ザ・ベストミステリーズ2020
日本推理作家協会 編
2021/07/04
★ひとことまとめ★
後味の悪い作品多めです(褒めてます。)
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
短編ミステリー界の「日本代表」、ここに集結!
第73回日本推理作家協会賞短編部門受賞作 矢樹 純『夫の骨』も収録!
プロの読み手たちが驚愕、興奮、大絶賛!厳格な選考を勝ち抜いた珠玉の傑作のみを豪華収録。
極上の読書体験を約束する“唯一無二”のアンソロジー!
昨年1年間に発表されたあらゆる短篇推理小説の中から、日本推理作家協会の厳格な選考を通過した珠玉の傑作だけを豪華厳選収録。新鋭からベテランまでキャリアに関係なく、「とにかく面白くて優れた」短篇のみを集めました。巻末には昨年のミステリー界の動向を記した「推理小説・二〇一九年」に加え、推理小説関係の受賞作を完全網羅したリストも収録!
【感想】
先日、「ザ・ベストミステリーズ2019」を読んだので、他の年度も気になったので読みました
読んだあと嫌〜な気持ちになる作品が多かった気がします
特に印象に残った作品について書いていきます。
・夫の骨(矢樹 純)
夫の実家に暮らす、「私」。
現在、義父、義母、夫はすでに他界しており、住人は私だけである。
夫・孝之は登山にいった際、道に迷い滑落死してしまった。
ある日私は、孝之が亡くなって以来、開けることのなかった物置の整理をしていた。
孝之の遺品であるリュックサックや、彼の登山道具を片付けていた時、小さな桐箱を発見した。
……その中身はなんと、胎児もしくは乳児の骨であった。ただ、それにしては骨が足りない…。
いったいこの骨は、誰と誰の子なのか?
なぜ孝之は、義父の死後急に登山を始めたのか?
後妻であり、孝之と血の繋がっていない義母・佳子が、生前孝之に送っていた粘ついた視線。
記憶を頼りに、「私」は答えを導き出す。
すでに自分以外が皆死んでしまっている中、真相を追求するのは難しいですよね〜
途中までは「私」の推理になるほどなぁ…と思っていたのですが(それでも嫌な気持ちになる結果なのですが)、オチはそれより遥かに心がザラザラする結果でした
佳子とんでもない悪女だと思いました…犯罪ですよ犯罪。。。
・傷の証言(知念実希人)
まるでテレビドラマのような内容・テンポで、読みやすかったです
精神鑑定医の影山司と、その助手・弓削凛が、殺人未遂事件の被疑者に精神鑑定を行い、事件の真相を暴いていくお話です。
沢井家の娘・涼香が、引きこもりの弟・一也に腹を刺され救急搬送された。
涼香の証言では、一也は「ぶっ殺してやる!」と叫んだ後、涼香に襲いかかったのだという。
影山らは一也の精神鑑定を行い、彼が破瓜型統合失調症ではないかと診断する。
しかしそうなると、犯行の状況と被疑者の病状に乖離が生じる。これはいったい何を意味するのか…?
子供の様子がおかしいと感じても、それを恥だと感じ、病院に連れて行かない親。
直接暴力を振るっていなくても、病気の子供に治療を受けさせないというのは、立派な虐待なんじゃないかなあと感じました
世間体やプライドを保つために、子供を病院に行かせず病状を進行させるのは良くないですよね。
もし自分の姉弟が、病気なのに親から治療を受けさせてもらえない状況を間近で見ていたら、自分だったらどうするだろう?と考えさせられました。
・ウロボロス(真野光一)
この作品が、1番読んだあと憂鬱になりました
はっきりとしたオチは書いてありません。読み手の解釈に委ねられた終わり方です。
ただ、最後まで読んでからまた冒頭を読むと、私にはどうしても最悪な結末にしか思えませんでした。。。
警察を定年退職し、運輸倉庫で再就職をした与武猛夫。元警察官として皆に紹介され、警備主任として倉庫区域の危機管理を任された猛夫は、気になる人物を発見する。
猛夫は、倉庫でパートとして働く“鈴木陽子”は、13年前男性殺しで指名手配中の“佐多撫玲子”ではないかと疑う。
猛夫の一人娘・彩香は、高校3年生のときに殺害されてしまった。犯人は未だ見つかっていない。
彩香が殺害されてから、妻の智子は塞ぎ込んでしまい、癌に侵され亡くなった。
死期が近づくなか病床で智子が話したのは、「自分は佐多撫玲子に会ったことがあり、逃してくれと懇願する彼女を逃した。」という内容だった。
「彩香を殺した犯人は平気な顔をして暮らしているのに、どうして彼女だけが捕まらなくてはいけないの?」
猛夫は、妻の言葉に答えることができなかった。
“鈴木陽子”の身体的特徴などから、彼女が“佐多撫玲子”であると確信する猛夫。
しかし、指名手配犯であるにもかかわらず落ち着き払った佐多撫に、猛夫は次の一手を出せずにいた…。
もし冒頭の殺害シーンが私の予想通りならば、胸糞でしかない
だって終わり方が、嫌な予感しかしないんですよ
これはぜひ読んで、実際に味わって欲しいです。。
感想では書いていませんが、秋吉理香子さんの「神様」も若者向けで読みやすかったです。
援交の話で、どんでん返しをさらにどんでん返す感じでした。
若者ゆえの破天荒さというか、無茶というか…みすみす逃げられるほど警察の目は節穴じゃないだろう(と信じたい)と思いました。
近藤史恵さんの「ホテル・カイザリン」は過去読んだことがありましたが、再読しました
主人公の鶴子が不憫で仕方ないんですよね〜。
自分の生まれも過去も知らない人・場所に行きたい気持ちはわからなくもありません。
胸がザラッとするような終わり方の作品が多く、嫌ミス好きの私は楽しく読めました
ですが、すっきりした終わり方のお話もあるので、嫌ミスが苦手な人でも楽しめるんじゃないでしょうか
いろんな作家さんのいろんな作品が読めるところがアンソロジーのいいところですよね〜