5冊目:噛みあわない会話と、ある過去について
辻村深月
2025/07/08
★ひとことまとめ★
事実とそれぞれの真実…
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
2018年本屋大賞受賞後第一作! 美術教師の美穂には、有名人になった教え子がいる。彼の名は高輪佑。国民的アイドルグループの一員だ。しかし、美穂が覚えている小学校時代の彼は、おとなしくて地味な生徒だった――ある特別な思い出を除いて。今日、TV番組の収録で佑が美穂の働く小学校を訪れる。久しぶりの再会が彼女にもたらすものとは。
【感想】
久々に深く考えさせられた作品でした
お話に出てくる主人公たちと同じで、心臓がひんやりしてくるというか…苦しくてしんどい気持ちになりました
この作品を読んでいるとき、真実と事実の違いの話を思い出しました。
各々が話していることはその人にとっての「真実」で、当時その場にいて客観的な「事実」を知る第三者が間に入ってくれないと、どちらが言っていることが本当に正しいのか誰も判断ができないんですよね~…。
私の何気なく言った一言で、何気なく行ったことで、誰かをとても傷つけたこともあったのかもしれない、と考えるとしんどかった…。
先日のブログでも書きましたが「謝って赦しを乞うのはエゴ」だと思っているので、当時のことを申し訳なく思っても、その気持ちを一人で背負っていかなければならない苦しみ…。
なぜあの時私はああ言ったのか、こうしたのか、と深堀もしてみましたが、たいだいは"みんなが言ってたからなんとなく"とか"特に悪意があったわけじゃない"とかで、登場人物たちと同じように特に意識していたわけではなかったという答えしか出ず…
「ナベちゃんのヨメ」は、学生時代同じコーラス部の部員だった"ナベちゃん"の嫁がどうやらヤバい女らしい、という話です。
このお話を読んで、私も学生時代の男友達を思い出したなぁ…。
みんなと仲良くて明るくて優しくて本当に良い人で、男女先輩後輩問わずみんなから好かれていたけど、でも誰も付き合ったりしていなかった。彼はサークル外の子と付き合ったけど、このお話と同じで、あの子は良くないとかヤバいとかそういう話が出て。(そういった一面があったのは事実なんだけれど。)
あーだこーだ言ってたけど、でも誰も彼に告白とかしなかった
かく言う私も一度だけ2人で花火大会に行ったことがあって。ゲリラ豪雨で2人して浴衣でずぶ濡れになりながら、人混みの中はぐれないように手を繋いだんだよね〜…。
あのときはナベちゃんと佐和のように、どうにかなってしまう可能性が一瞬だけあったと私は思っている。
たぶん私だけじゃなく、他の子も同じような体験してると思うんだ〜
でも私も含め、みんな彼を「良い人」止まりのままにしたんだよね。
今思えば、あまりにも彼から陽のオーラが出すぎてて、色気とか自分がなんとかしてあげたい!とか、そういう気持ちを感じなかったのかもしれない
まあそんな彼はナベちゃんとは違い、彼とお似合いのTHE陽な素敵なお嫁さんと結婚して収まるところに収まったので、下手に付き合って友情関係壊すより良かったのかもしれない
「パッとしない子」「早穂とゆかり」は読んでいてこっちまで逃げ出したい気持ちになった
読んでいてすごく疲れた…。
"背中にすっと冷や水を浴びせられたような気持ち"
"胸に、凍った刃を押し当てられたように"
"血の気がゆっくり失せていく"
よくこんなにあの気まずさを言語化できるなあ~。本当にこんな感じ
お客様から詰められた時や、元カレと喧嘩した時などの、何か…何か言わないと…と必死に頭の中をグルグルさせる感じを思い出した…。
なんであんなこと言ったのか、したのか、説明しようとすればするほど言い訳っぽくなる感じ。あ〜思い出すだけでキツい
まあでも美穂も早穂もさすがに度が過ぎているとは思いましたね。あれは仕事人としてもNGだと思う。
美穂に関してはそんなこと言ってない!!て言ってるけれど、言ってるんだよなあ~。。本当に覚えていないなら、今までずーっとなんにも考えずにペラペラと口先だけで話してきたんだろう…。
子どもの名前を間違えるのもよくあることだと開き直っちゃってるしね…。
「人の言葉をいちいち覚えていて、勝手に傷つくのはやめてほしい。こっちはそんなに深く考えていないのに、繊細すぎる。」こんなこと言う人、教師でいいんですかね…。
まあでも大人になって思うけれど、学校の先生って普通の会社で働いた経験がないから、会社員やってて身につくような常識はないよな~と。子供相手だし、先生って呼ばれるし、なんか自分の立場を勘違いしている人も多いんだろうなと。
でも、入場門の話はどうだったんだろう。作った本人が忘れるとは思えないし嫌ってた美穂に相談するわけもなさそうだから、やっぱり美穂の記憶改ざんなのかしら。話しているうちに本当の記憶にしちゃったのかな~。
「ママ、はは」はなんか不思議な話だったなあ。写真が変わり、現実も変わり、母までが変わり。
前の母はどこにいってしまったんだろう…。
一つ一つのお話のボリュームもそこまで多くないので読みやすいし、いろいろと考えさせられる部分もあり読んで損はないと思いますおすすめ