20冊目:ノースライト | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

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ノースライト

横山 秀夫

2020/06/16

 

 

 

 

★ひとことまとめ★

読み応えのあるミステリーです!

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【Amazon内容紹介】

一家はどこへ消えたのか?
空虚な家になぜ一脚の椅子だけが残されていたのか?
『64』から六年。待望の長編ミステリー。

一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに……。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた古ぼけた「タウトの椅子」を除けば……。このY邸でいったい何が起きたのか?
 
 
【感想】
こちらもお客様から頂いた本です晴れ
「64」がドラマでやっていたのはなんとな~く知っていましたが、横山秀夫さんの作品は今まで一度も読んだことなくあせる
この作品が初めて読んだ横山さんの作品ですキョロキョロ音譜
 
 
あらすじを…
大学時代の同期が所長を務める岡嶋設計事務所で建築士として働く青瀬。クライアントの吉野一家から「青瀬さん、あなた自身が住みたい家を建てて下さい。」と言う依頼を受け、信濃追分へ「自分が住みたい家」を設計した。吉野一家の家、通称Y邸は、大手出版社の「平成すまい二〇〇選」にも乗り、青瀬の名を一躍有名なものとした。吉野一家はY邸の出来をいたく喜び、青瀬に深く感謝をしていたように見えた。
しかし、Y邸引き渡しから4カ月、吉野一家からは一切連絡がなく、青瀬はY邸への自信を失いかけていた。
 
そんなあるとき、青瀬は別のクライアントからY邸がどうやら無人らしいということを耳にする。そんなはずはないとY邸に電話をかけてみると、やはり留守電になってしまう。胸騒ぎを覚えつつ、青瀬は所長の岡嶋とともにY邸に向かう。
Y邸は無人だった。それだけではなく、泥棒に侵入された形跡もある。そんななか唯一残されていたのは、ノースライトに包まれる、かの有名なドイツの建築士”ブルーノ・タウト”が設計した椅子に非常に似ている、”タウトの椅子”のみであった。
3,000万円もかけてY邸を立てた吉野一家がやすやすと家を捨てるはずがない、事件に巻き込まれたのか?住めない事情があったのか?はたまた、感謝しているように見えたが実際は青瀬の家が気に入らなかったのか…?
青瀬は吉野一家について、そして”タウトの椅子”調べ始める。
 
青瀬が吉野一家について調べを進めている間、岡嶋は市が計画している「藤宮春子メモワール」建設のコンペに出るために、かなり無茶をしてコンペの指名を取ろうとしていた。青瀬は、岡嶋が建築士として藤宮春子メモワールを「岡嶋昭彦の作品」として造ろうとしていること、またY邸という「青瀬稔の作品」を作ることができた青瀬に対して引け目を感じていたことを知り、岡嶋のサポートに回ることを決意する。
 
”タウトの椅子”を調べるうちに謎に包まれた吉野一家が徐々に明らかになっていき、それは青瀬自身の過去も巻き込んだものとなってゆく。
そんなとき、市長反対派閥に目を付けられてしまい、岡嶋が行った”かなり無茶”な行為が新聞に載ることになってしまった…。
 
 
 
正直、もし自分で本屋さんで手に取っていたなら、なんだか難しそうと思い読まなかったかもしれません。ブルーノ・タウトや建築・設計にまつわる話など…自分の知らないジャンルすぎて、興味すら持てなかったかもしれないです。
ですが、お客様がおすすめしてくださった本だったので、きちんと読んでみようと思い、最後まで読みました本
 
結果、この本を勧めてくださったお客様に大感謝ですお願いラブラブ
ミステリーとしても、どういうことなんだろう、真相は何なんだろうかと引き込まれるものがあり、ページをめくる手が止まりませんでしたし、建築的な内容や建築物が出てきたため、分からない部分は調べながら読んだので勉強にもなりましたニコニコ
こちらはタウトが試作した椅子(作品に出てきたものとは違います)ですが、可愛いですよねお願い
そして↓はタウトが設計した、本作にも出てくる旧日向邸。
竹や電球がふんだんに使われていて、こちらも可愛い。
↑画像はあたみニュース より
 
建築界では有名な方でも、建築にかすりもしてこなかった私は、この作品を読まなければこの先も一生タウトに触れずに生きていたと思う。けれど、この作品を勧めてくださったおかげでタウトのことも知ることができて、つくづく本を読むことっていいなあ~と思いましたラブラブ
 
 
クライアントとの関係はばっちり築けていた(はずと自分では思っている)のに、実際はそうではなかったときってかなりショックですよね。特に青瀬の場合は”自分が住みたい家”を作ったわけだから、自分の感性をモロに否定されてしまったように感じるはず。いくらY邸が二〇〇選に選ばれて賞賛されたとしても、クライアントから評価されなかったのならば意味がないと思ってしまう気がする。
 
この作品を読んで思ったのは、経年や環境が変わったことによる人の気持ちの変化と希望が前向きに書かれているなあということです。
「木の家」に住みたかったゆかりに対し、コンクリートでできた「時を刻む家」に住みたかった青瀬。その諍いが原因でゆかりと離婚することになったとも言えるのに、その8年後、いざ自分の住みたい家・Y邸を建てるとなったときには、「木の家」を建てた。
岡嶋の場合も、学生時代は青瀬から見て怠惰で生意気で女にルーズな男だったが、時代の荒波にもまれ、子を持ち、変わった。
怒りも悲しみも苦しみも、年月とともに昇華されて、過去があるからこそ今そして未来があると希望が持てる感じがして良かったなあキラキラ
 
岡嶋は果たして自殺と事故のどちらだったのだろう。様々なことに悲観し、人生を終えてしまおうと思ったようにも思えるし、スケッチブックのくだりを聞くとまだまだあきらめきれていない気持ちも伝わってくる。
ただ、私はどちらかというと、アイデアも溢れてあきらめきれないのに、自身の行いのせいで遺族の期待に応えられず、事務所の人間にも迷惑をかけてしまった、自分には魂の帰る家が作れないという自責の念や後悔からの自殺だったのではないかなと思ってしまう。
できれば、岡嶋には生きて、青瀬のように自分自身の魂の帰る場所を建ててほしかったなあ。
 
現実世界でも、生きていれば何度だってやり直せる!!って言われるけれど、実際はそこまで甘くないというか、耐えられる精神がないと難しいよね。一生レッテルを貼られて生きていくことになろうが、それをスルーしたり耐えられるだけのメンタルを持っていればいいけれど、人生を終えてしまおうと思うくらい悲観的になってしまう人もいるわけで。
けれど、自分自身が人の失敗に寛容かと言ったらそうでもないという矛盾…。犯罪をしたり、犯罪まで行かなくても咎められるような行いをした人などに対して、応援の気持ちや更生したと信じる気持ちよりも、「この人は犯罪を犯した人」という目でまず見てしまっている気がする。「罪を憎んで人を憎まず」は難しいなあと感じる…。
 
長編なのですべての内容を書くことはできないですが、長いけれど、無駄な文章が全然ない印象でした!
だからこそじっくりと読んでいたので時間もかかったけれど、とても読みごたえがあった。
最終的にすべての謎が解明されて、希望を持った終わり方だったので、読後感もとてもよかったキラキラ
いや~本をくださったお客様本当にありがとうございましたお願いキラキラ
横山さんのほかの作品も読んでみようと思いましたお願い