1冊目:インフルエンス | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

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インフルエンス

近藤史恵

2024/01/10

 




★ひとことまとめ★

3人の少女たちの歪な三角関係

 

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【Amazon内容紹介】

大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨(ゆり)はある時、かつての親友・里子(さとこ)が無邪気に語っていた言葉の意味に気付き、衝撃を受ける。胸に重いものを抱えたまま中学生になった友梨。憧れの存在だった真帆(まほ)と友達になれて喜んだのも束の間、暴漢に襲われそうになった真帆を助けようとして男をナイフで刺してしまう。だが、翌日、警察に逮捕されたのは何故か里子だった――

 

幼い頃のわずかな違和感が、次第に人生を侵食し、かたちを決めていく。深い孤独に陥らざるをえなかった女性が、二十年後に決断したこととは何だったのか?

社会に満ちる見えない罪、からまった謎、緻密な心理サスペンス。
「読者を引っ張らずにおかない独特の謎」「行間からにじみ出る緊張感がすごい」「自分にもなじみのあるこの関係性と舞台に引き込まれた」雑誌連載中から反響続々。

「サクリファイス」の著者が女たちの焦燥と決意を描く、傑作長編!!

 

 

 

【感想】

2024年の1冊目。

アミの会(仮)から好きになった近藤さんです。

近藤さんの作品はこちらの作品で5作目かなキョロキョロ

 

 

一言で言うなら、3人の少女たちの歪な三角関係ですかね。

意図せず犯してしまった殺人により、3人の運命の歯車が狂っていきます。

 

小説家のわたしの元に、ある女性から「小説の題材になるかもしれないので、わたしと友達二人の関係についての話を聞いてほしい。」という手紙が届く。

そして語られた、3人の女性の30年にわたる関係ー…

 

舞台は大阪の巨大団地。

小学2年生の時、友梨は同じ団地に住む里子から、祖父と2人で同じ布団で寝ていることを聞かされる。周囲の大人は見て見ぬふりをして、里子を助けることはなかった。

小学5年生で受けた性教育の授業で、友梨は里子が祖父に何をされていたのかを理解する。

里子が祖父から性的虐待を受けていることを知りながら、助けることができなかった友梨は自分を責め続ける。

普通に考えれば、友梨は当時子供だったから助けられないのも仕方がないのですが、まあ本人はそうは思えませんよね。

気まずさを抱えた2人には徐々に距離が生じていく。

 

中学から友人になった真帆が暴漢に襲われているのを助けた際、友梨は男を刺し殺してしまう。

友梨は里子を助けられなかったという罪悪感を常に抱えており、今度こそ困っている友人を助けたいという気持ちがありました。

真帆を助けるために刺し殺してしまったことを正直に言っていれば、こんなに長いこと苦しまずに済んだのに…。

 

辛い現実からの逃避のために、友梨の代わりに捕まった里子。

当時は団地内に防犯カメラはなかったのかな?中学生の供述を鵜呑みにする警察も警察です…。

友梨の罪を代わりに償ったのだから、祖父を殺して私を助けてよと言う里子。

 

ようやく里子への罪悪感を昇華させる良い機会が訪れた友梨。

里子との打ち合わせ通り、祖父を転落死させるために里子宅に向かう友梨だったが、友梨が手を下す前にすでに祖父は転落していた。

なんと、友梨の代わりに真帆が祖父を転落させたのだった。

 

その後、真帆も里子も団地を去り、何事もなく時が経つ。

大学生になった友梨は偶然里子に再会し、あの時祖父を転落させたのは真帆であることを告げる。

言わなきゃ良かったのにナァ〜…みんな素直なのよね…

 

社会人になりしばらくした頃、友梨のもとに真帆から連絡が入る。

真帆は夫からDVを受けており、夫を殺してくれないかという。

友梨は真帆のために真帆の夫を殺すことを決意する。

 

真帆のために友梨が暴漢を殺し、里子が友梨を庇う。

里子のために友梨が祖父を殺そうとするも、真帆が友梨を庇い祖父を殺害する。

真帆のために友梨が夫を殺すが、それは実は真帆が里子を守るための殺人だった。

簡単には発覚することのない交換殺人。

けれど、友梨は入れ替わりを続けることに終止符を打ち、自分の罪は自分で償うことを選びます。

 

友梨は巡り巡って里子を守ることができて、今度こそ罪を償えたわけだけれど…友梨の人生を思うと悲しくなるんだよなあ。

周りの大人に不信感を抱き、自分に殺人犯のレッテルを貼り続け、人と深い関係になることを避け、最終的に病に倒れる…。

殺人までいかなくても、犯した罪を隠し続けるのって結構しんどいですよね。

バレてしまうかも…という気持ちを常に抱えていかないといけないし、何か良いことがあっても、自分にはそんな資格はないと思ってしまいそうだし。

友梨たちがサイコパス的な人だったらもっと人生上手くやっていけただろうけれど、みんな素直だったから…。

 

 

「暴風雨」と喩えられた中学校の雰囲気も、なんとなくわかるなあ。

和気藹々とみんな仲良く楽しかった小学校から一変。誰がこのクラスの、この学校の主導権を握っていくのか予測できない感じ。

主導権を握っていても、ふとしたこと(いじめとか)で失脚してしまう。大荒れに荒れている感じ。

自分の学生生活を振り返っても、中学時代が一番人間関係で揉めていた気がします。いじめやらなんやらで。

高校は偏差値である程度の学力だったり、私立公立で家庭の経済環境も近しい人が集まるけれど、中学校はごった煮って感じだからなあ…。IQが20違うと話が通じないって言葉がありますけど、そういう人ともやっていかないといけないのが中学校って感じ…。

 

 

私がとても共感したのがこの部分。

「小さい頃、いちばん仲のいい友達は宝物だった。どこか恋人めいた親密さと、独占欲。友達を失うほど悲しいことは、他にはあまりなかった。

その感覚はいつまで続いただろう。中学生くらいまでは確実に存在していて、そのあとは冷静さで抑え込みながら、いつか忘れてしまっていた。

いや、忘れてはいないのかもしれない。ただ、それは大人の間では危険な感情だから心の奥底に封じ込めてしまっている。」(P259)

 

私は大人になってもいまだにこの感覚を持っていますね〜。

いまでも、仲が良かった友達と疎遠になることはとても悲しい。お互い大人になって環境が変われば、考え方や付き合う人間も変わって疎遠になることもままある。それは理解しているんだけれど、楽しかった頃を覚えているからこそ悲しいんだよなあ〜赤ちゃん泣き

人生も友情も永遠ではないから、絶対どこかで離れる時が来てしまうのは仕方がないんですけどね。

友梨たちのように、離れていても何年会っていなくても、ずっとそばにいるように感じられる友情をこれからも大切にしていきたいなあ。

私は友達のお誕生日をお祝いしたりするのが好きなのですが、そこには若干の見返りを求める気持ちも含まれているのですが、いつか思い出した時に、お互いにそういう友達がいたという良い思い出になればと思ってやっています。

関係が有限だからこそ、できる範囲で精一杯友情を大切にしたい。

 

 

近藤さんの作品は女の子同士の友情に関するお話が多くて好きです。歪な関係なこともあるけれど…それでも彼女たちの根底にあるのは友情だったり愛情だったりするので、どこか素直さや純粋さを感じます。

読みやすくて一気に読めちゃうのでおすすめです本