斬首の森
澤村伊智
2024/08/10
★ひとことまとめ★
文字通り、首を挿げ替える
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
わたしは今すぐ逃げなければならない。
あいつらから、この森から。なのにーー
鬱蒼と暗い森の中に建つ合宿所。ある団体の“レクチャー”を受け洗脳されかけていたわたしは、火事により脱出する。男女五人で町へ逃げだそうとするが、不可解な森の中で迷ってしまう。翌朝、五人のうちのひとりの切断された頭部が発見される。頭部は、奇怪な装飾を施された古木の根元に、供物のように置かれていてーー
戦慄のノンストップ・ホラーミステリ!
【感想】
大好きな澤村さんです
夏はやっぱりホラーですね
そんでもってとても良かったー!!!
なーーるほどねーーー!と思いました。
面白いので気になる人は以下読まないでぜひ本を読んでみてほしいですね
いなくなっても誰も困らないような最底辺の人間たちを集めて、合宿で”セミナー”や”レクチャー”を行う異常な会社「T」。
自分の心の傷や澱を吐き出さない者には第1段階から第4段階までのレクチャーが実施される。
第4段階のレクチャーでは”討伐”と称し、大きな樹木に似たオブジェの枝からつるされたいくつもの金属の棒を使い、自分自身を”討伐”させる。
ぶら下がった金属を使って自分自身を殴らせ、昏倒し自分で殴れなくなると社員たちが代わる代わる殴り続ける。
主人公の水野鮎美はレクチャーに参加し、討伐により死亡した参加者の遺体遺棄を手伝わされていた。
鮎美たちは遺体をラップでぐるぐる巻きにして、穴を掘って地面に埋めた。
同じく遺体遺棄を手伝わされていた参加者・シンスケに、「主催者たちのしたことは殺人に等しく、自分たちは犯罪の片棒を担がされている」と言われたことで洗脳から解ける。
洗脳から解け恐怖に陥っていたところ、研修所で火事が発生。逃げ遅れた鮎美だったが、何者かに助け出される。
鮎美を助け出したのは男女のグループだった。同じ合宿の参加者だった、土屋嘉明・久保靖・佐原はるな、そしてシンスケこと太刀川信介。
彼らは皆洗脳から解けており、脱出の策を練っていたところに偶然火事が発生し、合宿所から脱走したのだった。
脱走したのはいいものの、ここが何県のどこかさえわからない。
合宿所へのバスはすべての窓のカーテンが閉められていて、車内にて提供されたお茶を飲むと眠気が生じ、社員に起こされたときには合宿所についていた。スマホも身分証もすべて社員に回収されている。
彼らは太刀川の指示に従いながら、木の実や草などを食べて飢えを凌ぎ森の探索を続けるうちに、木の上に建てられた建物を発見する。
彼らはここで夜を明かすことにしたが、朝起きると太刀川がいなくなっていた。
鮎美、土屋、久保の3人で太刀川を捜しに行くが、彼らが発見したのは、枝にたくさんの刃物がぶら下げられた巨木の下に置かれている太刀川の頭部だった。
目の前の巨木は、あのレクチャーの”討伐”で使われていた樹木そっくりだった。
この森とは、討伐とは、太刀川はなぜ首を切られたのか、何者に切られたのか―…
ざっくりとまとめると、
フリーの記者・小田和真が「T」の合宿からの脱出者・水野鮎美にインタビューをする体で話が進んでいき、合宿中そして脱走中に起こった出来事について鮎美の視点で話が進んでいきます。
異常な会社「T」で行われている異常な洗脳行為および殺人行為。「T」の社長・続木宣治の祖父であり、新興宗教「ひのたま教」の教祖・続木宣雄。
ひのたま教そして「T」の本拠地山間部にある禁足地「斬首の森」。
