アンソロジー 隠す
アミの会(仮)
大崎梢・柴田よしき・福田和代
近藤史恵・永嶋恵美・松村比呂美
篠田真由美・新津きよみ・光原百合
加納朋子
2019/04/12
★ひとことまとめ★
遊び心のある仕掛けがしてあります。
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
恐怖、因縁、苛め、恋愛と老い、引きこもり探偵に芸能人の犯罪。
人気作家十一人が「隠す」をテーマに書き下ろした豪華短編集。
【感想】
恒例アミの会(仮)です。
・理由(柴田よしき)
ワイドショーのコメンテーター・松本コタローが、イラストレーターのつじうち美希に刺された。
彼女は一切動機を黙秘し続ける。
警察はワイドショーで自身のイラストを批判されたためだろうと推測しているが、主人公の麻生はなにか別の動機があるのではないかと考える。
この話の隠す、は動機なわけだけれども。
動機については明らかになるけれど、主人公と同じようになんともいえない気持ちになる終わり方…。
自分に前科がつくとか、そんなこと気にせず、それでも友人のために復讐がしたいという感情かあ…。それで本当に、友人は喜ぶのだろうか…。
・自宅警備員の憂鬱(永嶋恵美)
不登校になり現在は自宅警備員をしている主人公。彼女の砦である家に、弟がイケメンを連れてきた。なんとか侵入者を排除(帰宅)させないとと考える主人公。だが、なぜイケメンは我が家に来ることになったのか…?
まあはっきり言っちゃうと、母親を刺してその凶器やら証拠品をどう処理しようかと考えあぐねている所に、主人公弟が通りかかり、「そうだ!こいつの家に隠そう!」という…
というか自宅警備員してて普段は人と関わるのが大嫌いなのに、自分の家から排除するためだからってよく少し話聞いただけでそこまでの推理ができるわな…。
・誰にも言えない(松尾由美)
これは女探偵シリーズのお話なんですね。読んだことなかったけど、特に前知識がなくても読めました。
マンゴーにアレルギーがある人は、漆にもアレルギーが出やすいっていうのを初めて知った!
市販されている漆商品は基本的にアレルギーになる成分が揮発しきっていて、基本的に症状は出ないらしいけれど、稀に症状がでることもあるらしい。
本を読んでると、こういう知らない知識が収集できるから良いよな~。
あと、誰にも言えないというタイトルは、作品の内容はもちろん、作者にもかかっていたのね。
小説などには、作者の気持ちが隠されているのよね~。
根掘り葉掘り考えることはないけど、どんな気持ちで書いたのかな~とは思いながら読んでるなあ。
・撫桜亭奇譚(福田和代)
このお話はすごい黒いなあ…。
埋蔵金探しと称し、山を掘り起こし、すでに探した部分に桜を植える…。そんな父親の趣味。
これだけ見ればなんとも思わないけれど、実際は桜を埋めた部分には子供の死体が埋められているという…。父親の趣味、性癖を知ってしまったときって、ただでさえなんとも言えない気持ちになるのに、それがさらに殺人だったとか…。
これ読んで真っ先に思い浮かんだのがジョン・ゲイシーだなあ。
ITのモデルにもなった殺人鬼。
少年を連れ去りいたぶり、最終的には殺す…。けれど、現実世界では仕事もできて、かなり人から慕われているっていう部分がそっくり。
親が亡くなって、資産や負債を相続するかどうかはわかるけど、親のしてきた犯罪まで受け継がないといけないとか…。
・骨になるまで(新津きよみ)
亡くなった祖母の秘密を、祖母の死後調べて行く話だけれど、まさか祖母が昔産んで生き別れになっていた息子が、祖母の主治医だったとか、そんなことがあるのか…。
そして2歳で生き別れになったのに、名前と年齢だけで、この人が実の母だとは気づかないのではないでしょうか…。
昔って意外と子供産んだけれど離婚して再婚してって多かったのかな。自分の祖父母も再婚同士だったみたいで、祖母には連れ子(私の母親の兄)がいて、祖父にも奥さん側に引き取られた娘さんん2人がいて。祖父母の葬儀で、私も初めてお会いしたけれど。
やっぱり祖父母の血が入っているからか、どことなく皆似ているんだよね。
お葬式みたいな、誰かが亡くなったタイミングとかじゃないとみんな集まらないよね~。。
・アリババと四十の死体
まだ折れていない剣(光原百合)
光原さんは童話を違った視点から書いてくれるから、そういう捉え方もあったか~!みたいに読めておもしろいんだよね。
アリババの話自体は詳しく読んだことないんだけれど、おそらく本当は機転のきくモルギアナの話なんだろうけれど、光原さんのお話だとモルギアナ悪い女だな~という印象。けどこういう悪いけど賢い女の人嫌いじゃない
まだ折れていない剣は…なんというか…
これって、本来の(もとの)お話からすると、将軍は戦いのどさくさにまぎれて、少佐を殺そうと考えていたけれど、逆に殺されてしまったということ…?
