依存…もうさ、仕方ないよね。一人だけでの育児も孤独も辛すぎて逃げるしかなかったんだから。
手伝いもせず、妻の心のケアもせず、そんな妻を母親失格扱いして子供まで奪い取る…。そんな洋介がのうのうと再婚して子育てというか家族ごっこの楽しい部分だけ享受しているの許せね~
自分には冷たかった人が、ほかの人の前では別人のように優しいの見ちゃうときついよね。
美里さんは八重子に同情していたと思うな。洋介のことだから、前妻はクソだった!みたいなこと言ってそうだけれど、「それ、おまえのせいで元奥さんそうなっちゃったんだろうね…」ってわかっていたと思うよ。
洋介と結婚している時点で美里もちょっとアレな部分はあるけど、洋介があんなだからこそ大翔を育てなければと思ったのかもしれないね。
本当は一番近くで成長を見たい存在なのに、近づけない、ひっそりと見守るしかない。おなかにいる時から大切に大切に育てて、死ぬほど痛い思いをして産んだのに、それが今では他人よりも遠い存在になってしまった。辛すぎる。
八重子、いっぱい幸せになってほしい。母親失格じゃないよ。子供のこと大切に思っていたからこそ脱線しちゃったんだよ。本当に子どものことどうでもいいと思っている人は、一人で家でも出て好き勝手自分のことやってたはずだよ。
八重子がもっと自分の楽しいこと、好きなことをして幸せだと思えますように。
山田さんの話は、親子関係(ステップファミリー)って難しいよね、と思ったお話だった。
血がつながっていないからこそ、より一層父親らしくならねば…と奮闘した結果が断絶かぁ…。
家を買い娘に部屋を持たせてあげる、一人前に育てて送り出す、厳しく接するのも本人のため。それが良き父親、父親の責任、と思って頑張ってきたのにね。
しかも、「お父さんからへんな目で見られたり、身体を触られたりしている」って変な噂を娘自身にたてられて、近所からも噂されるってのはキツイ。いくら継父が疎ましくても、父親を社会的に抹殺するようなことはしちゃだめでしょ…。
自分も生理的に父親無理!!って時期があったから玲香の気持ちもわかるんだけれど、これはね~、子どもを産めば親の気持ちがわかると思うな~。
大人になって親の気持ちを理解できたと思っても、やっぱり自分が親にならないとわからない気持ちもあるんだな~って、子どもを産んで思ったんだよね
いまはまだ玲香にはわからないと思うけれど、いつか父親に感謝できる日が来るといいね。
佐門は他の人視点の話だとクールでかっこいい、冷静沈着で完璧な次期社長、ってイメージだったけれど、佐門視点だとずいぶん違ったんだなあ~と感じた
周りからは、優遇されているだろうと思われれているけれど実際はそんなことはなく、ミスをすれば他の社員以上に評価が下がる。
人から浮かず相応であることをもっとも気にしていて、口数が少ないのも冷静なのではなく実際は頭の回転が遅くて語彙が貧弱なだけという自己評価。
他の人より恵まれているのだからと、愚痴もこぼさず気を張り続ける。仕事は好きだが、向いていると思ったことは一度もない。
自分なんかよりもずっと向いている存在が身近にいる。自分に無いものを持っていて、自分がのどから手が出るほど欲しいものもあっさりと手に入れてしまう。
なんだか鬼滅の巌勝と縁壱を連想してしまった
佐門が嫉妬心を抱いていることなんてまったく気づきもしない、気にもしていない佑…。こういう、本物の陽キャみたいな人の近くにいると、気を抜くと病みそうになるよね。
佑にももちろん悩みはあるわけだけど、そういうのを表に出さないから、周りは「こいつ良いよな~、悩みごとなんてないんだろうな~」と思う。
佐門は人間らしくてよかったな。あおいも、佐門の完璧主義で力み過ぎちゃうところをうまくフォローできる性格で、お似合いだな~と感じた
最後、佐門が色んなものから吹っ切れたというか、解き放たれた感じよかったな
星哉は愛着障害だよね。父親が悪いわ。
お金が1番、お金があれば幸せ、自分は他の人とは違うという選民意識、自分を捨て(正確には捨てたのは星哉たちだけれど)裕福な生活も捨てた母親が幸せだなんて許せない。
無償の愛を感じる経験が少ないせいで、メリットデメリットという尺度でしか人間関係を築くことができない。
いまからでも遅くはないから、母親との関係を築きなおして欲しい。そうすることできっと星哉のひねくれた考え方も少しずつほどけていくと思う。
市子の考え方、「なんのためにもならないものが、ごくあたりまえに存在する。存在されていることを許されている。それこそが豊かさだ。」というのはまさにそうだと感じた。
戦時中とか不況だとそうもいかないからね。娯楽を楽しめることは平和なんだなと思う。
市子、すごく優秀な経営者だよな~。自分だけが優秀だと自分が引退したら終わっちゃう。でも、従業員含めみんなが優秀なら自分が引退してもずっと続いていく。
みんな、少しずつ自分の居場所を見つけた。
佑は自分の居場所を見つけられるのかな~
おすすめです