毒殺協奏曲
有栖川有栖・小林泰三・篠田真由美
柴田よしき・永嶋恵美・新津きよみ
松村比呂美・光原百合
2019/02/27
★ひとことまとめ★
毒殺について少し詳しくなったような
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
致死量に詳しすぎる女、正統派の毒殺、ネットで知り合った女、身近すぎる毒、毒より恐ろしい偶然…サスペンスから本格まで、一冊に閉じ込めたバラエティ豊かな毒物語集。
【感想】
毒殺縛りのアンソロジー
アミの会(仮)って存じ上げなかったんですが、あとがきを読んで
知りました!
すこし抜粋。
・もともとアミの会(仮)、たまに集まってご飯を食べたり、お酒を飲んだりすることを目的に結成された女性作家の集まり
・アミの会(仮)のネーミングは、フランス語の友達という単語を連想させるものであったり、アミのように広がる交友関係」、
アミ-網-ネットとなり、日本各地のメンバー同士がインターネットを通じて近況報告や、意見交換をしながら一冊の本を編んでいく過程を表している
・アミの会(仮)のアンソロジーの特徴は、テーマが統一されている
2冊目ということもあって、今回は男性作家さんにも参加していただいたとのこと
そして、今回のテーマは毒殺。
その中でも印象にのこった作品をいくつか。
・猫は毒殺に関与しない(柴田よしき)
このお話が1番ミステリーっぽくて、皮肉さも入ってて面白かったかな!
作家である桜川ひとみの家で鍋パーティが開催された。
メンバーは同じく作家である、四方幸江、幸江のファン、幸江の秘書、編集者たち、作家、そして桜川ひとみ。
鍋パーティー開催の理由は、四方幸江からの「インターネットでひどい中傷をされており、どうやら身近な人間が書き込みをしているため、その犯人を探したい」というもの。
そして、幸江の身近な人間を集め、鍋パーティをおこない、誰かがボロを出すのを観察することに。
鍋パーティも終わる頃、幸江のファンが急に苦しみだした…
もしや、誰かが毒を?幸江に食べさせるつもりが、間違えたのか…?
というお話なんだけれど、おそらくこの人が犯人だろうな~というのはわかっていたんだけれど、オチが皮肉で面白かった笑
想定外のことがおきて、本来毒を食べさせる予定の人がそれを食べなかった場合ほんと焦るだろうなあ…
それを考えると金田一とかの犯人は、トリックもまあすごいけど
亡くなった側もうまいこと策略にはまってくれてるんだね。
最後の猫の視線がなんとも言えないね
・劇的な幕切れ(有栖川有栖)
自殺志願者どうしの話だけど、やっぱそうなるかという話。
そういう掲示板とかあるみたいだけれど、本当に相手も死にたいって思ってるかなんてわからないよね…
というか急なキャラ変みたいなのなんなのと驚いたけれど、妄想オチだったという。
最期は悲しいなあ。もう死ぬってときに反省しても遅いんだよなあ…誰も死んだ人の最期の記憶や気持ちはわからないからな…
・ナザル(松村比呂美)
これは毒殺が怖いってより、お節介焼き、野次馬精神、嫉妬心丸出しのおばさんの希江が怖い話だったなあ…。
家の事情をあれやこれや言ってきたり、しょうもないLINEがしょっちゅう来たり、見た目についてあーだこーだ言ってきたり、人の好きなものにケチをつけるし、引っ越したら引っ越したで引越し先まで来るという…
むしろこの人を毒殺したいくらいだ…
ナザルって言うのは、インドでの言い伝えみたいで、可愛い子供は嫉妬されて、嫉妬や妬みの視線を浴びた子供は病気になったり早死するので、それを避けるためにナザルと呼ばれるホクロを書くというもの。
でも、あまりお話にナザルっていらなかったような。
希江みたいな強烈おばさんがいたり、アル中叔父さん、いじめ、とか印象に残ることが多すぎて、ナザルへの印象が薄れてしまった。
どちらかと言うと瞳がナザルを拭き取っていたなら、なんとなく瞳の不幸はそのせいかな?とも思うけれど、ナザルを拭き取ったのは息子のだしなあ。
いじめはナザル関連と思えるけれど。
毒殺よりもいろいろ印象の強い人物が目立ってた気がする。
・吹雪の朝(小林泰三)
これは一番意味がわからなかったし、独学とはいえ、
毒についていろいろと調べてコレクションもしているのに、
致死量という意味がわからないって、おかしくないか…
致死量については、なにか調べたときに自分も読んだことあるけれど、致死量摂取したからって全員が死ぬわけではなく、半数致死量と言って、その量を摂取した半数は死に至るという意味。
でも、ちょっと本文の意味がわからなくて、
「半数致死量以下の量でも半数の動物は死ぬのよ。」(P296)の部分。
半数致死量以下の摂取でも、死ぬものもいるってのはわかるけれど、「半数」の動物が死ぬなら、それが半数致死量になってしまうのでは…読解力…
偶然夫の元カノ・富士子御一行が家を訪ねてくるのも不自然すぎるし、元カノは夫と同じ職場だった=病院だから致死量とか詳しかったんだろうけれど、登美子も同じ会社=病院だったんじゃないの?
登美子が後弓反張とか専門的な言葉も使ってるのに(まあ毒について調べるうちに仕入れた知識かもしれないけれど)、逆に富士子は全然わからないって感じしているし、なのに急に謎解きになると富士子はスラスラ言葉が出てくるし、なんなんだ…
登美子も前職なんだったんだ…
・三人の女の物語(光原百合)
次に良かったのはこのお話。
ある女王の物語・ある姫君の物語は、それぞれクレオパトラ・白雪姫のスピンオフみたいな感じのお話。
ある人妻の物語は、愛する人に殺されたい妻と、愛する人を殺したい夫の話。
この3つのお話はなんか、美しい感じがして。美しいって言い方が正しいのかわからないけれど、毒殺って中にも、愛情とか尊敬の念が込められている感じで、決して悪意とか憎しみの殺意ではないんだよね~。
あとがきにも書いてあったけれど、アンソロジーは知らない作家と出会うきっかけで、アンソロジーを通じて、作家のレパートリーを増やす、って言葉に同意。
アンソロジー読むと、この作家さんの本読んでみよう!ってきっかけになれるので好きです