200年以上前に隕石、当時の人たちから見ると「火の玉」が落ちた。落下後30~40年が経ち、そこには木々が生え盆地となった。
森は自然と禁足地となり、そこで発見される動物たちは手足がいくつもあったり首がいくつもあったという。しかもそれはただの奇形ではなく、その森の植物を食べたものは分裂して増殖できるようになるのだった。
当時の人々はそんな分裂した人間や獣を退治するために、分裂が始まる前に本体の首を切って討伐していた。分裂中の本体の首を斬ると、出てくるコピーは首無しになる。首無しコピーはしばらくは動けるけれど、食事が取れなくてそのうち餓死する。
あの刃物のぶら下がった木々は、そうやって討伐した証だった。
ひのたま教でキヨが行っていたことは、病の人間を治すのではなく分裂したコピーの方を返していただけだった。
そして現代。なぜ「T」は人を集め討伐に模したレクチャーを行い、死体を埋めていたのか。
続木宣治もとい続木宣雄は文字通り首を挿げ替えて何年も何年も生き永らえていた。
新鮮な首から下を求めていたのか~。続木は不死の魅力に取り憑かれちゃったんですね。
消化器官がほとんど動かないと言っていたけれど、やはり首から下は別の人間だからうまくいかないんですかね
しかも首から下は普通に腐っていくみたいだしなあ…。首から上は年をとらないのかな?
続木は森の植物を食べてしまって分裂人間(?)になってしまって、そんな気持ちの悪い生き方はご免だったから、過去の討伐の話を思い出して自分の首を自分で切った…のか?
でも、わざわざ討伐の儀式をレクチャーに取り入れるんだな~。自分も本来は討伐された対象だろうに…。
でも分裂が本格化する前(コピーが出つつあるとき)に本体の首を切ったら、胴体からは首無しコピーが出てきちゃうはず
当時分裂中の続木の近くにも誰かがいて、その誰かの首を切った後に自分の首を切ったんだろうか。
首と胴体が切れたら、どうやって首を別人の胴体に付けるんだろう。誰がつけるんだ?首が勝手に動くのか?と思っていたけれど、鮎美が小田にくっつく場面で何となく理解はできた。胴体と離れても、意思?はちゃんと胴体に伝わっているのね。首が生きている間だけかな?と思ったけれど、首が死んでも土屋さんの胴体は鮎美を助けるために動いてたしなあ。
ちょっとそこらへんのルール(?)が理解できていません。
どんくさそうな鮎美が土壇場でルールに気づいたところはちょっとご都合主義っぽさを感じたなあ。
一度首を切って別の人の胴体にくっつければ、もう二度と分裂しない。
ただ、分裂人間の名残なのか、首は何度でも挿げ替えることができる。
現実的に考えてもしょうがないのですが、こういう人はどうやって生きていくんだろう。続木宣雄は続木宣治になったけれど、戸籍は?住民票は…?そんなのないのかな。病気になったら首挿げ替えればいいんだもんね…?
鮎美と一緒に行動していたメンバーたちの末路だけれど、
・太刀川さん→分裂中に鼓麻に首を切られる。よってコピーは首なしに。
・佐原さん→自分の手で、分裂し生えてきた手足を切ろうとした。その際、自分のコピーに返り討ちに合い首を斬られた。
ただ、終盤で顔のついたコピーが鮎美を助けに来たということは、分裂完了済みのコピーにやられたってことかな?
分裂中に首切ったら首無しコピーのはずだからね。
土屋さん→久保に首を斬られるも、首はしばらく生きていて久保に噛み付く。分裂中の胴体は、首が死んでもなお鮎美を助けるために久保を攻撃しつづけた。
・久保→森の植物は口にしていないので、胴体目当ての鮎美に首を切られて死亡。
・鼓麻→普通にコケて頭をぶつけて死亡。土屋によって無駄に首を切られる…
色々考えながら読むのも楽しかったな~
比嘉姉妹シリーズとは違った感じで面白かったです