どちらのお話も、何かを隠したいときには、たくさんのものに紛れ込ませるのが良いとあるけれど、戦とかまさにそれだよね…
戦いの末亡くなったのか、誰か味方の中に怨恨を持っている人がいて殺されたのかなんて、わからないもんなあ…。
・バースデイブーケをあなたに(大崎梢)
自分もお金に余裕があったらこんなことしてみたい~!
自分に毎年花束とかお誕生日プレゼントとかやってみたいな~。
特に認知症が進行したら、もう誰からのプレゼントかなんて自分ではわからないし、楽しい記憶というか、誰かからお祝いされてるんだな~って気持ちだけ持って生きていけるっていいよな~。
自分のためにここまでしてみたいな~
・甘い生活(近藤史恵)
これは本当にゾワゾワするお話。こんな女身近にいたら本当に嫌だわ…。人のものを盗ることが楽しいって人間。
誰かのものを奪うゲームが楽しいだけで、獲得した物自体には興味がない…。
でもそんな女にふさわしい終わり方だった…。人のものをとって、とられた側がどうなるかなど考えたこともなく、のうのうと生きてる。もし、自分の兄妹がそんなやつに大切なものを取られた挙げ句、亡くなったら。そりゃ復讐されますよね…。
岩窟姫もよかったけど、近藤さんのお話はゾワゾワがあって好き
・水彩画(松村比呂美)
余命宣告されたからって急に今までネグレクトもどきだった親が優しくなっても困るよなあ。
いくらいろんな理由があったからって、子供は親は選べないし。
ましてや父親がいなくて母親しかいないのに、母親が自分に無関心とか。結局子供は親を見て育つし、幼少期の環境ってかなりその人の考え方とかに大きく関わってくると私は思うから、そういう親のエゴで振り回される子供って本当に可哀想だと思うわ。
お話は良いまとまり方だったんだけれど、なんか胸くそ悪い印象を受けてしまった…。
・少年少女秘密基地(加納朋子)
これもシリーズものなのかな?
アンジャッシュのコントみたい
解釈が違ってるんだけど、なんかうまいこと話進むみたいな。
・心残り(篠田真由美)
このお話もシリーズだったんですね。骨董店の女主シリーズ。
櫛の持ち主の、かつての回想…。悲しいお話…。
昔はどうだったんだろうか。
はっきりと主従関係があって、従う側はずっと従う側のまま。自由に人を好きになったりもできなければ、贅沢もできず。
ほんと、生まれというか、家に縛られていたんだろうなあ。
いまでこそ、好きな人と結婚してとか、女性でも大体どんな仕事でも就けるようになったけれど、それも日本の歴史からするとここ最近のことなんだろうしな~。
なんかお話の内容よりも別のことを考えてしまった
この「隠す」ではある共通のモノがすべてのお話で出てくるんだよね。2作品読んだ時点でこれは?って思って、3作品目でこりゃ確定だなって思った
普通あんまり出てこないものだしね~。自分も買ったことないし。
アミの会(仮)はあとがきから読んだほうが良いのかもしれないけれど(共通のモノが出てくる件も書いてあったし)、読まずに「ほら、やっぱりね~」って思うのが楽しい。
やっぱり近藤さんが好きです~